30日、プロ野球日本シリーズ第4戦が行なわれた。連勝して勢いに乗る東北楽天は初回、アンドリュー・ジョーンズの3ランで先制。互いに1点を取り合い4回裏に巨人が1点差に詰め寄ると、5回には長野久義の2点適時打が生まれ、逆転に成功する。巨人は6回に追いつかれるも、7回に寺内崇幸の一打で再びリードを奪う。その1点のリードをスコット・マシソン、山口鉄也が守り切り、6−5で巨人が勝利した。これで通算成績は2勝2敗のタイとなった。

◇第4戦
 長野、全5打席出塁し3打点の活躍(巨人2勝2敗、東京ドーム)
東北楽天   5 = 310001000
巨人      6 = 10022010×
勝利投手 マシソン(1勝0敗)
敗戦投手 長谷部(0勝1敗)
セーブ   山口(1S)
本塁打  (楽)ジョーンズ1号3ラン
「非常に苦しいゲーム。2勝2敗のタイに持ち込めたことは非常に大きい」。巨人の原辰徳監督は胸をなでおろした。シリーズ連敗中で、序盤から劣勢を強いられながらも勝ち切った。チームの総合力でもぎとった大きな1勝だった。

“打撃の神様”川上哲治氏が28日に逝去したことに伴い、試合前には追悼セレモニーが行なわれ、全選手が喪章を付けて戦った。V9時代の指揮官のはなむけに是が非でも勝ちたい巨人は、ここまでの3戦で打率1割3分8厘、わずか4得点と貧打に泣いていた。そこで原監督は打線を大幅に一新した。ピッチャーを除く6〜8番が代わりクリーンアップの順番も組み替えた。「スタメンが変わっただけ全員野球をやる」と指揮官に迷いはなかった。

 だが初回は制球の定まらないデニス・ホールトンが四球、死球と簡単に塁を与えてしまう。楽天は労せずして無死一、二塁のチャンスを迎えた。1アウト後、打席には4番のジョーンズ。カウント0−1からのインハイのストレートをフルスイング。打った瞬間にそれとわかる当たりだった。打球は楽天ファンの待つレフトスタンド最上段に飛び込む3ランホームラン。メジャーリーグで通算434本塁打の大砲は、その実績にたがわぬパワーを見せつけた。

 その裏、楽天の先発ジム・ハウザーもコントロールが安定せず2四球を与え、2死一、二塁のピンチを招いた。4番から“降格”した5番・村田修一はハウザーの初球をレフト前に弾き返した。ランナー1人が還り、巨人がすぐさま1点を返した。すると2回表には楽天が藤田一也のタイムリーで再び突き放す。

 3点を追いかける巨人ベンチはホールトンを3回で諦め、4回からは高卒2年目の今村信貴をマウンドに上げた。今村は先頭こそ内野安打を許したものの、続く3人を打ち取り、この回をゼロで抑える。

 19歳の力投に応えるかたちで、打線も奮起する。この回から登板の楽天ルーキー宮川将から代打・松本哲也、途中出場の亀井義行が四球を選び、無死一、二塁の場面で長野。「マツ(松本)とカメさん(亀井)がつないでくれた。自分も後ろにつなげよう」という意識で臨んだ打席で、外角球を逆らわずに一二塁間へ打ち返した。俊足の松本がホームへ生還し、1点を返す。寺内が死球で塁が埋まり1死後、阿部慎之助が犠牲フライで加点。1点差に迫った。

 5回からは澤村拓一がマウンドに上がり、三者凡退に切って取った。その裏の攻撃では1死から松本が四球を選んで、出塁すると亀井はセカンドの名手・藤田のエラーで一、二塁。再び巡ってきた好機に長野は「後ろに寺内さんがいるので、回せば点が入る
」と、つなぐ意識を徹底した。1−1からの3球目、甘く入ってきた変化球を弾き返した。打球は左中間を破る二塁打で、松本と亀井がホームイン。長野の連続タイムリーで巨人が逆転した。

 しかし、やっと奪ったリードを守り切れない。2イニング目に突入した澤村は、先頭の松井稼頭央にヒットを許すと、送りバントで得点圏にランナーを進められる。続く聖澤諒には外の真っすぐを左中間に打ち返され、同点打を浴びてしまう。1死後、岡島豪郎にボテボテの内野安打を許し一、三塁のピンチを迎える。ここは澤村が粘り、今シリーズ好調の藤田をセカンドゴロに仕留めた。

 同点の7回から、巨人は勝利の方程式のひとりマシソンを投入した。マシソンは190センチを超える長身から投げ下ろす威力のある速球を武器に楽天打線を手玉にとる。三者凡退に抑え、リズムを作る。

 すると、その裏の巨人は松本がヒットで出ると、亀井が送りバントでつなぐ。つづく長野が敬遠気味に歩かされると、打席には寺内。クライマックスシリーズでは広島の前田健太から、日本シリーズでは田中将大から一発を放つなど、このポストシーズンはラッキーボーイ的な存在だ。原監督は打席に立つ前に寺内に耳打ちをし、「思い切り踏み込んでいけ」とアドバイス。寺内は3球目のスライダーを踏み込んで振り切った。当たりは良くなく、打球はふらふらとライト線方向へ。「落ちろ、フェアになれ」との寺内の心の叫びも届き、フェアゾーンぎりぎりにポトリと落ちた。

 8回を2イニング目のマシソンが凌ぐと、最終回はクローザーの西村健太朗ではなく山口がマウンドへ。岡島、藤田、銀次と3人の左打者が続く中、山口は7球で料理した。6−5で巨人が接戦を制した。

 試合後、お立ち台に上がった3打点の長野、決勝打の寺内の他にもヒーローはいた。原監督が「いい働きをした」と称えた途中出場の松本、亀井はつなぐ意識でチャンスメイクした。鉄壁のリリーフ陣マシソン、山口の安定感は抜群だった。ただ3番坂本勇人、4番阿部、5番村田と組み替えたクリーンアップからは1安打しか生まれなかった。“主役”が沈黙しても、“脇役”がそれをフォローする。そうやって、勝て切れるところにチームの層の厚さを感じさせた。

 明日の第5戦は巨人が内海哲也、楽天は辛島航が登板する。第6戦の舞台・仙台へは、どちらが王手をかけて進むのか。