2015年、聖カタリナ女子高校(現聖カタリナ学園高校)バスケットボール部の軸丸ひかるは3年生になると、キャプテンに任命された。

 

愛媛新聞社

 

 

 

 

 迎えた夏のインターハイ。カタリナはシード校だったため2回戦からの出場となった。県立津幡高校(石川県)、前橋市立前橋高校(群馬)に競り勝ちベスト8に進出したが、この大会を制する岐阜女子高校に59対83で敗れた。

 

 立ち直ったきっかけは仲間の姿勢

 

 この大会で軸丸の心はポキリと折れてしまった。自分の力が通用しなかったことと昨年は3位まで勝ち進んだが、自分がキャプテンを務めた年ではベスト8止まり。この事実がひとりの高校生をどん底に突き落とした。当時の心境をこう吐露した。

 

「自分がチームを引っ張らないといけないのに本当に何もできなかった。自信も仲間からの信頼も全て失ったと思いました。(自分には)バスケしかなかった。それなのに、そのバスケがダメだった。人生が暗くなりました」

 

 背負っていたものが大きかっただけに、抜け殻になった期間は長かった。立ち直るために要した時間は覚えていないほどだ。漠然と時間だけが過ぎてゆく中で、何をきっかけに軸丸は立ち直ったのか。それは仲間の存在だった。

 

「もう、誰もついてきてくれないなと思ったんです。でも、後輩たちが普通に接してくれたことがすごく嬉しかった。同期やマネージャーも、“今のチームにはこのトレーニングが必要” “勝つためにはこれが必要だ”と話している。そういう姿を見ているうちに、“落ち込んでばかりもいられない”と思いました」

 

 カタリナバスケ部は自主性を重んじるチームだった。指導者から言われたことだけをこなすのではなく、選手が課題を見つけ、それを練習メニューに取り入れる。さらに自主練習の時間も大切にする方針だった。

 

 軸丸は徹底的に個人技に磨きをかけた。

「自分が個人技をもっと磨いて、点を取れるようにならないといけない。“絶対に止められない”と自信を持てるくらいうまくなろうと思ったんです。それに正直、オフェンス面は(細貝)野乃花(現早稲田大学バスケットボール部)に頼りっぱなしだったのもチームとしての課題だったんです」

 

 細貝は軸丸と同期の3ポイントシューターだ。軸丸は間近で細貝を見ていてシュート技術の高さよりもメンタルの強さに驚いたという。通常、消極的なプレーを選択してしまいかねない場面でも細貝は常に攻めの姿勢を崩さなかった。「野乃花は大舞台でも結果を残せるタイプの選手」と軸丸は語る。軸丸は度胸満点のシューターと出会い、メンタル面の重要性に気付いたのだ。

 

 たくましくなった姿に母は感心した

 

 自主練習では足技を中心にドリブルを練習したり、細貝と一緒にシュート練習も行った。この技を止められたら、次はこう仕掛ける、それでもダメなら、次はこのフェイントがある……。技の引き出しが増えると相手をかわすイメージがどんどん膨らんだ。相手の出方によって、こちらもフェイントを使い分けてさらに揺さぶる。ウインターカップに臨む頃には、「絶対に止められないだろう」と思えるくらい、個人技に磨きをかけた。

 

 ウインターカップの初戦もインターハイ同様シードだった。順調に勝ち上がったカタリナはベスト4までコマを進めた。立ちはだかったのはインターハイで敗れた岐阜女子高校だった。結果は76対79で惜しくも敗れた。相手はカタリナの得点源である、細貝を抑えにきた。

 

 シューティングガードの細貝が岐阜女子戦を振り返る。

「あの試合は私の調子さえよければ勝てていました。第3ピリオドまでで0点。いつもは第2ピリオド終了時点で10点以上は取っていたんです。その試合は軸丸がすごく頑張ってくれた。その姿を見て、“私も頑張らないと”と思ったのですが、何をしてもシュートが決まらなかった」

 

 軸丸はこの細貝のコメントに対して「今まではずっと、逆だったんです」と口にし、こう続けた。「チームの総得点の半分をひとりで決めてしまうくらいの選手です。私の方こそ、いつも野乃花のプレーを見て“自分も頑張らないと”と思っていました」

 

 3位決定戦では昭和学院高校(千葉県)に57対95で敗れ、4位で大会を終えた。

 

 母・綾子は1年前、娘のプレーを見て「なんでもっと積極的に行かんの!?」と思った。だが、3年生になった娘のプレーを見て感心した。「野乃花ちゃんや同学年の子たちとチームを引っ張っている姿を見たら“なかなかやるなぁ”と感じました。我が子であって、我が子ではないような感じがしました」

 

 スピード依存からの脱却

 

 青春時代を山吹色のユニフォームで駆け抜けた軸丸が次に選んだ進学先は白鴎大学だった。同大学は近年頭角を現し、関東女子学生バスケットボールリーグ1部を2度、制している。ここ6年はほとんどの大会で優勝争いに絡む関東屈指の強豪校だ。

 

 白鴎大学で軸丸は新たなチャレンジをしている。それは、スピード依存からの脱却である。これまで軸丸は技術とスピードを武器に戦ってきた。大学のバスケは戦術面も大きな鍵を握る。理詰めのバスケに苦しんでいた時に左膝の前十字靭帯断裂という大ケガをした。

 

 彼女にとって、このケガが一番の挫折だと思った。ところが、「高校のインターハイで負けて落ち込んでいた時の方がつらかった」という。大学バスケに苦しんでいる時期だったからこそ、「一度、外から見てみるのもアリかな」と思えた。良くも悪くも頭を整理する時間ができた。

 

 一心不乱にバスケに没頭してきた。立ち止まることもなかった。バスケから離れて分かったこともあった。

「今まではスピードでごまかしていた部分もあったのかな、と気がつきました。行き当たりばったりな判断も多かった。それではダメだと痛感しました」

 

 軸丸が戦線離脱している間に白鴎大学はインカレを初制覇する。彼女はチームメイトが表彰される姿を観客席から見つめていた。日本一になりたくてこの大学に入ったはずなのに、自分は貢献できなかった。この悔しさが、軸丸をさらに奮い立たせた。

 

 コートに復帰できたのは2年時の新人戦、約1年費やした。今では戦術面をより意識してゲームを組み立てている。「今は2手、3手先を読んでプレーしています。もっと頭を使ってバスケをすることを意識しています」

 

 復帰後1年近くは左膝にサポーターを巻いてプレーしていたが、最近ではそれも外しているという。そして、今年の春に日本女子学生選抜の一員に選ばれ、李相佰盃にも出場した。

 

 愛媛で生まれ育ったポイントカードは様々な経験を積み、いよいよ真の司令塔になろうとしている。持ち前の技術をベースにゲームを司ることができれば、軸丸は今以上にコートの中でひかり輝くはずである。

 

(おわり)

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軸丸ひかる(じくまる・ひかる)プロフィール>

1997年11月26日、愛媛県四国中央市生まれ。小学1年からミニバスケットボールを始める。川之江南ミニバスケットボールクラブ-四国中央市立川之江南中学-聖カタリナ女子高校(現聖カタリナ学園高校)。ポイントガード。オフェンス、ディフェンスともに総合力の高さが売りのプレーヤー。聖カタリナでは2年時からレギュラーの座を掴む。2014年度のインターハイとウィンターカップでチームを3位に導いた。高校時代には年代別の日本代表にも選出された。白鴎大学バスケットボール部入部後、レギュラーとして活躍。身長167センチ。

 

(文・写真/大木雄貴)

 

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