29日、プロ野球日本シリーズ第3戦が行なわれた。2回裏、打者一巡の猛攻で、巨人の先発・杉内俊哉から一挙4点を奪った楽天は、先発・美馬学がクライマックスシリーズ同様の好投で巨人打線をほぼ完璧に封じた。6回途中、その美馬が打球を右足に当てるアクシデントがあったものの、その後はレイが好救援。最終回は43歳ベテラン斎藤隆がきっちりと3人で終わらせ、楽天が連勝した。巨人は、2番手以降のリリーフ陣が好投したものの、打線が矢野謙次の一発に終わり、本拠地での初戦を制することができなかった。これで通算成績は楽天2勝1敗となった。

◇第3戦
 美馬、6回途中4安打無失点の快投(楽天2勝1敗、東京ドーム)
東北楽天   5 = 040000010
巨人      1 = 000000010
勝利投手 美馬(1勝0敗)
敗戦投手 杉内(0勝1敗)
本塁打  (巨)矢野1号ソロ
 1勝1敗のタイで迎えた第3戦は序盤、思わぬ展開を見せた。巨人の先発は、昨年は左肩の故障でポストシーズンでは登録抹消され、登板がかなわなかった杉内。巨人のユニフォームでは初の日本シリーズとなった杉内は、2年分の思いを乗せてマウンドに上がった。しかし、それが空回りとなる結果となる。

 初回、先頭の岡島豪郎が変化球を多投する杉内に対し、ファウルで粘りを見せる。9球目、真ん中低めのスライダーをうまく弾き返すと、ショート坂本勇人のグラブを弾き、レフト前へ。岡島の粘り勝ちとなった。藤田一也はファーストゴロに打ち取られるも、その間に岡島は二塁へ。続く銀次の打球をショート坂本が追いつくも、一、二塁ともにセーフとなる。しかし、ここは杉内が踏ん張る。ジョーンズ、マギーと両強打者を連続で空振り三振に切ってとり、ピンチを凌いだ。

 一方、楽天の先発は千葉ロッテとのクライマックスシリーズ第3戦で、プロ初完封を達成した美馬学。だが、今年5月23日の交流戦では巨人戦打線に6失点を喫し、わずか1回で降板している。果たして、その雪辱を果たせるかが注目となった。その交流戦で美馬から先頭打者ホームランを放った長野久義が、まずはヒットで出塁する。寺内崇幸が今季初となる送りバントを決め、1死二塁とした。スタンドから割れんばかりの大声援が送られ、ドーム内は先制への期待が膨らんだ。しかし、阿部慎之助、村田修一はその期待に応えることができず、両者ともに空振り三振に倒れた。

 2回表、今シリーズ初めて先発出場となった牧田明久がヒットで出塁し、楽天は再び無死からランナーを出す。松井稼頭央もヒットで続くも、一塁ランナー牧田が三塁を狙う。これがオーバーランとなり、タッチアウトとなった。それでも、その間に松井は二塁へ。さらに暴投で三塁へ進むと、嶋基宏は四球を選ぶ。美馬は見逃し三振に倒れるも、岡島が死球で出塁し、2死ながら満塁となった。ここで藤田は真ん中低めの直球を完璧にとらえ、左中間へ弾き返した。これが2走者が返るタイムリー二塁打となった。なおも2死二、三塁から銀次が走者一掃となるライトフェンス直撃のタイムリー二塁打を放つ。楽天のリードは4点に広がった。

 さらに、杉内がジョーンズにストレートの四球を与えたところで、巨人ベンチが動いた。杉内を諦め、早くも継投に入る。2番手には小山雄輝をマウンドに上げた。しかし、その小山もマギーを四球で出し、満塁としてしまう。それでも牧田を三振に切ってとり、追加点を許さなかった。打線から大きな援護をもらった美馬は、ますますピッチングが冴えわたり、2、3回を3者凡退に切ってとって流れを引き寄せた。

 だが、2回途中から継投した小山、さらには6回から3番手としてマウンドに上がった高卒2年目、19歳の今村信貴から、なかなか追加点を奪うことができない楽天打線。3回以降は巨人ともにゼロ行進が続いた。

 すると6回裏、楽天に思わぬアクシデントが起こった。2死後、阿部の打球が美馬の右足を直撃する。美馬はすぐにボールを拾い直して一塁へ送球するも、これが悪送球となり、阿部は二塁へ。記録はヒットとなり、阿部にとっては予想外のかたちで今シリーズ初安打となる。治療のためにベンチに下がった美馬だったが、結局そのまま降板となる。この嫌な流れを払拭したのが、急遽マウンドに上がった2番手・レイだった。レイは村田をセンターフライに打ち取り、その回をゼロに抑えると、7回裏は3者凡退に切ってとる好投を見せた。

 3回以降、追加点が奪えずにいた楽天は8回表、その回から4番手としてマウンドに上がった青木高広をとらえた。1死から藤田、銀次と連打を浴びせると、この試合では快音が聞かれていなかったジョーンズが、ショートの頭上を越えるレフト前ヒットを放つ。二塁ランナー藤田が一気に三塁を回り、ホームへ。クロスプレーとなったが、藤田の足が一瞬早くホームをつき、楽天に待望の追加点が入った。なおも二、三塁。マギーが敬遠となり、満塁となった。牧田が三振に倒れて2死。ここで松井が三遊間に強い当たりを放つ。この打球をサード村田が弾き、一瞬、楽天に再び追加点が入るかと思われた。しかし、村田のグラブを弾いた打球はちょうど坂本のところへ転がり、これを坂本がジャンピングスローで二塁へ。危機一髪でアウトとし、なんとか最少失点に抑えた。

 明日以降につなげる意味でも、なんとか1点が欲しい巨人はその裏、今シリーズ初出場の代打・矢野謙次が一矢報いるかたちで一発を放つ。この一打に触発されるかのように、長野がピッチャーへの強襲ヒットで出塁するも、代打・脇谷亮太、阿部と後続が続くことができなかった。

 楽天4点リードのまま、試合は最終回へ。9回裏、楽天のマウンドには43歳のベテラン斎藤隆が上がった。気合いがみなぎる斎藤。その投球には闘志が乗り移っていた。村田をわずか2球でセンターフライに打ち取ると、高橋由伸には鋭く落ちるフォークで空振り三振に切ってとる。最後は代打・石井義人を2球で2ストライクに追い込むと、内角直球で詰まらせ、ライトフライに打ち取った。

「東京ドームでは打線が爆発してくれるでしょう」
 Kスタ宮城での第2戦での星野仙一監督の言葉に応えるかたちで、野手は先発全員安打の14安打を放った楽天打線。しかし、指揮官は「まだ小爆発。明日こそ大爆発してくれるはず」と、さらなる打線の奮起を促した。明日の第4戦を制すれば、球団、そして星野監督にとっても初の日本一に王手をかける。一方、巨人は明日落とせば、崖っぷちに立たされるだけに、絶対に負けられない。両者にとって大事な一戦となる第4戦は、巨人・ホールトン、楽天はハウザーの外国人投手同士の先発で幕が開ける。