18日、リフティング技術を競うフリースタイル・フットボールの「Red Bull Street Style(RBSS)ワールド・ファイナル」が東京・増上寺で開幕した。大会には男子が25か国から27人、女子は7か国から8人が出場。この日は19日の決勝トーナメントに向けた予選が行われた。男子部門では前回大会王者の徳田耕太郎(通称Tokura)、今年のジャパンファイナル勝者・長江直幸(通称Nao)が予選通過の16人に入った。明日の決勝トーナメントには、元サッカーイタリア代表DFマルコ・マテラッツィ氏がスペシャルジャッジとして参加する。
(写真:予選6試合を全勝したTOKURA)
 日本で初開催となったRBSSワールド・ファイナル。予選で2人の日本人選手の内容は大きく差が開いた。予選は25人が4組(ブルー、レッド、ホワイト、イエロー)に分かれて、グループリーグを行い、勝敗数で各組4位までが決勝Tに進出。TOKURAはレッド、NAOはホワイトに入った。試合は1対1のバトル形式で、ひとつのボールを使い、3分間の中でお互い30秒間ずつトリックを披露する。審査基準は「スタイル」「コントロール」「バラエティー」の3項目。項目ごとに1名、計3名の審査員が勝敗を判定する。

 尻上がりのディフェンディングチャンピオン

 TOKURAは序盤の2試合を苦しんだ末に勝利した。2試合ともにジャッジは2−1。「この2つはよくなかった」と本人も苦戦を認めた。理由は凡ミスを連発したこと。前回王者、そして自国開催のプレッシャーを感じていたのかもしれない。

 ただ、アジア人初の世界王者は、そこから立て直した。つづく第3戦、第4戦をジャッジスコア3−0で勝利し、2戦を残して各組4位以内が進めるベスト16入りを確定させた。これについては「ミスも少なく、いい内容だった」と納得の表情を見せていた。

 ブレイクタイムを挟んで行われた夜の部では、TOKURAらしい繊細かつダイナミックな技でギャラリーを沸かせた。最終戦では浮かせたボールをバック宙しながらヒザで挟み込む「TOKURAクラッチ」を披露。昨年の同大会を制する原動力となった大技を、完璧に決めてみせた。TOKURAは夜の部の2試合もジャッジスコア3−0で快勝した。

「かなり緊張したなかで、1戦1戦集中して戦った。昨年の世界大会もそうだったが、出し惜しみして危ない試合をするよりも、ステージの感触を確かめることも兼ねて全部出した。去年のイタリアの勝ちパターンを実践している」

 TOKURAは充実した表情で予選を振り返った。今大会で優勝すれば、史上初の連覇、?2となる。「もっと日本のフリースタイルフットボールシーンが盛り上がってほしい」と語るTOKURAが、前人未踏の偉業に挑む。

 日本王者が見せた“らしくないミス”

 一方で、NAOは、昼の部に行われた3戦をすべて3−0で勝利し、決勝T進出を確実にした。しかし、本人は「驚くほどミスが多かった」と内容に不満気な様子だった。
(写真:NAOのパフォーマンス)

 ミスの要因として、NAOは世界大会の緊張に加えて、「ボールの空気圧が少し柔らかい」ことが影響したと分析した。普段はパンっと張った空気圧のボールで練習しているが試合で使うボールは「ベコベコしていた」と違和感を抱いたという。ただ、ボールに関しては全選手が同じ状況だけに、優勝に向けて修正の必要が出てきた。

 だが、夜の部でも、NAOは本調子には遠く、あっさりとボールを落下させてしまう場面が見受けられた。
「予選突破が決まっていたので、中途半端な気持ちだったかもしれない。相変わらず、ボールの柔らかさも気になってしまった」

 NAOはこのように振り返った。決勝Tまでの時間で、いかにボールの感覚に慣れるかが、ポイントとなるだろう。

 ブレイクタイム中に行われた記者会見では、「結果にこだわってやりたい」と強い意欲を見せていた。本人は反省しきりの予選だったが、時折見せた繊細すぎるボールタッチは目の肥えたフリースタイルファンをうならせた。決勝Tでは、予選以上に「NAOコール」が響くはずだ。決勝Tでその声援に応えられるか。