プロ野球開幕まで4日と迫った24日、「セ・リーグファンミーティング2014」が東京ビックサイトで行われた。このイベントは昨年に続く2度目の試みで、会の目玉となったのは全6球団の監督が一同に集まってのパネルディスカッション。トーク中、開幕投手の話題になると、巨人の原辰徳監督が菅野智之、阪神の和田豊監督が能見篤史をそれぞれ起用すると発表。1度は公表を拒否した中日・谷繁元信兼任監督もディスカッションの最後に「川上(憲伸)でいきます!」と宣言し、全球団の開幕投手が明らかになった。
(写真:勢ぞろいした6球団の監督と、ドラフト1位の新人たち)
 開幕投手が次々と発表されるサプライズに会場に詰めかけたファンは何度もどよめいた。
 ファンによる開幕投手予想を見ながらトークを展開するコーナー、既に公表されている東京ヤクルト・小川泰弘、横浜DeNA・三嶋一輝、広島・前田健太に関しては、各球団の監督が改めて開幕投手であることを明言した。すると、阪神・和田監督がファンの「能見」との予想に対し、「キャンプから伝えているのでエースに託します」と3年連続2ケタ勝利をあげている左腕で開幕することを認めた。

 続く巨人のファン予想は「内海哲也」。これを見た原監督は「う〜ん」と考え込み、「ファンの皆さんあってのプロ野球。敢えて、ここで発表します」と発言。「菅野智之」と2年目右腕の名前を口にすると、ファンからは大きな拍手が起こった。

 そんな中、唯一、中日・谷繁監督は「皆さんがこうやって発表されると、僕は言いたくない」と公表しない方針だった。しかし、ディスカッションが進み、最後の決意表明の場になって、「他の5球団の監督が開幕投手を発表して、ドラゴンズは“また隠すのか”と言われたくない」と翻意。「言います。川上で行きます!」と明かすと、会場内から一斉に驚きの声があがった。
(写真:オープン戦では自身を含めて結果を出せず、「まだ、ちょっと目が覚めていない」と現状を語る谷繁監督)

 当初、予想されていた左腕の大野雄大ではなく、昨オフには戦力外通告を受けたベテランに開幕を任せる理由を指揮官は「キャンプで見た時から、今年はやってやるという姿が感じられた」と説明。「昨年はBクラスになって全員で這い上がろうという思いが強い」と、復活にかける右腕のピッチングから逆襲をスタートさせたい考えだ。

 昨年、一昨年とセ・リーグは巨人が連覇した。今季も大竹寛、片岡治大、井端弘和らを補強した王者が、ペナントレースを引っ張ることが予想される。そこに待ったをかける意欲満々なのがDeNAの中畑清監督だ。「セ・リーグがもうひとつ盛り上がらないのはウチが巨人にあれだけ負け越して(昨季は5勝18敗1分)優勝させているから」と、今季は「巨人に五分の星を残す」ことをファンに約束。最初の対戦となる4月1日からの巨人3連戦では、阪神からFA移籍した久保康友、5年ぶりに日本復帰した(高橋)尚成、新外国人のギジェルモ・モスコーソを先発でぶつける予定だ。

 一方、包囲網を敷かれるかたちの巨人・原監督は「(開幕に向けて)不安はありません。むしろ、ひとりひとりの選手がいいコンディションで開幕を迎えられることのほうが不安」と故障やインフルエンザで離脱者がいる中、選手層の厚さを強みに余裕をみせる。そこに「ああいう発言したいよ」と噛みついたのが中畑監督。「オレは不安だらけ。アキレス腱がいっぱいだもん」と切り返し、原監督も苦笑いを浮かべていた。

 昨年、最下位に沈み、オープン戦の勝率が1割にも満たなかったヤクルト・小川監督は「とにかく勝たないと話にならない。必死になってセ・リーグを盛り上げられるように頑張る」と巻き返しを誓った。今季は、60本塁打のシーズン記録保持者ウラディミール・バレンティンを「初回、立ち上がりの悪いピッチャーにプレッシャーを与えたい」と3番に据える新オーダーを採用。「バレンティンの前後を打つバッターがポイントになる」と2番・雄平、5番の川端慎吾をキーマンに挙げた。

 ステージにはドラフト1位で入団したルーキーたちも登場。3球団による競合の末、広島入りした右腕の大瀬良大地は「オープン戦の最初は調子が良くなくてもどかしかったが、ストレートで押せた部分もあり、手応えはつかめた」とデビューへの準備は整った。野村謙二郎監督は「ドラフトで獲得した瞬間にローテーション入りは決まっていた。あとは結果を出してもらうだけ」と大きな期待を寄せた。

 また開幕1軍入りが確実な巨人のキャッチャー小林誠司は「持ち味は肩を含めた守備力。日本一に必ず貢献できるようにしっかりやっていきたい」とアピール。原監督は「肩の強さ、キャッチングのうまさは阿部(慎之助)と同格」と能力の高さを評価した。
(写真:「意地悪なずるがしこいキャッチャーである谷繁捕手を見習って」と小林に語りかける原監督)

 パネルディスカッションに先立っては、各球団のOB解説者が戦力分析と順位予想を披露。壇上でファンからひときわ熱い声援を受けた広島OBの前田智徳氏は、巨人1位、広島2位の予想に一転、広島ファンからブーイングを浴びる。前田氏は「巨人もケガ人が出ているので十分つけ入るスキはある」と釈明しつつ、昨季、久々のAクラスで意気上がるファンに「欲が強すぎますね。もっと控え目にお願いします」とタジタジの様子だった。
(写真:引退後、「よく話すようになった」との声に「しゃべらされているんです」と笑顔をみせる前田氏)

 23日でオープン戦が終了し、各チームは開幕に向けた最終調整に入る。開幕投手もすべて公表され、残り期間でどのように対策を立ててくるかも注目ポイントだ。3月28日、今年も144試合の長い戦いの火ぶたが切られる。