連覇を狙う東北楽天のキーマンだ。
 絶対的エースの田中将大(ヤンキース)が抜け、今季の楽天はその穴埋めが急務となる。とはいえ、田中が稼いだ24勝分を投手だけでカバーするのは簡単ではない。昨季以上に打線の援護は不可欠だ。クリーンアップは銀次、アンドリュー・ジョーンズ(AJ)、ケビン・ユーキリスで固まっており、カギを握るのは彼らの後ろを打つ6番打者である。その最右翼が生え抜き9年目の枡田慎太郎だ。昨季は不振やケガで出遅れたものの、夏場以降は6番に定着し、打率.272、8本塁打、47打点をあげた。チームの主力となるべく、さらなる飛躍を誓う26歳に二宮清純が、その決意を訊いた。
(写真:「負けず嫌いだが、失敗しても引きずらない」と性格を自己分析する)
二宮: 昨季は球団にとっても、枡田さんにとっても初のリーグ優勝と日本一。やはり優勝の味は格別でしたか。
枡田: 本当にうれしくて、気持ちよかったです。ただ、率直な感想を言えば、チームの中心としてプレーした上で優勝したかったなとの思いもありました。

二宮: それでも、しびれるようなクライマックスシリーズや日本シリーズを勝ち抜いて日本一を経験できたことは自信になったでしょう?
枡田: 多くの選手にとって、ほとんど初めての経験でも勝てたことは大きいと思いました。自信と同時に、自覚も出てきたのではないでしょうか。今年もやってやろうという気持ちを、どの選手からも感じます。キャンプ中も、去年より居残り練習をよくしていましたから。

二宮: 高卒で同期入団した銀次選手は3番打者として終盤まで首位打者争いを演じました。彼の活躍には刺激を受けたのでは?
枡田: 彼は去年、一昨年と2年連続、1軍で1年間出て結果を残しました。今まではポジションも違ったし、ライバル意識はなかったのですが、今年は「負けたくない」という気持ちが出てきましたね。

二宮: その銀次選手から、AJ、ユーキリスと並ぶのが今季の楽天のクリーンアップ。AJ、ユーキリスともに選球眼が良く、出塁率が高いですから、後を打つ6番打者の役割が重要です。ランナーが溜まって打席が回ってくるケースが多くなることが予想されます。
枡田: 本音を言えば、僕もクリーンアップを打ちたいです。ただ、打順は僕が決めることではないので、もし6番を任せてもらえるなら、ぜひ、そこで打ちたい。打点を稼げるおいしい場面は好きなので、前の3人にはどんどん塁に出てもらいたいですね(笑)。

二宮: 今季から再び登録が外野手になりました。ただ、レフトのポジションは牧田明久や森山周もいて競争は激しい。まずは、これを勝ち抜かないとスタメンに定着できませんね。
枡田: 外野手といってもライトやセンターを守れる技術はないと感じています。だからレフトでしっかりレギュラーをとるしかありません。チームの中で僕は一番、長打が打てる外野手だと思っているので、そこで勝負するつもりです。

二宮: 枡田さんのバッティングは懐が深く、フォロースルーが大きい。誰かのバッティングを参考にしているのですか。
枡田: バッティングで参考にしている選手はいません。以前は他の選手をマネたりしていましたが、結局は自分のバッティングは自分でつかむしかない。だから、コーチの方のアドバイスを聞きながら、自分が打ちやすい方法を求めて取り組んでいます。
(写真:星野監督からは「思い切って振れ。当てに行くな」と常に言われている)

二宮: プロでいろいろなピッチャーと対戦した中で、一番すごいと感じたのは?
枡田: オリックスの金子(千尋)投手です。去年もよく対戦しましたけど、本当にいいピッチャーだと感じます。すべて同じリズム、同じ腕の振りで、いろんな変化球を投げてくる。特にチェンジアップは、投げた瞬間はストレートと全く見分けがつきません。ストレートだと思って振りにいくと、チェンジアップなので、緩急をつけられてバットに当たらないんです。打つのはなかなか大変ですが、今季は何とか攻略したいです。

二宮: 6番打者としてシーズン通じて活躍すれば、楽天の打線は切れ目がなくなります。レギュラー獲りへの課題は?
枡田: ひとつは好不調の波をなくすことですね。三振の数を減らす、というよりも四球の数を増やす。ボール球を極力、振らないようにしていけば、ピッチャーはカウントを取りに来るボールを投げざるを得ないので、自然と打率は上がり、ホームランも増えるはずです。まずは安定した成績を残して最低でも規定打席に到達したいと強く思っています。

二宮: 一昨年は左ヒザの靱帯を痛め、昨年は右手甲の骨折とケガにも泣きました。故障には気をつけないといけませんね。
枡田: 特に昨年は開幕から調子が上がらず、ファームで再調整をすることになった矢先に死球を受け、骨折してしまいました。これでは他の選手にポジションをとられてしまう。いい選手はケガが少ないですし、多少のケガであっても試合に出られる強さを身につけることも大事だと思っています。

二宮: この7月で27歳。選手としては、これから脂が乗る時期です。ヤンキースに移籍した田中投手は5年総額161億円の契約を結びました。枡田さんも、ここから稼がないと(笑)。
枡田: 田中はすごいですよね。うらやましいですけど、そんなにお金が入ってきたら、どうしていいかわからなくなりそうです(笑)。僕もプロでやっている以上、1億円は稼げるように頑張ります!

<現在発売中の小学館『ビッグコミックオリジナル』(4月5日号)に枡田選手のインタビュー記事が掲載されています。こちらもぜひご覧ください>