バレンティン、日本新記録! 2打席連発で57号

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 東京ヤクルトのウラディミール・バレンティンが15日、神宮球場での阪神戦で今季56号ホームランを放ち、シーズン日本記録を更新した。1回の第1打席、阪神先発・榎田大樹のストレートをセンターバックスクリーン左へ運んだ。これまでの日本記録は王貞治(巨人、1964年)、タフィ・ローズ(大阪近鉄、01年)、アレックス・カブレラ(西武、02年)がマークした55本。バレンティンは3回の第2打席でもレフトポール際にホームランを放ち、57号に数字を伸ばした。来日3年目の29歳が49年ぶりに記録を塗り替え、前人未踏の領域に突入した。
(写真:試合後、記念のボード、球団マスコットのつば九郎と記念撮影)
 大きな歴史の壁を突き破るすさまじい一撃だった。
 初回、1死二塁。2ボール1ストライクのバッティングカウント。左腕・榎田が投じた137キロのストレートを叩いた。弾丸ランナーがセンターバックスクリーンへ飛んでいく。

 手応えは十分だ。
「身震いするような気持ち。最高の感触、感覚だった」
 バットを放り投げたバレンティンは、打席内で両手をあげてバンザイ。打球はあっという間にバックスクリーン左へ突き刺さった。一塁側のヤクルトファンのみならず、レフトスタンドの阪神ファンも総立ちになる中、ダイヤモンドを気持ち良さそうに一周した。

 日本記録に並ぶ55号を11日に放ってから、快挙の瞬間を見ようと神宮球場は連日大入りだった。しかし、相手のピッチャーも簡単には打たせてくれず、3戦連続の不発。加熱するファンや報道陣を前に平常心を保つのは容易ではなかったが、「いつか打つ日がくる。余計なことを考えないようにした」と仕留められる球を待った。

 天も金字塔樹立に味方した。ホームの神宮球場は今季34本のホームランを放っている、まさにバレンティンの庭。この日は本拠地での6連戦の最終日だったが、台風接近で午前中は激しい雨に見舞われた。だが、幸運にも午後からは晴れ間も見え、試合開催にこぎつけた。
(写真:スコアボードでも記録更新が大きく表示された)

 重圧から解放されたカリブの怪人は、これだけでは終わらない。
「56号を売って、ホッとして力みが抜けた。まっさらな気持ちで臨めた」
 3回の第2打席、再び観客をどよめかせる。今度は3ボールからインコースへのスライダーを振り抜いた。詰まりながらも打球は高々と舞い上がり、レフトポール際へ飛び込んだ。2打席連発の57号。これは韓国プロ野球でイ・スンヨプが03年にマークした56本を抜き、“アジア記録”となった。

 通算868本塁打をマークした“世界の王”が長年、保持してきた55本のレコードは“不滅”のものとされてきた。過去、ランディ・バース(阪神)、ローズ、カブレラと外国人がその頂に挑戦するも、相手ピッチャーに勝負を避けられ、“王越え”はならなかった。しかし、今回、バレンティンに対する露骨な敬遠策はみられなかった。
「新時代が来たんだと思う。記録は更新されるもの。前に進もうと望んでくれた状況の中で、自分にチャンスが巡ってきた」

 本人がそう語ったように、半世紀の時が経ち、プロ野球界の意識は変わってきている。50本塁打を超えたあたりから、敵味方なく球場全体でバレンティンのホームランを称え始めた。作戦上やむを得ない四球もあったが、バレンティンを歩かせるとヤクルトファンのみならず、相手チームのファンからもブーイングが起こった。そういったファンの思いも大記録を後押しする一因となったことは間違いない。
「ひとりで、この記録はできない。みんなで達成した記録」
 新しいレコードホルダーは声援を送ってくれたファンをはじめ、サポートしてくれたチームメイトやスタッフを「家族」と呼び、感謝の気持ちを口にした。

 一気に57号まで到達し、残りは18試合。今後は、どこまで数字が伸びるかに引き続き注目が集まる。ここまでは出場113試合で57本と2試合に1本ペースで、計算上は66本となる。ホームランに加え、打率も.338でトップ。120打点でトニ・ブランコ(横浜DeNA)を5点差で追う。チームは最下位でクライマックスシリーズ進出は絶望的ながら、セ・リーグではバース以来となる27年ぶりの三冠王も射程圏内だ。

「今まで結果を出そうとすると、力んで数字が落ちた。三冠王は考えないように、今まで通り1打席1打席を集中して臨みたい」
 来日1、2年目は気持ちの波が大きく、好不調がはっきりしていた。だが、3年目に入って自身をコントロールし、人間的にも成長がみえる。「ひとりでは野球はできない。常にチームのためにプレーする。そうすれば自ずと数字が出る」とコメントも“優等生”だ。

 12日にオランダから来日した母アストリッドさんの前で偉業を成し遂げた。その母がココナッツに頭のかたちが似ていることからつけたニックネームはココ。今後もココ一番の場面で、スタジアムに放物線を描く。 

(石田洋之)
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