31日、プロ野球日本シリーズ第5戦が行なわれた。序盤に2点をリードした東北楽天は、投げては先発の辛島航、2番手・則本昂大の好投で巨人打線を封じた。しかし終盤、巨人が追いつき、試合は延長へ。しかし、巨人の守護神・西村健太朗が突然崩れ、四死球で自らピンチを招く。逆にもらったチャンスを楽天打線は見逃さず、2点を勝ち越した。最後は則本が3者凡退に切ってとる好投を見せ、楽天が接戦を制した。これで通算成績を3勝2敗として、楽天が球団史上初の日本一に王手をかけた。

◇第5戦
 好救援の則本がポストシーズン初勝利(楽天3勝2敗、東京ドーム)
東北楽天   4 = 0020000002
巨人      2 = 0000001010 (延長10回)
勝利投手 則本(1勝1敗)
敗戦投手 西村(0勝1敗1S)
本塁打  (巨)村田2号ソロ
 前日、今シリーズ初めて打撃戦となった第4戦を巨人が1点差で逃げ切り、通算成績を2勝2敗のタイとして迎えた第5戦。この試合に勝った方が、日本一に王手をかけることとなる。

 今シリーズ2試合目の先発登板となった巨人の内海哲也は、初回を3者凡退できってとる好スタートを切った。一方、シリーズ初登板となった東北楽天の辛島航は、1死から寺内崇幸を四球で出塁させると、その寺内に盗塁を許し、ランナーをスコアリングポジションに背負うピンチを迎えた。てしまう。しかし、前日から3番に上がった坂本勇人を見逃し三振に切ってとると、今シリーズ1安打と未だ復調の兆しが見えない阿部慎之助をサードへのファウルフライに打ち取った。辛島は2回裏にも2死から四球でランナーを出すも、無失点で切り抜けた。

 早めに先取点が欲しい楽天は3回表、先頭の松井稼頭央が両チーム合わせて初安打を放つと、続く嶋基宏の打球は高いバウンドボールとなり、めいっぱいグラブを伸ばしたファースト中井大介の頭上を越えて、ライト前へ。松井は三塁まで到達し、無死一、三塁と絶好のチャンスをつくった。辛島は送りバントを試みるも、打球は内海の真正面へ。これを内海が素早く二塁へ送球し、ファーストランナー嶋を刺して1死を取る。しかし、続く岡島豪郎が内角を突く変化球をうまくバットに当てて、レフトへ。三塁ランナー松井がホームへ返り、楽天に待望の先取点が入った。続く藤田一也は内野ゴロに倒れ、一塁ランナー岡島がアウトとなる。しかし、なおも2死一、三塁の場面、銀次が嶋と同じような一塁の頭上を越えるワンバウンドの打球を放つ。これがタイムリーとなり、楽天のリードは2点となった。さらに一塁ランナー藤田も意表を突いてホームを狙うも、タッチアウトとなり、3点目とはならなかった。

 一方、巨人はなかなか辛島を打ち崩すことができずに苦戦する。3、4回は3者凡退に切ってとられ、5回裏にようや1死から中井がチーム初ヒットを放つも、後続が続かなかった。松本がファーストゴロに倒れると、内海は見逃し三振に切って取られる。

 6回表、巨人の守備にミスが出る。先頭の銀次のゴロをファースト中井が弾き、無死からランナーを出してしまう。しかし、味方のミスをカバーするのがエースとばかりに内海が奮闘する。ジョーンズ、マギーと強打者2人をたて続けに内野フライに打ち取ると、この試合は途中出場の聖澤諒をショートゴロに仕留め、無失点で切り抜けた。

 その裏、楽天は辛島に代えて、クライマックスシリーズファイナルステージ、日本シリーズと黒星を喫したものの、好投したルーキー則本昂大を2番手に起用した。則本は1番からの好打順の巨人打線を2三振を含む3者凡退に切ってとり、ベンチの期待に応えた。

 7回表、巨人も継投に入った。2番手に9月中旬から中継ぎに転向した澤村拓一を上げた。澤村もルーキーに負けじと、2三振を含む3者凡退で楽天打線を完璧に封じた。その好投に応えるかのように、その裏、村田修一が一発を放ち、1点差とした。

 8回表、巨人は逆転を信じて“勝利の方程式”のひとり、セットアッパー山口鉄也にスイッチした。山口は2死から銀次を四球で出すも、ジョーンズをライトフライに打ち取り、きっちりと自らの役割を果たす。

 その裏、続投した則本が圧巻のピッチングを披露した。まずは松本を外角低めの145キロの直球を振らせて空振り三振に切って取ると、代打・石井義人には粘られるも、最後は149キロ、伸びのある直球で空振り三振に仕留めた。そして長野久義にはワンバウンド気味のフォークで空振り三振に。3者連続の空振り三振と、チームを勢いづかせる。

 本拠地でみすみす負けるわけにはいかない巨人は9回裏、反撃に転じた。先頭の高橋由伸が今シリーズ自身初ヒットなる二塁打を放ち、一打同点のチャンスをつくる。代走には脇谷亮太が起用された。続く坂本はきっちりと送りバントを決めて、1死三塁とした。さらに阿部は四球を選び、1死一、三塁として、迎えた打席には、7回に則本から一発を放っている村田。打つ気にはやる村田は、2球続けて見送ればボールという外角低目へのスライダーを振りにいき、2ストライクと追い込まれる。そしてカウント2−2からの5球目、外角へのスライダーをひっかけた。打球はピッチャー真正面へ。ダブルプレーと思われたが、則本の反応が一瞬遅れ、グラブに収めることができずに後逸する。速度が落ち、転々とする打球にセカンド藤田が追いついた時には、三塁ランナー脇谷がホームに返っていた。なおも1死一、二塁とサヨナラのチャンスとなる。しかし、ここは則本が踏ん張る。途中出場の亀井善行をキャッチャーへのファウルフライに、続く中井をショートゴロに打ち取り、巨人のサヨナラを阻止した。

 試合は、今シリーズ初の延長に突入した。土壇場で追いついた巨人だったが、10回表、守護神・西村健太朗のピッチングに乱れが生じ、巨人にとっては予想外の展開となる。西村は先頭の則本に四球を与えると、岡島には送りバントを決められ、1死二塁とする。さらに藤田には死球を与え、一、二塁と自らピンチを広げた。

 楽天はノーヒットでもらったこのチャンスを見逃さなかった。銀次が3回に続いて2本目となるタイムリーを放ち、1点を勝ち越した。なおも2死ながら三塁の場面。続くジョーンズの打球はボテボテのゴロとなるも、飛んだところが良かった。ショート坂本が必死に食らいついて捕球し、一塁へ送球するも、ジョーンズの足が一瞬、早くベースについた。主砲の力走で、楽天に貴重な追加点が入った。

 その裏、自らも勝ち越しのホームを踏んだ則本が、ルーキーらしからぬ強気のピッチングを見せ、巨人打線に立ち向かった。まずは松本をレフトフライに打ち取る。すると、ルーキーの力投に守備も応えた。続く代打ロペスの打球を途中出場のレフト森山周が必死に前進し、危機一髪のところでキャッチした。そして最後、則本は渾身の直球で長野をセカンドフライに打ち取り、ゲームセット。これで3勝2敗とした楽天が、初の日本一に王手をかけたかたちで本拠地・Kスタ宮城へと戻る。次戦はエース田中将大の先発が予想されるだけに、楽天にとっては最高のかたちで第6戦を迎えることとなりそうだ。