(写真:1年ぶりのカッキーライドは悔し涙となった)

 14日、東京・後楽園ホールで「カッキーライド2018」が開催された。UWFルールで行われたメインの垣原賢人vs.鈴木みのる戦は、鈴木が1分50秒で垣原を下した。垣原はリング上で「情けない姿を見せましたけど、勝つまで諦めません!」とリベンジを誓う。そしてこう続けた。「高山もトップロープをまたぐまで回復して、絶対諦めるな!」。療養中の高山善廣にエールを送った。1000人を超える観衆を集めた興行はメインを含む7試合が実施され、会場を大いに盛り上げた。

 

“藤原組長”こと藤原喜明とのスパーリングマッチからちょうど1年。一時は開催回避も過ったが、高山を含め周囲からの後押しもあって興行を打った。大会のテーマは「集え! Uインター魂」。高山もデビューしたUWFインターナショナルの世界観を打ち出し、31日に開催される高山を支援する興行「TAKAYAMA EMPIRE」に繋げたいと考えたのだ。

 

(写真:セコンドにつき父を見守った綾乃さん<中央>とつくしさん)

 

 今回、垣原が挑んだのは「一番苦手な相手」の鈴木だった。UWF新弟子時代は「毎日ボロ雑巾のようにされた」というほどしごかれた。今も第一線で戦う現役トップレスラー。入場曲『風になれ』が場内にかかると、黒いタオルを頭に被り、独特の雰囲気を放ってリングインした。

 

 垣原はUWFプロレスのメインテーマ曲に乗って入場。大会実行委員長のつくしさん、MCを務めた綾乃さんを従えて、カッキーファミリーで聖地・後楽園ホールの花道を歩いた。試合は持ち点3のロストポイント制のUFWルールで行われた。

 

 垣原は体格差もあり、スピードでの勝負を目論んでいた。得意の掌底、ハイキックを繰り出す。綾乃さんとともにセコンドのつくし実行委員長は「去年と比にならないぐらい動けるようになっていた。すごく攻めていたので、僕も“いける!”と思いました」と語った。

 

(写真:「力の差を感じた」という垣原の完敗だった)

 ところが、わずか1分50秒で試合終了のゴングが打ち鳴らされた。鈴木はタックルで垣原のバックを取ると、スリーパーホールドで絞め落としにかかる。セコンドのつくしさん、綾乃さんは声を上げて、エールを送る。垣原は最後までタップをしない意地を見せたものの、レフェリーが試合を止めた。

 

 勝者の鈴木はマイクを持って、「『克服しました。だから高山に力を与える』。その程度でか。その程度の力で何を与えるんだよ? それがオマエのすべてか」と斬り捨てた。

 

「プロレスにはこんな方法もあるんだよ」。そう言い放つと、マイクを叩き付けて、そのまま垣原を場外に落とした。場外乱闘を仕掛ける。「ずっと怖い印象があったのですが、椅子を持った瞬間は吹っ切れた」(つくしさん)と、セコンドの2人が椅子攻撃を受ける父を助けようとするが、“世界一性格の悪い男”と呼ばれる鈴木を止めることはできない。

 

(写真:主役を食わんばかりの存在感を示した鈴木みのる)

 リング上に連れ戻された垣原は怒りの掌底で反撃を試みるが、すぐに捕まった。鈴木はゴッチ式パイルドライバーを決めようとして、やめた。再びマイクを持った鈴木は「この続きはとっておいてやる。もっと鍛えて出直してこいや!」と吐き捨てた。

 

 花を持たせるような真似は一切せず、完膚なきまま叩きのめした。それは“オレのいるところまで這い上がってこい!”との先輩なりのエールにも思えた。2年前のカッキーエイドでは「コイツ(垣原)に、明日生きる力を与えるためだ」と試合に出場した男は、この日は大きな壁として立ちはだかった。

 

 完敗を喫した垣原はしばらく立ち上がれなかった。UWFの先輩・安生洋二氏からは「鈴木みのるっていうのはプロだねぇ。あんなにバッサリ、カッキーを斬って。オマエは幸せもんだよ」と声をかけられると、カッキー応援隊の山崎一夫氏はこう続けた。

「鈴木みのるの手厳しい試合。これは“来年に向けてしっかり鍛え直して鍛えてこい”とのメッセージということはカッキーが一番わかっていると思います。来年も是非、もう一度鍛え直して鈴木選手と戦ってください」

 

(写真:「NO FEAR!」の掛け声で盟友にエールを送った)

 1年前は藤原組長に完敗したものの、5年9カ月ぶりのリング復帰できた充実感を伺わせた。この日は悔しさで溢れており、「1年前に比べていい練習をできていたので、自分なりには自信がありましたが、現役バリバリでやっているトップ選手との力の差を感じました」と肩を落とした。

 

 それでも試合後に「これで終われない。リング上でも言いましたけど、鈴木みのるに勝つまでリングに上がるつもり。諦めません」と改めて口にした。高山への思いも語り、「苦しい状況でも、諦めないで必ず復活してもらいたい」とエール。今なおガンと闘うファイター垣原は自身のリベンジと、“帝王”の復活を諦めない。

 

(文・写真/杉浦泰介)

 

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