ボクシングのトリプル世界タイトルマッチが大阪・ボディメーカーコロシアムで行われ、IBF・WBA世界スーパーフライ級王座統一戦ではIBF王者の亀田大毅(亀田)が、前WBA王者のリボリオ・ソリス(ベネズエラ)に1−2の判定で敗れ、王座を失った。この試合はソリスが前日計量で規定体重をクリアできなかったためWBAのタイトルを剥奪され、大毅が勝てば王座統一となるルールで実施された。大毅は敗れたものの、IBFの王座はそのまま保持する。同じく実施されたWBO世界バンタム級タイトルマッチでは王者の亀田和毅(亀田)が、同級6位の挑戦者・イマヌエル・ナイジャラ(ナミビア)に3−0の判定勝ち。IBF世界ミニマム級タイトルマッチでは王者・高山勝成(仲里)が、同級6位の挑戦者・ビルヒリオ・シルバノ(フィリピン)を大差の判定で下し、揃って初防衛に成功した。
<疑問だらけのタイトルマッチ>

 そもそも、この一戦を行うべきだったのか疑問だらけだ。
 ソリスは前日計量で1キロ以上もオーバーした上に、途中で減量を諦め、水やコーラを飲んでいた。こういったケースでは当日まで一定の体重制限が設けられたり、グローブの重さを変えるハンデがつけられるが、今回はなし。そのため、ソリスは6キロも増量してリングに上がった。

 一方の大毅はIBFの規定にのっとり、当日朝まで4.5キロ以内の増量に抑えられていた。ウエイトがパンチ力に直結する競技で、両者の条件はこれだけ違ってはまともな試合にはならない。

 もちろん、それでも勝負を引き受けたのであれば、王者として大毅は勝たなくてはならなかった。だが、ソリスの強烈な右アッパー、左フックを前にして大毅は有効打を放てない。調整不足の相手の腹を狙い、左ボディからフックとダブルで合わせたものの、攻撃が続かなかった。

 大毅が打ち合いを仕掛けようとすれば、ソリスは足を使って適度に距離をとる。それでも懐に入ってきたところを手数を出して、懐に入れさせない。試合運びの巧さは相手が一枚上手だった。

 ジャッジは112−114でソリス支持が2者、115−113で大毅支持が1者と全員が2ポイント差の僅差。どちらに転んでもおかしくはない内容だが、大毅は決め手を欠いた。ただ、IBFのベルトは手元に残る。試合前は大毅が敗れた場合、IBFのタイトルは失冠する取り決めが、試合後に一転、変更された。ますます、この一戦を敢えて行う意味はあったのか、試合の中身ともどもスッキリしない幕切れとなった。

<和毅、快勝にも笑顔なし>

 ジャッジが6〜10ポイント差をつける内容ながら、和毅の表情に喜びはなかった。
 相手は18戦無敗の長身ファイター。リーチは13.5センチも挑戦者が上回った。だが、和毅は持ち前のスピードでナミビア人を圧倒する。左右のボディで消耗させると、2Rには早くも左フックを当て、ぐらつかせた。

 ナイジャラは長い腕を伸ばして反撃を試みるも、王者はガードを固めて踏み込み、回転よく2発、3発と叩きこむ。時折、ナイジャラの拳が顔をかすめる場面もあったが、しっかりと見切り、主導権を渡さなかった。

 ただ、本人としてはこれだけ手数を出して、ヒットさせていればKOで決着をつけたかっただろう。次戦は23戦全勝の同級1位ランディ・カバジェロ(米国)との指名試合となる見込み。亀田家、最後の秘密兵器が真価を問われる一戦となる。

<高山、4年ぶりの国内試合で完勝>

 ひとりのジャッジはフルマークで高山を支持する完璧な初防衛だ。日本ボクシングコミッション(JBC)に引退届を出してまで、IBF王座獲得にこだわってきた30歳が、この3月につかんだベルトを守った。

 立ち上がりで完全にペースをつかんだ。1R、シルバノを右フックでよろめかせた。その後も手数、スピードともに挑戦者を凌駕し、左右のパンチを次々と当てていく。後半には足を止めて果敢に打ち合う場面もみられ、相手を寄せ付けなかった。

 05年にWBC世界ミニマム級、06年にはWBA同級の暫定タイトルを獲得したが、いずれも初防衛、王座統一に失敗。当時はJBCが認定していなかったIBF、WBOの王座奪取を目指し、09年からは海外に戦いの場を移した。

 しかし、2度のIBFタイトルへの挑戦も、戴冠は果たせず。この3月、3度目の正直でマリオ・ロドリゲス(メキシコ)を敵地で破り、悲願のベルトを腰に巻いた。

 王座獲得から2日後、JBCがIBFとWBOに加盟。この7月にJBCよりボクサーライセンスが再び交付され、4年ぶりに国内のリングに上がることが可能になった。日本人初の4団体制覇へ、今後はWBO挑戦も視野に入れる。