熱戦が続くサッカーロシアW杯の決勝トーナメント。3日目はついに日本が登場する。グループH2位の日本は、グループG1位のベルギーと対戦。FIFAランキング3位の強豪に挑む。先に行われるのはブラジルvs.メキシコ。グループリーグ(GL)で前回王者ドイツを破ったメキシコは、サッカー王国を相手にどんな戦いを見せるか。注目が集まる2試合は、ブラジルと日本の勝ち上がりを予想する。

 

ブラジル(E組1位)vs.メキシコ(F組2位)

 

 この一戦はブラジルに分があるだろう。

 

 ブラジルはグループEを2勝1分けの首位通過を果たした。それでも苦戦した印象があるのは初戦のスイス戦で引き分けたことと、2戦目のコスタリカ戦で後半アディショナルタイムまで得点が入らなかったからだ。だが、結局はコスタリカ戦の試合終了間際に2得点し、最終節のセルビア戦には危なげなく勝利している。

 

 いわば、決勝トーナメントにコンディションのピークを持ってこられていると証と言って良いだろう。特に最終節ではFWネイマール(パリ・サンジェルマン)、FWガブリエル・ジェズス(マンチェスター・シティ)らが遊びをまじえた個人技まで披露するほど尻上がりに調子を上げている。この状態のブラジルを90分無失点に抑えるのは困難なはずだ。

 

 何より今回のブラジルは守備が機能している。攻撃陣がなかなか調子が上がらなくとも勝ち上がってこれたのには3試合でたった1失点しかしていない守備の堅さにある。センターバックはミランダ(インテル)、チアゴ・シウバ(パリ・サンジェルマン)。2人に加え、アンカーのカゼミーロ(レアル・マドリード)とインサイドハーフのパウリーニョ(バルセロナ)らの体の強さと鋭い読みを活かした守備網を突破するのは容易ではない。そして意外にもネイマールやジェズスも前線からのチェイスは怠らない。

 

 グループFで前回王者のドイツをカウンターで撃破したメキシコでさえ、この守備網に穴を開けるのは難しい。力関係的にブラジルがボールを支配することが予想できる。本来メキシコもボールを保持して戦うスタイル。ブラジルを相手に我慢し続けられるとは考えにくいだろう。

 

ベルギー(G組1位)vs.日本(H組2位)

 

 下馬評を覆し、大躍進の日本。グループHを1勝1分け1敗の勝ち点4、2位で決勝トーナメント進出を果たした。グループリーグ最終節のポーランド戦ではスタメンを6人も入れ替え、敗れはしたがフェアプレーポイントで2位に滑り込んだ。

 

 日本対ベルギーの一戦は日本の勝利と予想する。しかし、戦力値的にははるかにベルギーの方が上である。そんな強豪国相手の対策を2つ述べたい。

 

 1つ目は、DFラインを高めに保ち続けることだ。ベルギーは1トップ2シャドーの3-4-2-1が基本布陣である。

 

 特に1トップを務めるロメル・ルカク(マンチェスター・ユナイテッド)は身長190cm、体重94kgと恵まれた体格を有したパワー、スピード、テクニックを兼ね備えた規格外の選手。ラインをズルズル下げてしまえば、ルカクが日本のゴールに近づいてしまう。彼をゴールから遠ざける意味でも強気なライン設定をしてほしい。

 

 また、高めにラインを保たなければならない理由はまだある。ズルズルと下がってしまうと全体が間延びして中盤にスペースができてしまう。そうすると2シャドーの左を担うテクニシャンのエデン・アザール(チェルシー)が牙を剥くのだ。足元のテクニックは世界屈指。彼にスペースを与えてしまうと手がつけられない。ドリブル、パス、シュートと好き放題やられてしまう。

 

 日本はDFとMFがうまく連係して、挟み込むようにしてアザールを止めるしかない。そのためにもラインを高く保ってほしい。

 

 勝つためには点を取らないといけない。日本はこれまで左サイドハーフの乾貴士(エイバル)のドリブルと左サイドバックの長友佑都(ガラタサライ)の運動量を活かして攻撃をしてきた。しかし、今回は日本の右サイドのMF原口元気(デュッセルドルフ)とDF酒井宏樹(マルセイユ)の活躍に期待したい。

 

 理由は対峙する相手の左サイドの組み合わせにある。先述したシャドーのアザール。彼とコンビを組む左ウィングバックのヤニック・カラスコ(大連一方)もかなり攻撃的な選手。本来はアタッカーのためウィングバックにしては、かなり攻撃に比重を割く傾向にある。ここの裏を原口と酒井宏樹には狙ってほしい。

 

 ベルギーは3バックが基本システム。ウィングバックの裏さえ取れれば、3バックがワイドに開いて対応するか、左のボランチが下がって対応するしかなくなる。こうなるとFW大迫勇也(ケルン)やトップ下の香川真司(ドルトムント)のマークにもズレが生じ、シュートチャンスがあるはずだ。

 

 もちろん、それでもFIFAランキング3位の相手。守備における多少の難は攻め切ってカバーしてしまうくらいの破壊力がある。それでも怯まずに戦い抜くメンタルの強さも勝負を分けるポイントになりそうだ。

 

(文/大木雄貴)