ボクシングのWBC世界バンタム級タイトルマッチが10日、東京・両国国技館で行われ、王者の山中慎介(帝拳)が挑戦者の同級8位アルベルト・ゲバラ(メキシコ)に9R25秒でKO勝利し、5度目の防衛に成功した。山中はこれで4戦連続のKO防衛。序盤は足を使ってきた挑戦者に苦労したものの、8Rに2度ダウンを奪ってダメージを与えると、9Rには得意の左ストレートで仕留めきった。
 最後は“神の左”が炸裂した。
 ゲバラは山中にとって防衛戦では初めてのオーソドックススタイル。「(これまでの相手だった)サウスポーより左ストレートは入りやすい」(帝拳ジム・浜田剛史代表)と陣営はみていたが、挑戦者が軽やかなフットワークでかわし、なかなかつかまえきれない。

 山中が距離を詰めたところへゲバラは右を振るい、カウンターを狙う。手数で上回り、4R終了時点でポイントではリードしていたものの、王者にとっては間合いをつかむのに苦労している様子がうかがえた。

 しかし、脂ののった王者の左を12R逃れるのは、至難の業だ。ラウンドが進むにつれ、距離が詰まり、右のフックが当たり始める。右から左とフィニッシュブローが相手の顔面をとらえる準備は着々と進んでいた。

 そして8R、山中は満を持して左を伸ばす。ゲバラは逃げ切れず、ロープ際でダウン。立ち上がった挑戦者だが、もう足元はふらつき、王者の攻勢に2度、スリップする。ラウンド終了間際にはワンツーが決まり、このラウンド2回目のダウンを奪った。

 この先はKO劇へのカウントダウンだ。続く9R、左を一層、伸ばして打ち込むと、もうゲバラに避ける余力は残っていなかった。ロープまで吹っ飛び、前のめりにダウン。ひざを突いたままの挑戦者をみて、レフェリーがカウントを途中で止めた。

 これで2度目の防衛戦から4連続KO勝ち。試合後のリングでは「バンタムでは自分が最強」と高らかに宣言した。どんなに相手に警戒されても、終わってみれば左ストレートでのKO。本人が言わずとも、試合を見た誰もが“バンタム級最強”を実感したに違いない。