2013年のJリーグで活躍した選手や監督などを表彰するJリーグアウォーズが10日、横浜アリーナで開催され、最優秀選手、ベストイレブンを含めた各種表彰が行われた。最優秀選手賞(MVP)には横浜F・マリノスのMF中村俊輔が選出された。中村は史上初の2度目の選出となった。最優秀監督にはサンフレッチェ広島を連覇に導いた森保一監督が2年連続で受賞。ベストヤングプレーヤー賞(1992年4月2日以降に出生し、今季のJ1リーグ戦に17試合以上出場した選手を対象)にはMF南野拓実(C大阪)が輝いた。
(写真:プレゼンター・佐藤真海さんからトロフィーを受け取る中村)
 ベストイレブンには優勝した広島からGK西川周作、MF青山敏弘が昨年に続く選出。DF那須大亮(浦和)、DF森重真人(FC東京)、MF山口螢(C大阪)、MF柿谷曜一朗(C大阪)、FW大迫勇也(鹿島)、FW大久保嘉人(川崎F)、FW川又堅碁(新潟)の7名が初めて選出された。中澤佑二(横浜FM)は6度目の受賞。MVPの中村を含め、ベストイレブンに全て日本人が選出されたのは史上2度目となった。

 円熟のファンタジスタ、更なる進化へ

 中村は、選手として2度目の栄誉について、「(前回受賞した)13年前と基本的には変わりなく、素直にうれしい」と喜びを口にした。今季は自身最多の10ゴールを挙げ、キャプテンとしてもチームを牽引した。誰もが納得のMVPだった。しかし、中村は喜びのみならず、悔しさも感じていた。

 横浜FMはリーグ戦最後の2試合を落とし、広島に逆転優勝を許した。
「上から目線になるけど、優勝したかったし、させたかった。ひとつになって何かをつかむ経験はサッカー人生で何回かしかない。それをユース上がりの若い選手にさせたかったし、自分もしたかった。そういうことがいい財産になるし、それを味わわせたかった」

 そして、トップ下で輝きを放った自身についても「今季はゴールが増えても、アシストが少なかった。アシストが増えて、ゴールも15点ぐらいとるのが本当のトップ下」とパフォーマンス不足と分析した。いったい、中村はどこまで高みを目指しているのか。

「悔しい感じが自分の中にある限りは、年齢に関係なく、伸びる余地はあると思うし、(今回の受賞で)自分がもっと上に行けるイメージができた」

 円熟のファンタジスタは、36歳になる来季も進化を続けるつもりだ。

 森保サンフレッチェ、いざ3連覇へ

「名誉ある監督賞を頂き、うれしく思っている。この賞はいろんな方に支えられて取れた賞。選手が結果を出してくれ、自分を支えてくれた現場、フロントスタッフ、スポンサー、サポーターのみなさん、多くの方に支えられ、今日ここに立てている。また、いつも自分の一番近くで支えてくれている家族のみんな、ありがとう」
 森保監督はこう喜びを語り、周囲への感謝を述べた。
(写真:来季、森保監督は史上2クラブ目の3連覇に挑む)

 連覇までの道のりは、決して平坦ではなかった。序盤はケガ人が続出し、指揮官は「チーム状況は最悪だった」と振り返る。夏場には5戦連続で勝ち星に見放された。それでも、リーグ最少の27失点という堅守を武器に、優勝を狙える位置をキープし続けた。そして、最終節での逆転Vにつなげたのである。

「選手が気力を切らさず、戦ったことでこの結果につながった」
 森保監督は優勝の要因を語るともに改めて、選手たちを称えた。そして、「最後まで優勝を争った、死力を尽くして戦った他のチームの選手、スタッフがいることも忘れてはいけない。ライバルのこともしっかりと考え、敬意をはらわないといけない」と相手を大事にする指揮官らしい言葉を、会場全体に語りかけた。

「またこの舞台に立てるように、(来季も)チーム一丸となって戦っていきたい」とスピーチを締めくくった指揮官に率いられ、広島は来季、史上2クラブ目の3連覇に挑む。

 セレッソからまた新たな新星

 今季から新設されたベストゴール賞には、柿谷が第33節鹿島戦で挙げたゴールが選ばれた。柿谷は鹿島戦で右サイドからのクロスをトラップし、奪いに来たDFをリフティングでかわし、浮いたボールを右足のアウトサイドでゴール右に決めた。同賞はJ1リーグ戦全ゴールの中で、ファン・サポーターの投票をもとに選出された「月間ベストゴール」の中から5つの「最終ノミネートゴール」を決定し、最も評価の高かったゴールを表彰するもの。広島・佐藤、横浜FM・中村を抑えての受賞でもあった。
(写真:柿谷は初のフェアプレー個人賞)

 13年は柿谷にとって飛躍のシーズンとなった。序盤からゴールを量産し、自身最多の21ゴール。7月には日本代表に初招集され、東アジアカップ得点王など結果を残した。来年のブラジルW杯メンバーに入るには、来季も継続して結果を出す必要がある。
「(味方が)いいパスをどんどん出してくれるので、僕は最後に決めるだけ。チームメイトのみんな、来シーズンも頼みます!」
 柿谷はこう周囲にサポートをお願いし、自身も「たくさんゴールを決めたい」と更なる活躍を誓った。

 その柿谷に続けと言わんばかりに、ベストヤングプレーヤーに選ばれたのが南野だ。ルーキーイヤーながら、今季は29試合出場5ゴールの活躍を見せた。18歳は「毎日、充実していた」とプロキャリア1年目を振り返ったが、もちろん、満足はしていない。
「(レヴィー・クルピ)監督は毎日『攻撃陣は数字だ』と言っていた。そこで示さないと評価されないし、(柿谷)曜一朗くんはそこで評価されてA代表までいった。2年目は難しいと言われけど、その中でどこまでやれるか試されると思うし、気を引き締めて1日1日やっていきたい」

C大阪からは香川真司(マンU)、清武弘嗣(ニュルンベルク)、柿谷、山口、扇原と多くの代表選手が輩出されている。結果にこだわる南野が、彼らと同じように、ジャパンブルーのユニホームに袖を通す日は、そう遠くないだろう。

 来季はJ1にガンバ大阪、ヴィッセル神戸が復帰し、徳島ヴォルティスが初昇格する。一方、J2には大分トリニータ、ジュビロ磐田、湘南ベルマーレが降格し、カマタマーレ讃岐が参入する。また、来季からJ3が新たにスタートし、J2から降格するガイナーレ鳥取を含めた12チームが戦いを繰り広げる。22年目を迎えるJにはいったいどんなドラマが待ち受けているのか。今から、新シーズン開幕が待ちきれない。

<2013 Jリーグアウォーズ受賞者一覧>

○最優秀選手賞 
中村俊輔(横浜F・マリノス)

○ベストイレブン
GK 西川周作(サンフレッチェ広島)
DF 那須大亮(浦和レッズ)、森重真人(FC東京)、中澤佑二(横浜F・マリノス)
MF 中村俊輔(横浜F・マリノス)、山口螢(セレッソ大阪)、柿谷曜一朗(セレッソ大阪)、青山敏弘(サンフレッチェ広島)
FW 大迫勇也(鹿島アントラーズ)、大久保嘉人(川崎フロンターレ)、川又堅碁(アルビレックス新潟)

○得点王 
大久保嘉人(川崎フロンターレ) 26得点

○最優秀監督賞
森保一(サンフレッチェ広島)

○ベストヤングプレーヤー賞 
南野拓実(セレッソ大阪)

○最優秀ゴール賞
柿谷曜一朗(セレッソ大阪) ※J1第33節(11月30日) C大阪VS鹿島戦

○J2 Most Exciting Player
遠藤保仁(ガンバ大阪)

○最優秀主審賞
西村雄一

○最優秀副審賞
相樂亨 

○フェアプレー個人賞
柿谷曜一朗(セレッソ大阪)
佐藤寿人(サンフレッチェ広島)

○フェアプレー賞 高円宮杯
サンフレッチェ広島

○フェアプレー賞(J1)
ベガルタ仙台

○フェアプレー賞(J2)
ガンバ大阪
松本山雅FC
ヴィッセル神戸
ファジアーノ岡山

○功労選手賞
中山雅史
服部公太
土肥洋一

○Jリーグベストピッチ賞
キンチョウスタジアム
IAIスタジアム日本平
埼玉スタジアム2002
東北電力ビッグスワンスタジアム

○最優秀育成クラブ賞
セレッソ大阪