31日(現地時間)、世界水泳選手権バルセロナ大会の競泳4日目が行われ、男子200メートル個人メドレー準決勝は萩野公介(東洋大)が全体2位、瀬戸大也(JSS毛呂山)が全体6位で、ともに決勝へとコマを進めた。同100メートル自由形準決勝では、日本人初の準決勝に進出した塩浦慎理(中央大)が全体10位で惜しくも決勝進出を逃した。一方、女子では50メートル背泳ぎの寺川綾(ミズノ)、200メートルバタフライの星奈津美(スウィン大教)が2大会連続の決勝進出。そのほか、女子200メートル自由形決勝では18歳のメリッサ・フランクリン(米国)が制し、今大会3冠目を手にした。
 黄金世代、揃ってファイナルへ

 日本競泳界の黄金世代の萩野と瀬戸。その先頭を走る萩野を追いかけ、瀬戸も世界のファイナリストとなった。
 男子200メートル個人メドレーの準決勝第1組に2人は揃って出場した。予選を全体2位で突破した萩野は、まずバタフライで4番手につけると、つづく背泳ぎで50メートルを29秒32で刻み、順位を2つ上げた。苦手の平泳ぎでは、トップのチアゴ・ペレイラ(ブラジル)に1秒近く差をつけられたが、最後の自由形で逆転。1分57秒38のタイムで、この組のトップで泳いだ。

 一方、予選を全体12位で通過した瀬戸は、スタートのリアクションタイムは0秒60。準決勝を泳いだ16人の中で一番速かったが、最初の50メートルのターンでは7番手だった。背泳ぎ、平泳ぎで1つずつ順位を上げ、ラストスパートで2人を抜いた。この組3位となる1分58秒03は、自己記録を更新するもの。ただ本人は「すごく落ち着いて泳げたので、57秒台でいきたかった」と納得はしていない。萩野は全体2位、瀬戸は全体6位で、明日の決勝に進んだ。

 萩野はここまで4種目10レースをこなした。厳しい日程にも、疲れを見せず全ての種目で入賞を果たしている。200メートル個人メドレーの準決勝を終え、「全体的に余裕を持って泳いだ。決勝に向けて、いいレースができた」と、今大会2個目のメダルへ視界は良好のようだ。個人メドレーはいわば本職。金メダルの可能性は十分にある。最大のライバルは前回の上海大会で5冠、ロンドン五輪では2冠をあげているライアン・ロクテ(米国)。準決勝を全体トップで突破している強敵だ。萩野は「決勝でいかに食らいついて行けるかが勝負」と、目標とする世界トップのマルチスイマーに挑む。

 自由形短距離に光明

 競泳の自由形短距離で日本人は通用しない。これまでの“定説”が少しずつ崩れ去ろうとしている。その鍵を握るのが男子短距離のホープ・塩浦だ。
 大会初日、男子400メートルリレーで日本代表は8位入賞を果たした。世界水泳での決勝進出は日本勢初の快挙、塩浦はそれに第1泳者として貢献した。

 塩浦はこの日、出場した100メートル自由形では予選第7組に登場し、48秒52でフィニッシュ。自己ベストをマークし、この組トップ、全体でも4位の好成績で準決勝行きを決めた。世界水泳での準決勝進出は日本人としては初だった。

 決勝に進めば、五輪と合わせても日本史上初となる。日本競泳界の歴史に新たな1ページが刻まれようとしていた。塩浦も「夢と希望を背負った」という思いで臨んだ。

 迎えた準決勝第1組、塩浦のスタートのリアクションタイムは0秒70とまずまずの反応。力強い泳ぎで、50メートルのターンまでは23秒09だった。この組、3番手につけて折り返し、ラスト50メートルにかけた。2人にかわされ、5位に終わったものの、フィニッシュタイムは48秒51。塩浦は予選で出した自己ベストをさらに上回った。2009年に藤井拓郎が出した日本記録に、あと100分の2秒と迫るタイムだった。

 しかし、決勝の壁は厚かった。準決勝第2組がレースを終えると、全体順位は10位となった。ファイナリストとなるには、わずか0秒05足りなかった。塩浦は「日本記録を更新すれば残れると思っていた。だいたいイメージ通り泳げただけに、本当に悔しいです」と語った。

 400メートルリレーは決勝最下位、100メートルでは塩浦が準決勝敗退。日本競泳が自由形短距離で、世界のトップに肩を並べたとはまだ言えない。だが昨夏のロンドン五輪ではエントリーすらかなわなかった。バルセロナでの塩浦の活躍は競泳自由形の短距離に希望の光を灯したのではないだろうか。最終日のメドレーリレーではアンカー起用が濃厚である。「これから(日本の)自由形が強くなるといい」と話す塩浦が起爆剤となれるか。

 主な結果は次の通り。

<男子50メートル平泳ぎ・決勝>
1位 キャメロン・ファンデルバーグ(南アフリカ) 26秒77
2位 クリスチャン・スプレンジャー(オーストラリア) 26秒78
3位 ギウリオ・ゾルジ(南アフリカ) 27秒04
北島康介(日本コカ・コーラ)は準決勝敗退

<男子200メートルバタフライ・決勝>
1位 チャド・レクロー(南アフリカ) 1分54秒32
2位 パウエル・コルゼニオウスキ(ポーランド) 1分55秒01
3位 呉鵬(中国) 1分55秒09
松田丈志(コスモス薬品)、小堀勇氣(セントラルスポーツ)は準決勝敗退

<男子800メートル自由形・決勝>
1位 孫楊(中国) 7分41秒36
2位 マイケル・マクブルーム(米国) 7分43秒60
3位 ライアン・コクラン(カナダ) 7分43秒70
平井彬嗣(東洋スイマーズ柏)は予選敗退

<女子200メートル自由形・決勝>
1位 メリッサ・フランクリン(米国) 1分54秒81
2位 フェデリカ・ペレグリニ(イタリア) 1分55秒14 
3位 カミーユ・ムファト(フランス) 1分55秒72
五十嵐千尋(横浜サクラSS)は予選敗退

(杉浦泰介)