今季、11年ぶりに埼玉西武の監督に就任した伊原春樹。「鬼が帰ってきたと思ってくれていい」。就任早々、本人の口から出た言葉通り、日常生活からユニフォームの着こなし方まで、規律正しさを求める伊原を「鬼軍曹」と言う者は少なくない。その伊原が、6年ぶりの優勝へ向けて選手に求めるものとは――。二宮清純がインタビューした。
二宮: 西武は4年連続Aクラス入りをしているとはいえ、2008年以来、リーグ優勝、日本一を達成していません。チームの再建をはかるうえで、球団が白羽の矢を立てたのが伊原さんでした。
伊原: まぁ、私が立て直すというのは少しおこがましいですが、やはり西武ライオンズというのは創立した時から、「巨人に追い付け、追い越せ」でやってきた。要するに、リーグ優勝、日本一を義務付けられているわけです。それが、5年もリーグ優勝から遠ざかっているわけですからね。そういう意味では、やはり立て直しの時期に来ているのかなと思います。

二宮: 近年、パ・リーグは群雄割拠の時代で、6球団すべてに優勝のチャンスがある。それに、どこもいいピッチャーが揃っていますから、大味な野球では勝てません。そういう中で、伊原さんの細かい野球というものが、今の西武には求められているのかなと思うのですが……。
伊原: 今の西武にはいい選手が揃っています。特に足が使える選手が多い。昨秋、2週間ほど宮崎でキャンプをしたのですが、正直言って、巨人よりもスピードでは上回っていますよ。これは面白いなと思いましたね。

二宮: 足の部分で一番期待している選手は?
伊原: 今年2年目の金子侑司ですね。おそらく彼はチームで一番速い。福岡ソフトバンク、広島と練習試合をやったのですが、3試合で7つか8つ、盗塁を決めましたよ。塁に出れば、必ず走って、1度もアウトにならなかった。彼なんかが9番あたりにいたら、相手ピッチャーは相当嫌でしょう。

二宮: 昨年に続いて、キャプテンとしてチームを引っ張るのは栗山巧です。
伊原: 彼は02年、私が西武の監督を務めていた時に入団したのですが、当時はまだ(栗山は)二軍にいましたから、あまり接点がありませんでした。今回、監督に就任していろいろと話をするうちに、彼がいかに人間的に素晴らしいかがわかりました。「なるほど、キャプテンに選ばれるのは当然だな」と。それで私から「引き続き、栗山にキャプテンをしてもらおうと思っているけど、どうだ?」ということで、選手たちに提案したんです。そしたら満場一致で、栗山に決まりました。

二宮: 伊原さんはこれまで4球団でコーチ、監督を務めてきました。弱いチームも強いチームも経験しています。強いチームを作るために一番必要なものは何でしょう?
伊原: グラウンドの中での技術がどうのというだけではなく、それ以外のところもきちんとしているようでなければ、チームは強くなりません。例えば、ロッカーが整理整頓されているとかね。そういう細かいところまできちんとチームが揃っていなければ、いざグラウンドでいいプレーなんかできませんよ。巨人のいいところは、そういうところまで教育されているということです。まさに、それが伝統というものなんでしょうね。

二宮: 今季のチームスローガンは?
伊原: 「全力」です。僕はずっと「野球道に全力」を座右の銘にしているんです。とにかく全力で優勝を目指しますよ。

< 2014年1月22日発売の『小説宝石』2月号(光文社)ではさらに詳しい伊原監督のインタビュー記事が掲載されています。こちらも併せてご覧ください>