(写真:「透明性、公平性を求めていきたい」と語る鶴木会長)

 8日、一般社団法人日本ボクシング連盟のガバナンス欠如を問題視している「日本ボクシングを再興する会」が記者会見を東京・弁護士会館で開いた。同会は7月27日付で、日本連盟の不正を指摘する告発状を公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)などに提出。助成金の不正流用や国内大会における不正判定疑惑の表面化に至った。また一連の騒動を受け、日本連盟の山根明会長は同日、大阪府内で辞任を表明した。

 

 大阪での山根氏の辞任表明から約1時間半後、東京では告発者側の「日本ボクシングを再興する会」が会見を行った。弁護士会館には多くのメディアが詰め掛け、注目度の高さを窺わせた。

 

 今年4月に発足した「日本ボクシングを再興する会」。同会の会長を務めるのは新潟県ボクシング連盟の鶴木良夫理事長だ。「日本ボクシング連盟を適正化すべく活動を行ってきました。しかしながら日本連盟に全く改善の兆しが見られなかったため、JOCなどの関係機関に対して告発状を提出することに至りました。日本連盟は告発状を提出後も私たちが指摘した問題点のほとんどを否定してきた。そこで私たちは緊急の記者会見を開くことにしました」と、今日までの経緯を説明した。

 

 会見に同席した告発者の1人、宮崎県ボクシング連盟の菊池浩吉副会長によれば、会の発足当初は水面下で動いていたものの、「日本連盟に改善の提案を受け入れてもらえなかった」という。日本連盟に自浄能力の限界を感じ、「不本意ながら告発に至った」(菊池氏)のである。そして先月末、日本連盟に所属する都道府県連盟の役員、関係者ら300人が告発した。これにより助成金や国内大会の判定に対する日本連盟の不正疑惑が表面化。メディアに大きく取り上げられるようになった。

 

(写真:都内の会見場には多くのメディア関係者が集まった)

 告発に対しては日本連盟も公式サイトを通じて反論を述べた。だが、その中身に対しては信憑性のないものがあったという。告発代理人弁護士を務める戸田裕典氏は「関係者に十分に確認をしないまま、決めつけるようなところに組織としての問題点があるのではないかと感じています」と苦言を呈した。

 

 また今回の会見では不正判定疑惑の証拠となる音声データを公開。そして新たな疑惑として、使途不明金を挙げた。海外遠征や合宿をする際に支給される「チーム経費」は仮払いの精算が確認できたものとできていないものがあるというのだ。オリンピック選手団だった理事に支給される「オリンピック慰労金」については、戸田氏によれば「どのような根拠で定められているか確認ができていない。オリンピックで活躍した選手に対しての慰労金は全く確認できていない事態」と、不透明な金銭の流れを指摘した。

 

 山根氏の辞任表明により、事態は大きく動いたかに見える。しかし、その席で疑惑に対する説明は一切行われなかった。鶴木会長も「会長を辞任したのか、理事にとどまるのか。会員として影響力を発揮するのか。それが伝わってこない。辞任の明確な位置付けがはっきりしていない」と困惑した様子。菊池氏は「私どもが挙げた項目に対する説明は全くないまま、一方的に伝えて終わった。逃げたという印象がありました」と憤った。

 

「日本ボクシングを再興する会」は、今後も「改革一本に絞っている」(鶴木会長)と言い、山根氏の日本連盟除名と現理事の解任を求めていくつもりだ。2020年東京オリンピックでの実施競技から外される可能性もあるボクシング。改革へのゴングは打ち鳴らされた。クリーンな組織に生まれ変わるために、その手を休めてはいけない。

 

(文・写真/杉浦泰介)