近藤翔馬(法政大学自転車競技部/愛媛県松山市出身)最終回「マークされても勝てれば“本物”」

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 2015年10月、松山聖陵高等学校自転車競技部の近藤翔馬は和歌山国体ポイントレースで8位入賞を果たした。これがきっかけで、法政大学自転車競技部のスポーツ推薦枠を勝ち取った。

 

<2018年2月の原稿を再掲載しています>

 

 翌年4月、近藤は上京し同競技部に入部した。ここで近藤は都甲泰正監督に出会う。部の指揮を執る都甲は、近藤の第一印象をこう述べた。

 

「ピュアで明るくてハキハキと話しますし、“真面目な子だな”と思いました。高校時代はどんな練習をしていたかはわかりませんが、“この子は真面目にやれば伸びる子だろうな”という印象がありましたね。短距離の選手は半分以上が素質です。しかし中、長距離の場合は努力が報われるんです。近藤は根性もあるように思ったので、“伸びそうだな”と感じました」

 

 出会ってから、すぐに都甲は近藤には伸びしろがある、と感じた。

 

 課題克服のためのウエイトトレーニング

 

 近藤は全日本大学対抗選手権大会、通称“インカレ”の出場に憧れがあった。しかし、上級生たちの壁は厚く、1年生の近藤はインカレに出場することができなかった。実力の世界だから、結果で見返すしかない、と強く思ったという。

 

 結果を出すためには、自らを知り、課題の改善に努めるべきである。彼はトップスピードが遅いという弱点があった。それは身長169センチ、体重60キロの小柄な体型も一因だ。

 

 彼は普段の練習に加え、ウエイトトレーニングや体幹トレーニングに力を入れる。自転車競技は脚力がメインのスポーツ。だが、脚だけを鍛えていればいいわけではない。脚力が強くても上体がぶれてしまっては、効率よくペダルにパワーは伝わらない。あくまでも全体のバランスが大事なのだ。

 

 先輩と一緒にウエイトトレーニングに励み、さらにその後には一人でトレーニングをこなした。

 

「マニー・パッキャオ(フィリピン)というボクシング選手の腹筋のトレーニングを参考にしています。1セット15分くらいのトレーニングなんです。これを週に4回くらいはやりますね」

 

 パッキャオとは史上2人目に6階級を制覇したボクシング界のスーパースターである。パッキャオの腹筋トレーニングは特殊だ。脚を上下、左右に動かしたり、様々な態勢から上体を起こしたりすることで、腹筋を刺激するのだ。

 

 コツコツとした地道な努力は徐々に近藤の体を変えていった。法政大学入学当初は60キロしかなかった体重は2年足らずで69キロにまで増えた。筋肉量が増え、重たいギアも踏めるようになり、トップスピードも上がってきた。

 

 都甲は、単純にあれをやれ、これをやれとは言わない。なぜウエイトトレーニングをすべきなのか、その理由を個人面談で選手にきちんと説明してからトレーニングに入る。「選手が納得したうえでやった方が、効果が倍増するんです」と都甲。根性論ではなく、理詰めのトレーニングがあっての近藤の急成長だった。

 

 都甲は近藤の長所にバランスの良さをあげる。指揮官の解説。

 

「物事を深く考えすぎる選手は、そうなった時に体が動かなくなってしまう。彼は練習するとき、学校で授業を受ける時、遊ぶ時の切り替えがうまい選手。ヤンチャな部分と真面目な部分とうまくとり合わせている。親御さんにもお会いしたことがあるのですが、良い環境で育ってきたんでしょうね。まだまだ、これから強くなるんじゃないかな」

 

 もう一段上に行くために必要なこと

 

 特訓の成果は表れる。近藤は17年8月末から9月上旬にかけて長野で行われたインカレのスクラッチに出場し、見事優勝を果たした。結果もついてきたことで「やってきたことは無駄ではなかった」と実感するのだ。

 

 この時のレースは「勝ちにこだわる走りをした」と言い、近藤はこう続けた。

 

「強い選手をマークする戦術でした。本当は自分から動いてアタックを仕掛けたいので、あまり好きな展開ではないのですが、プロ選手や全日本チャンピオンなどエリートも参加する大会だったので、このレースは強い選手についていきました。自分よりスピードがあって体も大きい選手に勝つためには、それが一番だった。みんながけん制しあっていて、最初のペースがゆっくり。それが残り3周でマークしていた選手が抜け出たので、“さぁ、オレも抜けてやる”と思ってついていき、最後の最後に差せました」

 

 監督の都甲も近藤の優勝を喜んだ。

 

「びっくりしましたよ。彼も相当自信がついたのではないでしょうか。他の大学の選手からしたら、自信をつけた近藤はかなり怖い存在のはずです」

 

 インカレ王者に輝くと、追う側から追われる側に立場が変わる。自転車競技で言えば、マークする側から、マークされる側になるのだ。近藤がもう一段階、強くなるためには「今以上に、レース展開を読むために頭を使わないといけない」と都甲は言う。

 

 レース中に周りの状況を正確に把握できるかどうか。他の選手がどの位置につけているか、どんな動きをしようとしているのか。そのすべてを一瞬で察知し、自らの戦略を判断しなければいけない。そのためにはレース前のシミュレーションも大きな鍵を握る。再び都甲の説明。

 

「無策のレースでは勝てない。あの選手が集団から抜けた時に周りの選手がどう動くのか。また、違う選手が先に仕掛けてきたら……と様々な状況をレース前に想定しておくことが大事です。シミュレーションができない選手はレースでは勝てません。近藤がさらに上のレベルにいくためには、より頭を使うことが必要です。これができれば(マークされても)勝てる選手になれると思います。そうなれば“本物”ですね」

 

 近藤の将来の夢は競輪選手。そのためには更なるレベルアップが必須である。彼は今年の4月で大学3年生になる。まだまだ若く、自らを鍛える時間はたくさんある。それでいて自分が何をすべきなのかをきちんと把握している。切り替えがうまくトレーニングにも真摯に取り組む近藤は都甲の言う“本物”になれるのではないか、と思った。高校から自転車競技をはじめ、スポンジのように様々なノウハウを吸収する近藤は、目標に向かって天馬のごとく翔けていくはずである。

 

(おわり)

 

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近藤翔馬(こんどう・しょうま)プロフィール>

1998年3月4日、愛媛県松山市生まれ。小学生時はフルコンタクトの空手、中学校時はサッカーに取り組む。松山聖稜高校に入学してから自転車競技を始める。2015年5月、愛媛県高校総体スクラッチで優勝。翌月の四国高校選手権ではポイントレースとスクラッチで1位に輝いた。同年の和歌山国体ポイントレースで8位の入賞を果たした。法政大学に入学すると17年全日本大学対抗選手権のスクラッチで優勝を果たした。身長169センチ、体重69キロ。

 

(文・写真/大木雄貴)

 

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