上田哲之「今を見つめる、夢を語る」

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 ドミニカのカープ・アカデミーは、ここへ来て、成功者が続出している。サビエル・バティスタがそうだし、アレハンドロ・メヒアも、いますぐ一軍にあげても活躍できるレベルだ。それから、今シーズン途中で支配下登録したヘロニモ・フランスアは、うまくやったら、化けると思う。150キロを楽にこえる左腕投手なんて、そういるものではない。

 

 彼は、まだ、チャンスを生かそうとして、登板のたびにかなり力む。余計なところに力が入るクセをなくして、びしびし腕さえ振れば、結果は自ずとついてくるはずだ。

 

 ところで、岩手にもカープ・アカデミーを設立してはどうだろう。いや、もちろん冗談として聞いていただけるとありがたいが、菊池雄星(埼玉西武)、大谷翔平(エンゼルス)と左右の豪腕投手を輩出したと思ったら、今度は、佐々木朗希(大船渡高)だ。2年生ながら、県大会の初戦、盛岡三戦に先発して、いきなり154キロを連発した。現在、189センチ、81キロ。繰り返すが、まだ2年生である。

 

 これだけ連続して逸材が出現するのだから、アカデミーをつくりたくもなるではないか。それはさておき、佐々木は来年のドラフト1位にしたいなあ。佐々木-中村奨成のバッテリーなんて、夢があるではないか。

 

 と、ここまで、ことさら明るく書いてみた。

 

 しかし、選手たちは沈痛である。

「野球で元気をとよく言うけれど、そういう時期じゃない」(「日刊スポーツ」7月11日付)とは、新井貴浩。

 言うまでもなく、西日本豪雨による広島の甚大な被害状況を踏まえての発言だ。

 

 マツダスタジアムでの7月9~11日の阪神3連戦の中止が発表されたときの、鈴木誠也の言葉。

「正直、試合をやってる場合じゃない。判断は正しいと思う」(同7月9日付)

 

 あるいは、會澤翼の選手会長としての弁。

「僕らは勇気や元気を与えられるように。それがプロ野球選手の使命」(同上)

 

 いずれも、きわめてまっとうで、まっすぐな言葉だ。

 

 オールスターブレイクをはさんで、後半戦は16日からである。

 かれらの、まっすぐな気持ちがひとつにまとまって、3連覇に突き進むことを念願してやまない。

 

 蛇足を少々。

 2軍の試合結果を見ていると、最近、中村奨成の出番が少なくありませんか? 先発で出てない日もけっこうある。(7月10日は捕手で先発して、3打数1安打だったが)。

 

 北海道日本ハムの清宮幸太郎、あるいは東京ヤクルトの村上宗隆――いずれも話題の高卒ドラフト1位野手などは、もっと2軍で打席をもらっている。

 捕手だから、他の野手より覚えることが多いのだろう。坂倉将吾もいるし。しかし、あれだけの才能は、特別に、もっともっと打席数を与えて育てるべきではないだろうか。

 

 中村は必ず育て上げるべき選手である。同じく育て上げたい選手として、投手なら先のフランスア、あるいは快速球の長井良太……。

 ちなみに、来年のドラフト1位(仮)の佐々木朗希は、ステップしても腰の位置を高く保つフォームに特徴がある。これで成功したカープOBといえば前田健太(ドジャース)である。大谷2世兼マエケン2世なんて、すてきです。

 

 今は、目の前の現実に心を寄せるべきだろう。しかし、同時に、夢を語るときでもある。

 

(このコーナーは二宮清純が第1週木曜、書籍編集者・上田哲之さんが第2週木曜、フリーライター西本恵さんが第3週木曜を担当します)

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