ボクシングのWBA世界バンタム級タイトルマッチが23日、東京ビッグサイトで行われ、王者の亀田興毅(亀田)は挑戦者の同級3位ジョン・マーク・アポロナリオ(フィリピン)に3−0の判定で勝ち、7度目の防衛に成功した。亀田は序盤からボディを集めて相手を消耗させると、10R、12Rと2度のダウンを奪い、大差をつけた。
(写真:圧倒的に攻めたがKOできず、本人も「良いところと悪いところが出た」と振り返った)
 3兄弟揃っての世界王者へ、まずは長男がベルトを守った。
 大苦戦したパノムルンレック・カイヤンハーダオジム(タイ)戦から約3カ月半。「進退をかける」と位置づけての一戦だった。

 前回は後手に回った反省から、序盤から右ボディ、飛び込み気味に放つ左と先に手を出した。「パンチはないけど、うまくて当てにくかった」と本人が明かしたようにクリーンヒットは少なかったものの、相手の勢いをそいでいく。

 時折、アポリナリオが右を伸ばして前に出るシーンが見られた以外は、終始、王者のペース。低い体勢でボディから攻めあげる亀田に、挑戦者はジリジリとロープ際に後退する。

 主導権を握ったチャンピオンの優位が明確になったのは10Rだ。ラウンド中盤、ボディを打とうともぐりこんだアポリナリオに右フックを合わせる。これが決まり、相手は思わず、ヒザをついてダウン。過去3戦、判定勝ちが続いていた亀田にとって、実に4試合ぶりに奪ったダウンだった。

 一発逆転を狙う挑戦者に対し、最終12Rには左ストレートがあごをとらえ、あおむけに倒す。「タイミングよくダウンがとれたのは自信になった」。終わってみれば8〜12ポイント差をつけての防衛に、失いかけていたチャンピオンとしての誇りを取り戻した。

 とはいえ、優位に立ちながらKOで仕留め切れなかった点には不満が残る。チャンスなのに手数が減り、相手に息つく暇を与えてしまうのは、変わらぬ悪い癖だ。攻撃が続かないため、場内も盛り上がらず、「コウキコール」が起こったのは最終ラウンドだけだった。「相手が効いているのがわかったのに、力が入って狙いすぎた」と本人も反省の弁を口にした。

 8月1日には三男の和毅がフィリピンでWBO世界バンタム級のタイトルに初挑戦する。9月3日には次男の大毅がIBF世界スーパーフライ級王座決定戦に臨み、2階級制覇を狙う。「3兄弟で世界チャンピオンの夢につなげられたのはうれしい」と語る長男が次に見据えるのは4階級制覇だ。1階級下げてのスーパーフライ級で日本人初の記録に挑むという。

 ただ、同階級には8月にWBC王座の防衛戦を行う山中慎介(帝拳)もいる。7度もタイトルを守ってきたのに試合後、「統一戦」という発言が全くなかったのは寂しかった。「オレの考えているボクシングはまだまだ」と理想を語るなら、誰もが認める強敵と拳を交えたほうが得るものは大きいはずである。