上田哲之「期待と不安のオープン戦」

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 3月3日の広島-埼玉西武のオープン戦は、カープが10-0と圧勝した。オープン戦の勝利で浮かれていても仕方がないが、安心したことがある。

 

 先発した野村祐輔も安定した投球だったが、なによりも二番手で登板した薮田和樹が3回をきっちり抑えたことが大きい。

 

 なにしろ、昨年は15勝3敗。1人で12もの貯金を作って優勝に貢献した。しかしながら、実質上、シーズンを通して投げたのは、はじめてと言っていい。それは、入団してからの投球回数を見るとよくわかる。2015年25、16年31、17年129である。

 

 しかも、あの独特の投球フォーム。高校、大学時代に右ヒジを故障した経歴を考えると、今年は疲れが出てもおかしくはない。

 

 薮田の調子が上がらないと、ペナントレースはきついだろうな、そう思っていた。

 

 その意味で、注目のマウンドだったのだが、思ったよりも、力強いボールがきていた。軽く投げても球速が出る感じがいい。おお、薮田は大丈夫だ。今季もカープは戦える、と一安心したのでした。

 

 この試合は10-0というスコアでもわかるように、カープのいい所ばかり目立ったのだが(というより、西武先発の多和田真三郎が悪すぎた)、もう1人の注目は、鈴木誠也である。

 

 代打で出てきて、多和田のカーブに対してグッとためて、ものの見事なホームランをレフトスタンドに放った。

 

 おお、鈴木も大丈夫だ――と叫びたいところだが、正直言って、まだどこか体が重そうに見えた。

 

 鈴木に関しては、きっと、あせらないほうがいいのだろう。なにしろ右足首の骨折なのだから。無理に開幕に間に合わせようとしないことだ、と見た。5月戦列復帰くらいで十分なのではあるまいか。

 

 その間の4番は、松山竜平にがんばってもらおう。

 

 もう1人。この試合で目を引いたのが、2安打放った堂林翔太である。今年は一回り体が大きくなったように見えるのだ。

 

 この日も6回に、西武のドラフト1位左腕・齊藤大将にインハイを2球攻められたあと、外角のスライダーを見事にライト前に運んでいた。

 

 うーん。でもなあ……。いや、堂林に懐疑的になる気持ちはよくわかる。続かないんじゃないの、と言いたくもなる。しかし、私は期待することにした。

 

 ついでに。3月7日は「社会人オール広島」との練習試合だった。先発はクリス・ジョンソンである。彼の復活なくして今年のペナントレースはない。


 結果は、薮田同様、一安心でした。この時期なりに、ジョンソンらしいボールがいっている。大丈夫です、きっと。
(この試合、中村奬成も2安打したが、その話はまたいずれ)

 

 なんといっても、われわれには、去年のクライマックスシリーズの苦い記憶がある。横浜DeNAには、開幕から五連勝をかますくらいのスタートをきって、昨年の苦手意識を払拭したい。そのためには、相手の豊富な先発左腕を攻略することだ。今よく打っているアレハンドロ・メヒアとか、堂林とか(もしかして中村奬とか)、右打者の伏兵には、ぜひ出てきてもらいたい。

 

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)

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