21日、プロ野球パ・リーグのクライマックスシリーズファイナルステージ第4戦が行われた。中盤、目まぐるしく試合の流れが変わったこの試合、楽天が8回に見事な集中打でリードを広げ、最後はエース田中将大が締めて、勝利を収めた。これで通算成績を4勝1敗とした楽天がファイナルステージ突破を果たし、創設9年目にして初の日本シリーズ進出を決めた。

◇ファイナルステージ第4戦
 田中、再び胴上げ投手に(楽天4勝1敗、Kスタ宮城)
千葉ロッテ    5 = 000400100
東北楽天      8 = 12020012×
勝利投手 斎藤(1勝0敗)
敗戦投手 カルロス・ロサ(0勝1敗)
セーブ   田中(1勝0敗1S)
本塁打  (ロ)G.G.佐藤1号3ラン
       (楽)ジョーンズ2号2ラン、マギー1号ソロ
 勝つか引き分けるかで、初の日本シリーズ進出が決定する楽天。一方、もう勝つしかない崖っぷちに立たされた千葉ロッテ。両者にとって大一番となった一戦は、シリーズ初登板の辛島航と、ファイナル進出を決めた埼玉西武とのファーストステージ最終戦以来の登板となった唐川侑己の先発で始まった。

 辛島は、ゆったりとした投球フォームからコーナーを丁寧に突くピッチングで、まずは根元俊一を空振り三振に切って取ると、この日は下位から2番に起用された清田育宏をライトフライに、そして最後は井口資仁をショートゴロに打ち取り、落ち着いた立ち上がりで3者凡退に切って取った。

 一方、唐川は先頭の岡島豪郎を死球で出すと、藤田一也には四球を与え、無死一、二塁と不安な立ち上がりとなった。すると、ここで銀次が三塁線へ送りバントを試みる。この打球を唐川が一塁へ送球するも、銀次の足が一瞬早く、内野安打となり、満塁となった。続くジョーンズはレフトに打ち上げたものの、犠牲フライには十分だった。三塁ランナー岡島がタッチアップして先制のホームを踏んだ。さらに二塁ランナー藤田も好走塁を見せ、三塁へ。1死一、三塁として、マギーを迎えた。楽天としては一気にたたみかけたいところだったが、マギーはキャッチャーへのファウルフライに。続く舛田慎太郎もライトフライに倒れた。唐川は不安な立ち上がりだったものの、なんとか最少失点に抑える。

 しかし、2回裏にも唐川は1死一、三塁と再びピンチを迎えた。唐川は岡島をセカンドゴロに打ち取るも、一塁ランナー聖澤諒が一、二塁間で止まったことで、セカンド根元に迷いが生じ、ダブルプレーを取ることができなかった。楽天はこの間に三塁ランナーが返り、2点目を挙げた。さらに唐川は次打者の藤田をストレートの四球で出してしまい、2死一、二塁とした。ここで後がないロッテは早くも唐川を諦め、雨で中止となった前日に先発登板が予定されていたルーキー松永昂大にスイッチした。松永は西武とのファーストステージ第2戦で先発し、3回途中7安打5失点で降板している。だが、楽天に対しては今シーズン、11試合に投げて、2勝0敗、防御率0.55と相性がいい。果たして、この継投は吉と出るのか、凶と出るのか――。軍配が上がったのは、楽天の方だった。銀次が甘めに入ってきたストレートを完璧にとらえてレフト前へ。俊足の岡島が二塁から一気にホームへ返り、楽天はその差を3点に広げた。

 しかし4回表、ロッテがベテランの一振りで試合の流れを変える。先頭の清田、井口に連打が出て、無死二、三塁と絶好のチャンスをつかんだ。今江敏晃のショートゴロの間に三塁ランナー清田が返り、1点を挙げた。2死後には、楽天バッテリーにミスが続く。辛島はサブローに対し、この試合初めて四球を出すと、G.G.佐藤の打席では暴投で二、三塁とピンチを広げてしまう。すると、今シリーズ初出場のG.G.佐藤が打った瞬間にそれとわかる特大3ラン。2年ぶりに日本球界に復帰したベテランが先発に起用した指揮官の期待に見事に応え、ロッテが1点を勝ち越した。

 打線から大きな援護をもらった松永だったが、その裏、2死を取ったところで、銀次にストレートの四球を与える。打席にジョーンズを迎えたところで、伊東勤監督は松永から3番手・西野勇士をマウンドに上げた。しかし、この早めの継投が裏目に出るかたちとなった。ジョーンズは西野の初球、外角に甘く入るストレートを楽天ファンが詰めかけたレフトスタンドへ。すかさずお返しの一発で、楽天が再び勝ち越した。

 5、6回は楽天は2番手・レイが無失点に抑える好投を見せると、ロッテも西野が楽天に追加点を許さなかった。再び試合が動いたのは7回表。この回からマウンドに上がった楽天の3番手・長谷部康平に対し、先頭の鈴木がヒットで出塁すると、里崎が送りバントを決めて、1死二塁とした。ここで打席には根元。第2戦では長谷部から結果的に試合を決める2点タイムリーを放っている根元は、ここでも相性の良さを見せた。外角低めのスライダーをうまくバットに当て、センターへ。二塁ランナー鈴木が一気にホームへ返り、ロッテが同点に追いついた。

 なおも1死一塁の場面で、楽天は4番手・斎藤隆にスイッチした。その斎藤が井口に対し、嫌な予感したのか、投げにくそうな様子を見せ、ボールカウント3ボールとなったところで、井口を歩かせる。井口に対し、無理をしなかったことが結果的には吉と出た。斎藤は次の今江をわずか1球でセンターフライに打ち取り、ロッテに勝ち越しを許さなかった。そしてその裏、代わったばかりのカルロス・ロサから1死後、自らの存在感を示すかのように、マギーが初球をレフトスタンドへ運び、楽天が1点を勝ち越した。

 8回表、楽天は5番手に第2戦に先発し、9回を投げたルーキー則本昂大をマウンドに上げた。則本は先頭の角中勝也に対し、初球から150キロ前後のストレートで押し、最後はフォークボールでセカンドゴロに打ち取った。続くサブローに対しては緩い変化球で入り、気持ちのこもったストレートで2ストライクに追い込むと、サードフライに打ち取る。そして第2戦で貴重な一発を放った代打・ブラゼルには、2球で2ストライクに追い込むと、最後は高めのストレートで勝負を挑んだ。やや甘く入ったこのボールをブラゼルが強振すると、打球はセンターへ高々と上がる。あわやホームランかと思われたが、則本の球威が勝り、打球はフェンス手前で落ちた。

 追加点が欲しい楽天はその裏、この回からマウンドに上がったロッテ5番手の服部泰卓から1死後、嶋基宏が2ストライクと追い込まれた状態から粘って四球で出塁した。続く岡島の打球はセカンドへ。これをロッテのセカンド根元が一塁へ送球したものの、岡島の足が早かった。さらに根元の送球をファースト井口がキャッチすることができず、ボールがファウルグラウンドへと転がっている間に嶋が三塁へ進んだ。このプレーが結果的に楽天に勝利を呼び込むこととなる。続く藤田が外角低めのスライダーを精一杯バットを伸ばして当てると、打球はサード後方へフラフラと上がり、テキサスヒットに。三塁ランナー嶋が返り、楽天に貴重な追加点が入った。なおも2死ながら一、二塁の場面、銀次のヒットで二塁ランナー岡島が俊足を飛ばし、一気にホームへ。ダメ押しとなる1点を追加し、その差を3点に広げた。

 そして9回表、最後を飾るのはやはりこの男だった。スタンドから“マー君”コールがあがる中、楽天のマウンドにはエース田中将大が上がった。田中はこの日2安打と当たっている鈴木を151キロのストレートでキャッチャーへのファウルフライに。代打・金澤岳はわずか1球でファーストゴロに仕留め、日本シリーズまであと1アウトとした。球場は否応なく緊張感が高まる。

 ロッテも根元、代打・福浦和也と田中に連打を浴びせ、意地を見せる。だが、ランナーを背負ってから本領を発揮するのが田中だ。最後は井口をサードゴロに打ち取り、ゲームセット。楽天がファイナルステージを突破し、創設9年目にして初めて日本シリーズ進出を決めた。

 試合後、7度、宙に舞った星野仙一監督は次のように語った。
「今日はスタンドとグラウンドが一体となっていた。ありがとう。(胴上げは)ペナントレースは西武ドームだった。そういう意味では必ずこのクリネックスで、みんなの前で胴上げしてもらいたいと、それを選手と約束していた。オレは本当に幸せな男だ。CSは信じられないくらい、しっかりとやってくれた。常に前を向いてバットを振る、ボールを投げる、(日本シリーズも)その姿勢でいきたい」

 5日後の26日からは、セ・リーグチャンピオンの巨人との日本シリーズが、楽天の本拠地で開幕する。「私の永遠のライバル、ジャイアンツの胸を借り、頭を下げて、やっつけます!」と星野監督。いよいよ日本一の座をかけた戦いが杜の都で始まる。