1日、ヤマザキナビスコカップ決勝(2日、13時5分キックオフ)を翌日に控え、浦和レッズと柏レイソルが会場の国立競技場で前日練習を行った。浦和はボール回しなど軽めのメニューをこなし、柏は冒頭15分のみ練習を公開して決戦に備えた。浦和は2年ぶり5度目、柏は14年ぶり2度目のファイナル進出で、ともに2度目の戴冠を目指す。来年7月から建て替えが始まるため、現・国立で行うナビスコ杯決勝は今年が最後。果たして、メモリアルな一戦で勝ち名乗りをあげるのはどちらのクラブか――。
 21回目のファイナル。 奇しくも2クラブは、J1リーグ第30節で1週間前にも対戦している。前哨戦は2−1で浦和に軍配が上がった。浦和は柏に今季2戦全勝しており、決勝でも相性の良さを示せるか。対する柏は、大一番で雪辱を果たしたいところだ。そんな決勝のポイントとなりそうなのが、両チームの司令塔。浦和はMF柏木陽介、柏はMFレアンドロ(L)・ドミンゲスである。

 恩師にタイトル捧げたい柏木

 浦和のキーマン・柏木は今季、柏戦で2戦4ゴールを挙げている。6−2で大勝した第13節、前哨戦となった第30節でも2得点をマークした。
「(柏からは)今年だけで4点。たまたま今年は相性が良かった。1試合2点取ることはなかなかないことだけど、また良い準備をして(ナビスコ杯)決勝でも取れるように頑張りたい」
 第30節の試合後、柏木はこう意気込んだ。

 柏木に求められている役割は、チェンジ・オブ・ベースだ。2シャドーの一角としてプレーする柏木は、長短のパスを操り、ドリブルで自ら仕掛けることもできる。彼が攻撃のタクトを振るうことで、浦和は速攻と遅攻を使い分けるのだ。2列目でコンビを組むMF原口元気とポジションチェンジを繰り返しながらスペースを見つけ、相手のギャップを突く。また、左足のセットプレーも精度が高く、チームの武器となっている。

 対柏戦で2戦4ゴールを奪っている司令塔は、相手の激しいマークに遭うことが予想される。だが、柏木にマークが集まれば、味方選手への注意が弱まることにもなる。柏木は「チームが優勝できるために良いプレーをしたい」とチームプレーに徹することを誓った。

 腰痛に悩まされているが「大分良くなってきているし、今さらそこを言い訳にする気もない」と頼もしい。
「(浦和には)タイトルを獲りに来た。それを実現できるかは自分たちのプレー次第。(勝てば)個人として初のタイトルになるが、プレッシャーは感じていない。試合を楽しむ中で、今までやってきたことを全部出して、勝利につなげたい」
 浦和の指揮を執るミハイロ・ペトロヴィッチ監督はサンフレッチェ広島時代からの恩師。同じ“ミシャチルドレン”のDF槙野智章、DF森脇良太とともに、指揮官へJ初タイトルをもたらせるか。

 “優勝請け負人”復帰の柏

 柏には頼れる男が戻ってくる。L・ドミンゲスが、左股関節内転筋損傷による長期離脱から復帰。決勝出場に向けてコンディションを上げてきている。

 このブラジル人MFは2010年、当時J2に所属していた柏に加入すると、32試合で13ゴールを挙げるパフォーマンスでクラブのJ1復帰に貢献。翌年には15得点、7アシストの活躍でクラブを初のJ1優勝へ導き、自身もリーグMVPに輝いた。シュート、パス、ドリブルのすべてが高水準で、プレースキックの精度も高い。L・ドミンゲスが復帰することで、柏の攻撃に厚みが出ることは間違いないだろう。

 そんな攻撃のキーマンが負傷したのは8月23日のアジアチャンピオンズリーグ準々決勝・アルシャバブとの一戦だった。すぐに母国ブラジルに帰国し、患部の手術を受けた。術後は「コリンチャンスのメディカルチームに見てもらって、状態を上げてきた」という。

「まだ試合勘などの面で理想的なコンディションではない」と明かしたものの、「試合に向けて強度の高い練習もやったので、体力はもつ自信はある」とフル出場に意欲を見せた。一昨日には、ユースチームとの練習試合で実戦復帰。早速アシストを記録し、「コンビネーションも確認できた」と手応えを口にした。

 L・ドミンゲスが離脱している間、柏はACLで敗退し、リーグ戦も優勝の可能性が消滅した。
「個人的にチームに迷惑をかけている。特にACLで迷惑をかけ、Jリーグもずっと試合に出られていない。(ナビスコ杯決勝という)タイミングで戻ってきて、試合に使ってもらえるということで、今まで迷惑をかけたぶんも『やってやろう』という気持ち」
 前日練習後、彼は力強く語った。

 ナビスコ杯で優勝すれば、J2(10年)、J1(11年)、天皇杯(12年)と4季連続でのタイトル獲得となる。
「(ナビスコ杯のタイトルは)私も取ったことがないし、チームのほとんどの選手も経験がないと聞いている。タイトルを獲る力は自分たちにあるので、それを証明するためにも全力で獲りに行きたい」
 L・ドミンゲスはタイトル、何より試合に飢えている。そんな彼の爆発力を活かさない手はない。

 L・ドミンゲス、柏木はゴールを奪うため、ある時は華麗に、またある時は強引にでも局面を打開しようとする。果たして、2人の司令塔はそれぞれ、“国立”というキャンバスにどのような絵を描くのか。大観衆が彼らのプレーを心待ちにしている。