(写真:約3時間に及ぶ熱戦の最後。歓喜に沸くアメリカと、立ち尽くす上野)

 第16回WBSC世界女子ソフトボール選手権大会最終日が千葉・ZOZOマリンスタジアムで行われ、決勝は世界ランキング2位の日本が同1位のアメリカに延長10回タイブレークの末、6対7でサヨナラ負けを喫した。アメリカは2大会連続11度目の優勝。優勝チームが獲得できる東京オリンピックの出場権を手にした。3位には世界ランキング3位のカナダが入り、表彰台の順はランキング通りとなった。

 

 上野、1日2試合完投もリード守れず(ZOZOマリン)
日本   6 = 0110010102

アメリカ 7 = 0030000103×(延長10回)
勝利投手 アボット(5勝0敗)
敗戦投手 上野(6勝1敗)
本塁打 (日)藤田4号ソロ、5号2ラン
    (ア)スポールディング2号3ラン

 

(写真:最多の11度目の世界女王に輝いたアメリカ。投打のバランスの良さが光った)

 リベンジマッチで返り討ちに遭い、2大会ぶりの金メダルには届かなかった。

 

 日本は延長タイブレークでの敗戦から一夜明けてリベンジの機会を得た。デーゲームの3位決定戦でカナダを下した。

 

 山崎早紀の先制タイムリー、ランニングホームランなどで3点を奪った。投げては、今大会無失点のエース上野由岐子がシャットアウト勝ち。アメリカの待つ決勝の舞台へコマを進めた。

 

 これで世界選手権のファイナルは7大会連続同一カード。2年後の東京オリンピックでも最大のライバルと目される相手だ。金メダル獲得のためには避けられない相手とも言える。

 

(写真:大車輪の活躍を見せた上野。決勝までの登板6試合で1点も獲られなかった)

 約3時間半後に行われた決勝のマウンドには、再び上野が上がった。アメリカは昨夜5回3分の2を無失点と好投したケイラニ・リケッツが先発で起用された。

 

 先制点はこの日も先攻の日本が奪った。2回の1死一、二塁のチャンスで我妻悠香がレフトにタイムリーヒット。上野の女房役がバットでエースを援護した。

 

 日本は3回にも加点。今大会絶好調の4番・山本優が山崎を一塁に置いて、リケッツの初球叩いた。ライトへのスリーベースヒット。主砲の一振りでリードを広げる。

 

(写真:スポールディングを迎え入れるアメリカのメンバー。雰囲気の良さも目立った)

 ゼロ行進を続けていた上野だが、連投の疲れからか、その裏につかまってしまう。2死一、二塁の場面でディレニー・スポールディングにライトへ弾き返される。打球はフェンスを越えて、3者が還った。

 

 今大会初失点が逆転の一打となった。炎天下の中、1人で投げ抜いたデーゲームの影響は少なからずあったはずだ。それでも上野の粘りのピッチングで追加点を許さなかった。

 

 エースの力投に応えたのは投手陣の2番手格、藤田倭だ。昨夜は先発して完投負け。打っては4タコだった。6番DPで起用された日本ソフトボール界の二刀流はライトへ同点弾を放った。「エースが投げていたので負け試合を避けたかった」と藤田。貴重な一発だった。

 

(写真:代打・内藤の打席で集まって作戦会議。ベンチも積極的に動いた)

 その後は両軍譲らず、2日連続の延長タイブレーク(無死二塁からスタート)に突入した。先攻の日本が代打攻勢を仕掛けた。前の打席ホームランの藤田に代打を送り、川畑瞳に手堅くバントさせた。続く河野美里に代えて、内藤美穂をピンチヒッターで起用した。

 

 右バッターの内藤はランナーを意識して逆方向へのゴロを打つ。捕球したセカンドはバックホーム。三塁ランナーの渥美万奈がタッチをかいくぐるようにして滑り込む。待望の勝ち越し点をゲットした。

 

 ところが、その裏に上野がタイムリーを浴びて追いつかれる。前回女王の意地か、アメリカも土俵際で粘りを見せた。8回からはモニカ・アボットを送り込み、総力戦の様相を呈す。

 

(写真:アボット<手前>に一発を見舞い、ベンチ前で抱き合う藤田と上野)

 再出場の藤田のバットが再び火を噴く。10回、先頭で回ってきた打席。ベンチからバントの指示はない。思い切り良く振り抜き、右中間へ放物線を描く。勝ち越しの2ランで、王座を手繰り寄せた。

 

 スタンドから上野コールで迎えられたエース。「皆さんに背中を押してもらった」と、あと3個のアウトを奪いにマウンドへ上がる。先頭打者をセカンドゴロに打ち取り、あと2アウト――。

 

 だが勝利の女神はまだ微笑んでくれない。1点を返され、ランナーをためられる。1死一、三塁でケイシー・クーパーを空振り三振に仕留めた。迎えるバッターは昨夜藤田に一発を見舞ったオーブリー・ムンロだ。

 

 上野はムンロに左中間を破られ、天を仰いだ。ラッキーだったのは、打球はバウンドしてフェンスを越えたことだ。エンタイトルツーベースとなり、ホームに還るのは1人のみ。サヨナラは免れた。

 

(写真:この日1人で投げ抜いた上野<左>を労う宇津木監督)

 首の皮一枚つながった日本と上野。しかし、最後はケルシー・スチュワートに三塁線を破られ、万事休した。カナダ戦に続いて1人で投げ抜いたものの、力尽きた。

 

 上野は7試合に登板し、大車輪の活躍だった。「6点獲ってくれたのに申し訳ない」と肩を落としたが、宇津木麗華監督も「今日の上野に文句はない」とエースを責めなかった。

 

(文・写真/杉浦泰介)