12日、プロ野球セ・リーグのクライマックスシリーズファーストステージが開幕し、阪神(レギュラーシーズン2位)と広島(同3位)が対戦した。CS初出場の広島は4回表に1点を先制。その裏に追いつかれたが、5回にキラ・カアイフエの3ランですぐに勝ち越した。投げては先発の前田健太が7回5安打1失点の好投。9回には4点を追加し、広島が8対1で快勝した。

◇ファーストステージ
 主砲・キラ、決勝弾含む猛打賞(広島1勝0敗、甲子園)
広島   8 = 000130004
阪神   1 = 000100000
勝利投手 前田健(1勝0敗)
敗戦投手 藤浪(0勝1敗)
本塁打  (広)キラ1号3ラン、丸1号ソロ、岩本1号3ラン
“下剋上”を狙う広島が、エースと4番の活躍で好スタートを切った。

 レギュラーシーズン3位で16年ぶりのAクラスに入り、初のCS出場を果たした広島。先発のマウンドには大方の予想通り前田が上がった。対する2年ぶりにCSの舞台に還ってきた阪神は、高卒ルーキーの藤浪晋太郎。前田にとって、今季は阪神に4勝1敗、防御率0.40と抜群の相性を誇るが、藤浪は唯一黒星をつけられた相手だった。

 序盤は藤浪、前田がいずれも1安打ピッチングでゼロ行進。そして試合が動いたのは4回だった。広島はクリーンアップからの攻撃、3番・梵英心、4番・キラの連打で藤浪から無死一、二塁のチャンスを作る。迎えるバッターは松山竜平。フルカウントから7球目を「気持ちで打った」と、一二塁間を破るライト前ヒットを放った。広島が先制に成功した。

 しかし阪神もすぐさま反撃を試みる。内野安打で出塁した鳥谷敬が2死からスチールを決め、得点圏のチャンスを演出。今季、対前田の打率が5割5分6厘の今成亮太へ託す。すると今成は期待に応え、前田のストレートをセンターに弾き返した。シーズン2位の阪神が意地を見せ、スコアをタイにした。

 追いつかれた広島だが、エースのバットが口火を切る。5回表、先頭の前田がライトへヒットを放った。1死後に2番の菊池涼介にもヒットが生まれ、一、二塁の好機を作った。3番の梵は外角低めのカットボールに空振り三振に倒れたが、打席には主砲のキラ。「セカンドランナーを還そう」との意識で臨んだキラは、カウント2−1から「前の打席でも、前の打者の時も見ていて、軌道は分かっていた」という甘く入った藤浪のカットボールを見逃さなかった。打った瞬間にそれとわかる当たり。「いいスイングができた」と自賛する打球はライトスタンドに飛び込んでいった。エースがチャンスメイクをし、主砲が還すかたちで広島が再びリードを奪った。

 3点の貯金をもらった前田は、その後を無失点で抑える力投を見せた。7回裏には、1死一、三塁と最大のピンチを招いたが、ここからがエースの真骨頂だった。今季限りでの引退を決めている阪神の代打の切り札・桧山進次郎をショートフライに仕留めると、途中出場の強打のキャッチャー・日高剛をピッチャーゴロで切って取り、猛虎打線をシャットアウト。前田はマウンド降りる際に雄叫びを上げ、グラブを叩いて喜びを露わにした。

 奮闘したエースから後を継いだ永川勝浩が8回裏を三者凡退に抑えると、9回には丸佳浩にソロ、岩本貴裕に3ランが飛び出し、一挙に4点を加えた。7点の大量リードにも野村謙二郎監督は試合の締めくくりに守護神を指名。キャム・ミコライオは指揮官の期待にきっちり応え、最終回を3人でピシャリと抑えた。8対1で広島が初のCSで快勝し、ファイナルステージへ向け、あと1勝とした。

 一方、阪神は、ほとんどいいところなく敗れた。天敵・前田からチャンスを作ったものの、結局5安打しか打てなかった。メジャーリーグ帰りの西岡剛、福留孝介はいずれもノーヒットとふるわなかった。今季10勝を挙げたスーパールーキーの先発という“奇襲”も実らず、9回にはリリーフ陣が炎上。この試合、被安打13、8失点を喫した。CS制度が始まって以来、ファーストステージに3度出場し、1勝6敗。すべて初戦を落としていた。結局、今季も初戦をモノにできず崖っぷちに追い込まれた。