ボクシングのWBA世界バンタム級タイトルマッチが19日、韓国の済州島で行われ、王者の亀田興毅(亀田)が挑戦者の同級14位・孫正五(韓国)に2−1の判定で辛勝し、8度目の防衛に成功した。自身初の海外での世界戦となった亀田は、地元の声援を受けて果敢に攻めてくる挑戦者に苦戦。10Rには左フックをもらってダウンを喫する。有効打で上回って、かろうじてポイントで勝ったものの、格下相手に王者の強さを示せなかった。
 敵地での防衛戦は難しい。韓国で日本人がタイトルを守ったのは1985年の渡辺二郎(WBAスーパーフライ級)だけだ。この試合も孫が拳を繰り出すごとに会場は大いに沸き、雰囲気は完全アウェーだった。不利な要素をはね返しての勝利とはいえ、内容は決して誉められたものではなかった。

 立ち上がりは相手を圧倒していた。左ボディやストレートから距離を詰めて回転の良いパンチをみせる。手数も良く出ており、試合は亀田のペースだった。

 しかし、ラウンドが進むにつれ、雲行きが怪しくなる。どんどんプレッシャーをかけて前に出る孫にズルズルと後退。うまくサイドにいなす手もあったが、まともに引いてしまう。ロープに詰まったところで、相手の伸びる右を被弾し、試合の流れを手放した。

 5Rには右ストレートに頭が飛び、防戦一方に。中盤以降、足を使って距離をとったり、ボディで相手の体力を削ろうと試みるが、最終的には前へ前へと伸ばしてくる挑戦者の右に対処しきれず、パンチを当てられるシーンが目立った。

 9Rには有効打とバッティングで両まぶたから出血。10Rには左フックをこめかみに受け、マットに手を付いてしまう。亀田はスリップを主張したものの、ダウンと判定された。それでも最後まで手数だけは落とさず、打ち合った分、ベルトは失わなかった。

 同じバンタム級のWBC王者・山中慎介(帝拳)は9日前に、圧巻のKO防衛を果たしている。相手や条件が異なるものの、両者のレベルの違いが、ますますくっきりと出てしまった。