ボクシングのWB0世界バンタム級タイトルマッチが1日、フィリピンのセブで行われ、挑戦者で同級5位の亀田和毅(亀田)は王者のパウルス・アンブンダ(ナミビア)に3−0の判定で勝ち、世界初挑戦での戴冠に成功した。WBOは1988年の設立以降、この4月まで日本ボクシングコミッション(JBC)が加盟しておらず、初の日本人王者となった。和毅の兄・興毅(WBA世界バンタム級王者)、大毅(元WBA世界フライ級王者)はいずれも世界のベルトを獲得しており、3兄弟が揃って世界チャンピオンとなるのは史上初めて。
 試合終了のゴングが鳴った時には、もう勝利を確信していた。コーナーポストに駆け上がってガッツポーズをみせると、目にうっすらと涙を浮かべながら、セコンドについた父の史郎氏、兄の興毅、大毅と喜びの抱擁を交わした。

「親父の夢、亀田家の夢が叶った」
 長男の興毅が初めて世界王者(WBA世界ライトフライ級)に輝いたのが2006年8月2日。それから、ちょうど7年の歳月を経て、3兄弟で世界のベルトを腰に巻く夢を現実にした。

 アンブンダはアテネ五輪でベスト8に入り、プロでは無敗の王者だ。身長では9センチ下回るものの、リーチが長い。そんな“アフリカのライオン”に、和毅は3兄弟で最も才能があるといわれた実力を十分に発揮した。

 立ち上がりから、素早い左ジャブでリズムをつくると、ステップを使って王者のパンチをかわしていく。ジリジリと圧力をかけてくるアンブンダに対し、うまく距離をとってカウンターで右を当てる。頭をつけあう状態まで近づいた際には左のボディを打ち込むなど、パンチの打ち分けができていた。

 ガードが高く、ザ・ロック(岩)の異名をとる王者だが、和毅は手数で上回り、ポイントを稼いだ。決してクリーンヒットは多くないものの、上下にパンチを散らし、着実に相手を消耗させていく。4Rにはガードの隙間から右ストレートをねじ込むと、ややアンブンダがよろめくシーンもあった。

 7Rにはカウンターの右がヒットし、王者をぐらつかせる。ペースをつかんだ和毅は8Rには左ボディを連打。これが効いてきたのかアンブンダの動きは徐々にキレをなくしていく。

 対する和毅は10Rには軽いフットワークでリングをぐるぐると動き回る余裕があった。打ち合わない展開に、会場内からは若干ブーイングが起こったが、アンブンダが必死に繰り出すパンチにしっかり反応し、自らの拳を返した。王者は挑戦者のスピードについていけず、カウンターを警戒するあまり、攻撃が続かない。

 11Rにも再び和毅の強烈な左ボディが入り、アンブンダは足がふらついてきた。“効いていない”とでも言わんばかりに首を横に振るも、優劣は明らか。最終12Rには終了間際に右がヒットし、王者が腰から砕ける。スリップと判定されてダウンにはならなかったものの、観る者に新王者誕生を印象づけた。

 父の下、2人の兄を追いかけてボクシングを始めた。ただ、兄とは異なり、メキシコを主戦場に拳を磨いてきた。08年11月のデビュー以降、戦績は27戦27勝(18KO)。ただ、日本タイトルや東洋太平洋タイトル獲得の実績はないため、JBCは国内での世界戦を認めなかった。

 しかし、海外修行を重ねてきた“亀田家の最終兵器”は、異国での世界戦も苦にしなかった。体脂肪率を3%にまで絞り込むつらい減量にも耐え抜き、世界初挑戦の緊張から固くなることもなかった。

「もっともっとスターになる」
 ベルトを手にしたリング上で、この夜のヒーローは高らかに宣言した。9月にはIBF世界スーパーフライ級に大毅が挑戦し、勝てば3兄弟が同時にチャンピオンに就く快挙を達成する。

<江藤光喜、WBAフライ級暫定王者に>

 ボクシングのWBA世界フライ級暫定タイトルマッチがタイのバンコク郊外で行われ、挑戦者で同級7位の江藤光喜(白井・具志堅)が、3−0の判定で、暫定王者のコンパヤック・ポープラムック(タイ)に勝ち、暫定王座に輝いた。ただし、JBCではWBAが暫定王者を乱立させていることから、これを世界タイトルとは認めない方針だ。

 江藤は沖縄出身の25歳。奇しくも、この日、3兄弟での世界王者となった亀田家同様、弟の大喜、伸悟もプロボクサーだ。過去、日本人はタイでの世界戦は17敗1分と未勝利で、暫定タイトルマッチとはいえ鬼門で初めて勝った。しかも相手はWBC世界ライトフライ級のベルトを獲得した実績のある強豪で、世界初挑戦ながら番狂わせを起こした。