ボクシングのWBAダブル世界タイトルマッチが11日、大阪・ボディメーカーコロシアムで行われ、ライトフライ級は王者の井岡一翔(井岡)が、同級5位の挑戦者クワンタイ・シスモーゼン(タイ)を7R2分17秒KOで下し、2度目の防衛を果たした。井岡はプロ13連勝で、世界戦は3戦連続のKO勝ち。ミニマム級の王座統一戦では王者の宮崎亮(井岡)が暫定王者のヘスス・シルベストレ(メキシコ)を2−0の判定で下し、同じく2度目の防衛に成功した。
<井岡、いよいよ3階級制覇へ>

「自分の中では“ボクシング=KO”」と語る若き王者が、これぞボクシングという試合をみせた。

 7R、ボディを何度も打ち込み、挑戦者を消耗させると、ガードが下がったスキを逃さず、ボディを軽く当ててから左を相手の顔面に向けて振りぬく。あごをとらえられたクワンタイはリング中央でダウン。10カウントでは立ち上がれず、元ミニマム級世界王者同士の対決は、井岡の圧勝に終わった。

 これで本来の階級だったライトフライ級に戻してから3連続KO勝利だ。
「ライトフライ級にいる以上、王座の椅子には僕のスペースしかない」
 そう自信をみせる井岡は、立ち上がりからKOを狙った戦い方に映った。先に仕掛けてワンツーを打ち込み、ヒットさせる。

 しかし、距離が詰まれば相手のパンチを食う危険は高まる。井岡にしては珍しく右を何度も被弾するシーンもあり、本人も「気持ちが入りすぎた」と試合後は反省の言葉を口にした。

 それでも中盤で倒し切るのが、王者の強さだ。5Rにはストマックをえぐる左ボディでのけぞらせ、着実に挑戦者にダメージを与える。ジャブからボディ、ボディをのぞかせながらのフックと上下の打ち分けで完全に主導権を握った。クワンタイは体勢をくの字にしてこらえるのが精一杯。決着がつくのは時間の問題だった。

「僕にしかできないことを証明し続けたい」
 高みを見据える井岡は、次はフライ級に階級を上げ、3階級制覇への挑戦が濃厚だ。夢の5階級制覇、「僕にしかできないこと」を追い求めて、24歳は名前のごとく飛翔する。

<宮崎、ミニマム級に「悔いはない」>

「正直、(勝った)実感がない」
 そう宮崎が振り返る苦しい試合だった。

 どんどんパンチを繰り出して前進する暫定王者に1Rの時点で顔が赤く染まった。2Rにはバッティングで左目の上を負傷。王者も左ボディから回転力で対抗しようとするも、なかなか相手の出足を止められない。

 接近戦で打ち合う展開に5Rには再びバッティングが発生。お互いに出血し、ドクターチェックが入る。ただ、中盤に入り、宮崎も適度な距離をとり始め、ステップインしての右ストレートが決まり出す。カウンターの左フックも入り、ペースをつかむ。体を揺らしながら、前後左右にステップをとって相手のパンチをかわし、リズムも良くなった。動きが落ち、手数が減ったシルベストレとは対照的だった。

 だが、ガードを下げて拳を振り上げる宮崎のスタイルはひとつ間違うと被弾のリスクもある。10Rにはまたもバッティングで右目尻からも出血。両まぶたは大きく腫れ、11Rには左フックをもらってふらつくシーンもあった。

「僕より若くて勢いがあった。前に出てくる根性があるので、僕も倒れないように根性出した」
 逆転を狙って攻勢を強める相手にひるまず、パンチを返し、足を止めて打ち合う。ジャッジの判定はドローが1者、2者は1〜2ポイント差ながら宮崎を支持。際どい勝負ながら、中盤でのリードを何とか守りきった。
 
 本来の階級はひとつ上のライトフライ級。いつも減量には苦しんでいる。それでも暫定王者との王座統一戦を希望し、勝利でミニマム級を“卒業”をする。
「ミニマム級には悔いはない。ライトフライ級に上げて2階級制覇を狙います」
 盟友の井岡とともにベルトを返上し、新たなチャンピオンロードに歩を進めるつもりだ。