新生ジャパン、「メダル1、入賞5」以上で大邱超えを 〜世界陸上日本代表結団式〜
25日、日本陸上競技連盟は世界選手権モスクワ大会の日本代表選手団結団式を東京・味の素ナショナルトレーニングセンターで行った。日本は前回の大邱大会から6名減の44名の選手団を結成し、目標とする「メダル1、入賞5」を狙う。式典には男子29名、女子7名が出席し、男子の主将には5大会連続5回目の出場となる50キロ競歩の森岡紘一朗(富士通)、女子は3大会連続出場のやり投げの海老原有希(スズキ浜松AC)が選ばれた。また桐生祥秀(洛南高)は全国高校総合体育大会(インターハイ)に出場するため欠席した。世界選手権は8月10日から開幕し、18日までの9日間にわたって繰り広げられる。
(写真:結団式に参加した55名の選手、役員)
「己の持つ全ての力をぶつけてきて欲しい」。結団式の冒頭で挨拶をした日本陸連の横川浩会長は、選手団にこうエールを送った。6月に副会長から昇格したばかりの新会長。就任後初の世界大会に向けて、「2016年のリオデジャネイロオリンピック、20年のオリンピックに向けまして、一里塚となる。しっかりとした結果を出して欲しい。その後にポジティブな展望を開いてくれるような、我々に期待と自信を持たせてくれるモスクワ大会にしてもらいたい」と語った。
(写真:「心身ともの逞しさを持ってくれている」と選手団に期待を寄せる横川会長)
団長を務める日本陸連の尾縣貢専務理事は「(世界選手権は)皆さんの自己実現をする場です。雑念は自分の心がつくるもの。ベストを出すこと、少なくともシーズンベストを目的としてください」と選手たちに檄を送った。日本代表の原田康弘監督は「当初から掲げたメダル1、入賞5の目標を目指し、役員、選手一丸となって参ります。多くの陸上ファンに素晴らしい戦いと感動を届けたい」と、モスクワでのジャパンの活躍を誓った。
前回の大邱大会で50キロ競歩6位に入り、入賞を果たした森岡は、選手団の男子主将として「名誉ある選手団に選ばれたことを誇りとし、自覚と責任を持って、世界の強豪が集うモスクワの大舞台に全力で挑みます」と決意表明。先日の世界ユース選手権でメダリストなった山木伝説(九里学園高)と溝田桃子(伊豆中央高)から花束と激励のメッセージを贈られると、「次世代のアスリートの激励を受けて、身の引き締まる思いです。日本の皆様に夢や希望、そして感謝の気持ちを伝えられるパフォーマンスを発揮できるよう頑張っていきます」と約束した。
(写真:「帰国したときに“良くやった”と言われるよう全力を尽くします」と抱負を語った森岡主将)
日本選手団の中で、注目度が高いのは大会初日に予選が行われる男子100メートルだ。日本短距離陣のエース・山縣亮太(慶應義塾大)、“最速の高校生”桐生には、日本人初の9秒台や世界選手権同種目初の決勝進出が期待されている。山縣は「段々いい感覚を掴めてきていますが、こればっかりは走ってみないと分からないです」と、現在のコンディションについて語った。ロシアのカザンで行なわれたユニバーシアードの100メートルで2位に入った。10秒21で銀メダルを獲得し、同種目で日本史上3人目のメダリストとなったが「自分の走りを見直すと、手応えというよりは課題として考えています」と納得はしていない様子。ユニバーシアードではレースの前半で力を入れた走りをしたという。本来は力を使わずに前に出れることが理想の型である。だが、それとは違う走りを選択せざるを得なかったほど今シーズンは試行錯誤が続いている。昨年のロンドンオリンピックでは当日に「やるしかない」と気持ちがふっ切れて、自己ベスト(10秒07)の好結果が生まれた。ただ「去年はそれまでの試合で技術的なことはつくり上げていました。今年はまだ自分の走りができていない」と不安を吐露した。それでも山縣には日の丸を背負っている自覚がある。「必ずその時のベストパフォーマンスが尽くせるように、最低限気持ちは切り替えていきたいです」
山縣は「世界陸上までに納得のいくかたちに仕上げたい」と、28日に開催されるトワイライトゲームスに出場予定。100メートルのほか、日本代表のリレーメンバーと400メートルリレーにもエントリーした。リレーチームにとっては貴重な実戦の機会となる。メンバーとはナショナル合宿で連係を深めており、第1走の桐生とも「バトンパス時の歩数の目処が立った。安全にいく歩数、勝負にいく歩数をお互いのなかで共有できました」と好感触を得ている。男子短距離の土江寛裕コーチも「バトンパスの質は上がっています。オーダーが確定して完成度は高い」と、自信をうかがわせた。ただ桐生はインターハイがあるため、トワイライトゲームスでは第1走を藤光謙司(ゼンリン)が務める。また先月21日の合宿の際には未定だった第3走には高瀬慧(富士通)が入る見通しだと明かした。
(写真:個人種目でも好記録が期待されるリレーメンバーの山縣<左>と飯塚)
世界のスポーツ界はドーピング禍で揺れている。陸上界も例外ではなく、今大会のメダル候補のタイソン・ゲイ(米国)、アサファ・パウエル(ジャマイカ)はドーピング検査で陽性となり、モスクワには出場しない。男子短距離界のスーパースターの欠場について、山縣は「いち陸上のファンとして、短距離の価値が下がってしまうのは残念です。ただ僕も選手なので、然るべき処置がとられ、チャンスは広がったとプラスにとらえています。本番にいい状態で持ってこれれば、決勝進出はいけると思っています」と語った。自己ベスト10秒01を持つ桐生とともに日本人初の世界選手権ファイナリストの期待は膨らむ。リレーに関しても、これまでの最高位は4位だが「過去最強」との呼び声もある今回のメンバー。初のメダル獲得は決して不可能ではない。土江コーチも「(ゲイやパウエルの欠場は)リレーに関して有力な駒を失っていることになります。過去のデータを見ると、日本記録(38秒03)を出せば表彰台も狙える」と分析する。今年4月29日、高校生が出した“10秒01”の衝撃。それにより、突如として、日本陸上界に巻き起こったのが上昇気流だとすれば、ドーピング問題は世界の陸上界を襲った乱気流。新生ジャパンは、この2つの流れを掴んで新たな歴史の扉を開きたい。
(杉浦泰介)