ボクシングのロンドン五輪ミドル級金メダリストで、OPBF東洋太平洋同級1位の村田諒太(三迫)のプロ2戦目が12月6日に東京・両国国技館で開催されることが決まり、15日に都内ホテルで発表会見が行われた。対戦相手はデイブ・ピーターソン(米国)で戦績は14戦13勝(8KO)1敗。会見で村田は「自分がボクシング界の主役であることをみせる」と力強く宣言した。同日はWBC世界フライ級タイトルマッチも実施され、王者の八重樫東(大橋)が、同級1位のエドガル・ソーサ(メキシコ)の挑戦を受ける。また史上最速タイとなるプロ4戦目で日本タイトル(ライトフライ級)を獲得した井上尚弥(大橋)がOPBF東洋太平洋のベルトをかけて、ライトフライ級2位のヘルソン・マンシオ(フィリピン)と激突する。
(写真:豪華カードに意気込む(左から)井上、八重樫、村田)
「すべてメインイベントになってもおかしくない」(大橋ジム・大橋秀行会長)
「内容はもちろんカードも申し分ない」(帝拳ジム・浜田剛史代表)
 会見に出席した関係者全員が口を揃えるビッグイベントだ。八重樫の2度目となる防衛戦に、金メダリスト・村田のデビュー2戦目、そして“怪物”の異名を持つ井上が世界挑戦への足がかりとして東洋太平洋王座を狙う。この3大決戦に加えてOPBF東洋太平洋バンタム級王者の椎野大輝(三迫)に、岩佐亮佑(セレス)が挑む日本人対決も組まれた。さらには21日にプロテストを受験する井上の弟・拓真のデビュー戦も行われる予定になっている。

 八重樫は8月にオスカル・ブランケット(メキシコ)を判定で下して初防衛を果たした。4カ月ぶりとなる次戦は指名挑戦者となるソーサと拳を交える。ソーサはWBCライトフライ級のベルトを10度に渡って守ってきた強敵だ。ライトフライ級時代には國重隆(ワタナベ)をTKOで倒すなど、日本人には過去4戦4勝と負けていない。

 だが、八重樫は対戦を想定して「前々から研究している。対策は練っている」と手応えをつかんでいる様子だ。前回の試合から間を空けずにスパーリングを再開しており、この13日には地元の岩手で行われたいわて北上マラソンにゲストランナーとして出場した。結果は42.195キロを4時間6分57秒で見事、完走。「足はボロボロ」と苦笑しつつもスタミナ面は万全だ。「打ち合って、ドロドロになって、僅差の判定でも勝てばいい」と世界王者として今年最後の試合を締めくくる。

 村田は8月に現役の東洋太平洋王者・柴田明雄(ワタナベ)を2RTKOで破る衝撃デビューを飾った。だが、さらなる高みを見据え、「技術もスピードもない」と自己評価は厳しい。「壁がないと成長しない」と2戦目では早速、本場・米国のボクサーとの闘いに挑む。契約体重やラウンド数などの詳細はまだ決まっていないが、帝拳ジムの浜田代表によると、前回より2R多い8Rでの試合になる見込みという。

「僕の階級はボクシング界でも中心となっている。世界的なスーパースターがたくさんいる。ハードなトレーニングとハードな相手が必要」と10月中には再び渡米し、現地でスパーリングを重ねる予定だ。最近は携帯電話会社のCMキャラクターにも起用され、早くもボクシングの枠を越えたスターになりつつある。村田は会見で発した「ボクシング界の主役」の意味を問われると、「日本のボクシング界の主役ではない。世界の主役になるのが目標」とキッパリと断言した。

 プロ5戦目が東洋太平洋タイトルマッチとなった井上は「必ず世界につながる勝ち方をしたい」と決意を語った。8月の試合では辰吉丈一郎(後のWBC世界バンタム級王者)らに並ぶ最速の日本王座奪取に成功したとはいえ、試合内容には決して満足していない。田口良一(ワタナベ)をスピードで圧倒しながら気負いもあって倒しきれず、打ち急いで逆に被弾するシーンもあった。

「自分らしいボクシングができず、むしゃくしゃした。打たせずに打つ、本来の井上尚弥のスタイルで勝ちたい」
 そう話す20歳の日本王者が相見えるマンシオは24戦18勝(9KO)3敗3分。一昨年には現在のWBAミニマム級王者・宮崎亮と対戦したが、4RでKO負けを喫している。井上も「流れの中で組み立ててKOを狙っていきたい」とKO勝ちを予告した。前座では「兄はライバル的存在」という弟・拓真のデビュー戦も控えており、兄弟で刺激し合って完勝を目指す。
(写真:「誰が見ても楽しめるボクシングしていきたい」と語る拓真(左)と尚弥)

 帝拳ジムの浜田代表は「世界チャンピオンが日本にたくさんいる。次の段階として中身が問われる」と明かす。現役世界王者だけでも10人が乱立する現状では、少々のことでは注目は集まらない。それだけに現役世界王者に金メダリスト、若き“怪物”が一斉にリングへ上がる年の瀬の両国国技館は熱気に包まれそうだ。