3日、第67回全日本体操団体選手権決勝が行われ、男子は個人総合世界王者の内村航平ら日本代表経験者を揃えるKONAMIが2年ぶり3度目の優勝を果たした。前回王者で今年の学生チャンピオンの順天堂大学は3位。2位には日本体育大学が入った。女子は予選4位の朝日生命が美濃部ゆう、オクサナ・チュソビチナ(ウズベキスタン)らの活躍で予選1位の日本体育大学の4連覇を阻んだ。
(写真:表彰式で応援団の声援に応えるKONAMIのメンバー<左から山室、内村、植松>)
 王者の意地

 フィナーレは伸身新月面。KONAMIの最終演技者内村が、最終ローテーションの鉄棒で着地をピタッと決めると、会場が沸いた。実施前に勝敗はほぼ決していたが、最後まで内村らしい美しい演技で締めた。この日の最高得点16.000。そこに彼の世界王者としての意地が垣間見た気がした。
(写真:鉄棒で着地を決めガッツポーズ。自然と笑みがこぼれた)

「どうしても勝ちたかった」。キャプテンの小林研也が言ったように、日本代表をズラリと揃えるKONAMIにとって負けるわけにはいかない戦いだった。前年度2位の屈辱、社会人王者としての意地。そして名門チームを背負うプライドが彼らを振るわせた。

 決勝は1チーム6人中3人を種目ごとにエントリーして、6種目の総得点を競う。世界選手権同様の6−3−3制。前日行われた予選の6−4−4制とは異なり、1人のミスも許されない。そんな緊迫した展開の中、KONAMIは内村が「中国みたいな戦い方ができた」とミスのない演技で他を圧倒した。

 団体戦の難しさを内村はこう答えた。「チーム全体を盛り上げるような流れを作ること」。内村は第1ローテーションのゆかから、15.700の高得点をマークしてチームを盛り立てた。出場5種目中3種目が全体トップ。演技の完成度を評価するEスコアは、4種目が9点(10点満点)超えだった。「ただただ、いい演技をしたい」と、貪欲な姿勢で観客を沸かせた。世界選手権の個人総合では内村に次ぐ銀メダルだった加藤凌平(順大)は「これだけ止まっているのは久しぶりに見た」と脱帽した着地は、どの種目もビタッと決めた。

 エースの演技に周囲も応えた。ロンドン五輪団体銀のメンバーであり、先の世界選手権で種目別つり輪7位の山室光史は得意のつり輪で、力強く雄大な演技で全体トップのスコアを叩き出し、流れを加速させた。同じくロンドン五輪の団体メンバーの田中佑典は出場3種目すべてで15点以上を出してチームに貢献した。小林、沖口誠、植松鉱治も安定した力を発揮し、流れを崩さなかった。「18演技をしっかりまとめることができた。KONAMIはチームワークが抜群。本当のチーム戦だった」と内村。2位の日体大に5点以上差をつける圧勝だった。
(写真:山室はつり輪で15.550点をマーク。Eスコアでもトップだった)

 一方、連覇を目指した順大は、ミスが響いて3位に終わった。第2ローテーションあん馬を終えた時点ではKONAMIを上回る得点をマークしていたが、つり輪で逆転を許すと、そのまま差をつけられる一方となった。最後は全日本学生選手権(インカレ)で勝った日体大に抜かれた。

 内村も認めるダブルエース加藤、野々村笙吾を擁し、昨年はKONAMIを破り、10年ぶりの制覇を成し遂げた。それでも2人は試合前から「実力はKONAMIが上」と、チャレンジャーの姿勢を崩さなかった。だからこそ彼らは攻めた。その結果の3位だった。
(写真:体線の美しい野々村の平行棒。ミスはあったがDスコアは6.900点と世界レベル)

 共に「調子が良かった」という決勝だったが、加藤は跳馬で、野々村は平行棒でミスを犯した。加藤はE難度のロペスに挑戦し、「突っ込み気味になった」と着地に失敗。野々村はE難度のバブサーで「いつもより上を狙って、切りかえしが遅れてしまった」と、バーから落下してしまった。

 最終ローテーションの鉄棒はKONAMIの得意種目。種目別で表彰台を独占できるほどのメンバーを揃えてくる。それまでに少しでもリードして迎えたい。そんな思惑があったゆえの戦略だった。昨年は、その攻めの演技でKONAMIを追い詰め、プレッシャーをかけた。だが今回、ミスで敗れたのは順大だった。


<男子決勝>
1位 KONAMI 271.150点
2位 日本体育大学 265.850点
3位 順天堂大学 265.500点

<女子決勝>
1位 朝日生命 159.800点
2位 日本体育大学 158.900点
3位 国士舘大学 158.150点

(文・写真/杉浦泰介)