上田哲之「岡田・薮田問題」

facebook icon twitter icon

 MVPは下水流昴ですかね。なにしろ、7月20日からの対巨人3連戦は、巨人が破竹の7連勝で広島に乗り込んできた。ここで3連敗でも食らおうものなら、ゲーム差はいっきょに縮まり、おしりに火の付く状態である。

 

 しかも初戦を落とせば、巨人の第2戦の先発は菅野智之。連敗の可能性は高まる。どうしても勝っておきたい初戦だった。ところが、延長10回表を終わって、8-9と巨人にリードを許していた。で、その裏にとびだしたのが、下水流の逆転サヨナラ2ランホームランでした。今季優勝したら(するでしょうけど)、直接の原因は、この一打にある。

 

 それにしても、3連覇となれば、日本野球の歴史に残る快挙である。緒方孝市監督は、もはや偉人の域ですね。

 

 ただ、カープが今抱えている問題はある。

 ひとつは、岡田明丈問題。

 

 7月26日の阪神戦に先発した岡田は、6-1とリードしていたにもかかわらず、わずか3回で降板した。緒方監督は、あえて、勝ち投手の権利を剥奪したわけだ。

 たしかに不安定な内容ではあった。3回には、四球が絡んで無死満塁のピンチを招いている。ただ、そこから力を入れ直して投球し、よく1失点でしのいだとも言える。ウィリン・ロサリオに対して、1死満塁フルカウントから、カットボールで三振を奪った(捕手・磯村嘉孝も勇気を持ってよく変化球のサインを出したし、岡田もよくコーナーに投げ込んだものだ)。

 

 もっとも、緒方監督からしてみれば、そんなことより、そこまでの内容があまりにふがいない、ということだろう。一種の「懲罰交代」と言ってもいいと思う。はたして、その采配は効を奏したか?

 

 岡田の次の登板は8月2日の東京ヤクルト戦だった。

 初回、いきなり1番から5番まで、すなわち坂口智隆から始まって、青木宣親、山田哲人、ウラディミール・バレンティン、雄平と5連打を浴びてしまう。しかもバレンティンは3ランで、計4失点。試合もこの失点が響いて大敗した。岡田は2回から立ち直って、その後は、5回まで無失点だった。

 

 結果的には、7月26日の緒方采配は、有効ではなかったと言わざるを得ない。むしろ、8月2日の立ち上がりの5連打を誘発した、という側面もあるかもしれない。

 

 もちろん、問題は岡田の方にあるのであって、球威はあるのに、自分をコントロールするのに苦労している感がある。ハマれば剛球がいくのに、8月2日の立ち上がりは、山田にも、バレンティンにも、カットボールがど真ん中にいって、痛打されている。

 

 ともあれ、緒方監督のショック療法は一度は失敗した。しかし、今年のカープの日本シリーズまでの道のりを考えると、岡田は欠かせない先発要員だ。なんとかして、今の不安定な状態を脱してもらわなければならない。

 

 緒方監督の、次の一手や如何に?

 

 もう一つは、薮田和樹問題。薮田は、8月2日に岡田のあとを継いで、6回、7回を投げたけれど、結局、7回2死から4失点してしまった。これも、日本シリーズまでの道のりを考えると、薮田が中継ぎで使えるか否かというのは、非常に大きなポイントだ。

 

 しかし、残念ながら、去年のいいときの状態には戻っていなかった。この日も、6回の立ち上がりの2~3球は、球威が戻っているように見えた。だから、兆しはあるのだと思うが、そのボールをバレンティンにヒットされて、一気に自信を失ったようにも見えた。

 

 2軍で調整し、ある程度、復活の兆しがあって1軍に戻ってきたのだろうと思う。だけど、その自信はまだちょっとしたことで揺らぐ状態だ。再度の2軍調整を経て、緒方監督は、どのような起用法で立て直していくのだろうか。

 

 いずれにせよ、悲願の日本一に向けて、どちらも大きなカギを握っている問題だとは、言えるだろう。

 

(このコーナーは二宮清純が第1週木曜、書籍編集者・上田哲之さんが第2週木曜、フリーライター西本恵さんが第3週木曜を担当します)

facebook icon twitter icon
Back to TOP TOP