プロ17年目の今季、新天地でシーズンを迎える井端弘和。中日時代には荒木雅博との“アラ・イバ”コンビで一世を風靡し、ベストナイン5度、ゴールデングラブ賞7度に輝いた球界きってのショートストップだ。昨年のWBCでは2次ラウンドでMVPに選出されるなど、バッティング技術にも長けている。今回は井端の打撃論について二宮清純がインタビューした。
二宮: 坂本勇人選手とのポジション争いが注目されています。坂本は昨季、いい成績を残せませんでした。
井端: 坂本が打つ、打たないの違いは、足を上げるタイミングだと思います。打つ時は早めに足が上がっていて準備ができている。逆に打てない時は、足を上げるのが遅くなっているような気がしますね。これは守備でも言えることですが、早めの準備さえできていれば、慌てることはないと思いますし、いろいろと対応することができるはずです。坂本は足を上げて打つバッターなので、なおさら早めの準備が大事になってくる。守備でも早めにグラブを出しさえすれば、もっとエラーの数は減ると思います。

二宮: 井端さんは打席に立った時には、既に「右中間方向を狙う」というようなイメージを持っているのでしょうか?
井端: 「この打席では、こう打とう」ということは決めたうえで構えるようにしていますね。というのも、1打席目から引っ張ってヒットを打ってしまうと、僕の中では手詰まりになってしまうんです。相手を惑わす度に、たまに引っ張るくらいがいい。それをどのタイミングで出そうか、ということをいつも考えていますね。

二宮: 1打席目は、センターから右方向へのヒットゾーンの広いところを狙うと?
井端: そうですね。そこでまずヒットを打つ、あるいはアウトでもいい当たりを打っておくと、その後の攻め方が非常に楽になってくるんです。あとはいつどのタイミングで引っ張ろうかということになるわけです

二宮: 井端さんはこれまで1番から9番まで、あらゆる打順を経験してきています。ないのは、4番くらいでは?
井端: 確かに4番以外はすべて経験してきましたね。とはいっても、どんなバッティングもできるというわけではないので、2番の延長戦上として3番だろうが5番だろうが、自分のスタイルを変えることなくやっていました。例えば5番だった時は、多少は引っ張りが多かったかなというのはありますが、基本的には4番が出塁すれば、1番の次の2番という感じで打っていたんです。

二宮: 井端さんのような、どこでも打てる器用な選手がいたら、チームは楽でしょうね。
井端: 僕としてはシーズンを通して同じ打順の方がありがたいんですけどね(笑)。

二宮: 理想は2番?
井端: そうですね。ただ、打順よりも自分の前のバッターを固定させてほしいというのがありますね。

二宮: 例えば、中日時代のように「1番・荒木、2番・井端」と固定されるとやりやすいでしょうね。
井端: はい。もちろん、1番が荒木でなくても、例えば大島洋平でもいいんです。とにかく、ずっと同じ景色で野球をやりたいというのがありましたね。

二宮: 巨人では坂本や片岡治大らとのポジション争いが熾烈化しそうですね。
井端: そうですね。ただ、僕自身は控えに甘んじるつもりはまったくありません。スタートから行けるように、常に準備はしています。

<2014年2月22日発売の『小説宝石』3月号(光文社)ではさらに詳しい井端選手のインタビュー記事が掲載されています。こちらも併せてご覧ください>