2日、ヤマザキナビスコカップ決勝が東京・国立競技場で行なわれ、柏レイソルが浦和レッズを1−0で下し、14年ぶり、2度目の優勝を果たした。前半は拮抗した展開が続き、両チームともに決定機をつくりだせない。0−0で前半を終えるかと思われたが終了間際、柏のFW工藤壮人がゴールを奪った。柏は後半、攻勢を強めた浦和に押し込まれたが、守備陣を中心に体を張ってリードを死守。現行の国立で行う最後のナビスコ杯を制した。MVPには決勝点を挙げた工藤が選ばれた。

  工藤、値千金の決勝ヘッド弾!(国立)
浦和レッズ 0−1 柏レイソル
【得点】
[柏] 工藤壮人(45分+1)
「最高でーす!」
 MVP男がロイヤルボックスで絶叫した。柏は工藤が前半終了間際に奪った1点を死守。工藤も攻撃のみならず、献身的な守備で優勝に貢献した。

 序盤は目まぐるしく攻守が切り替わる拮抗した展開だったが、柏はボールポゼッションを高める浦和に徐々に押し込まれていった。しかし、ゴール前にしっかりと組織を構築。シュートまで持ち込まれても、DFが体を投げ出してブロックするなど、集中した守りで浦和に決定機はつくらせなかった。

 一方で、攻撃ではパスミスが目立つなど精度を欠いていいかたちをつくれないでいた。ようやくシュートを放ったのは前半45分。MFジョルジ・ワグネルがPA手前から狙ったミドルシュートがゴール右へ外れた。アディショナルタイムは1分。スコアレスのまま試合を折り返すかに思われた。

 ところが、そのアディショナルタイムに試合は動いた。工藤が先制点を奪ったのである。右サイドでボールを受けたMF藤田優人が、ゴール前へライナー性のアーリークロス。これを、工藤がファーサイドに流れながらヘディングでゴール右へ叩き込んだ。劣勢を耐えての先制劇に、柏サポーターの怒号に近い歓声が起こった。
「ここに来そうだなという感覚で動いた。ワンフェイントを入れて、ファーサイドに流れる駆け引きはもちろんあったが、体制を崩さず、うまく(ゴール右へ)流すことができた」
 工藤は優勝を手繰り寄せる先制点をこう振り返った。

 後半に入ると、柏は同点を狙う浦和の前に守勢を強いられた。14分、PA内に抜け出したMF柏木陽介へスルーパスを通され、シュートを打たれた。DFが体をよせたこともあり、シュートはGK菅野孝憲の正面をついたものの、前半にはなかった決定機をつくられてしまった。
 25分には、MF原口元気に左サイド深くで仕掛けられ、ゴール前にパスを入れられる。MF阿部勇樹に滑り込みながら合わせられたシュートはわずかにゴール上へと外れた。

 浦和の勢いを弱めるために追加点の欲しい柏だったが、カウンターやセットプレーからのチャンスを決めきれないなど、主導権を握ることができない。
 それでも全員がボール際で激しいディフェンスを見せ、浦和の猛攻を凌いでいった。45分、ゴール前の混戦からFW興梠慎三にネットを揺らされたが、オフサイドの判定。柏サポーターの悲鳴は一転して安堵のため息に変わった。4分のアディショナルタイムも耐えきり、柏が1999年以来にナビスコ杯を手にした。

 決勝点の活躍で大会MVPに輝いた工藤は戦前、「自分で決めて勝つ」と語っていた。有言実行の結果に本人も納得の表情を見せた。
「自分にプレッシャーをかけてやってきました。レイソルの9番はこうじゃなければいけないと証明できたと思う」
 また工藤は「今日はハードワークしようと思っていた」と語ったように、守備でも最後まで相手にプレッシャーをかけ続けた。時にはディフェンスラインにまで下がり、浦和の猛攻に耐える守備陣をサポートした。

 リーグ戦で現在17ゴールをマークし、キャリアハイを更新中。A代表にも選出されるなど、工藤にとって今年は飛躍の1年となっている。「結果を残して、自分の存在意義を出していきたい」。彼の辞書に満足の二文字はない。