信濃グランセローズの船﨑星矢です。8月22日にBCリーグ史上4人目のサイクルヒットを達成しました。実はシニアリーグ時代に1回達成しているので、生涯2回目のサイクルヒットです。バッターとしてひとつの勲章ですから、やはり嬉しいですね。

 

 同級生とNPBで再会を

 サイクルヒットを達成した試合、4打席目にヒットを打ってベンチに戻ったとき、チームメイトに「あとスリーベースでサイクル」と言われて、そこで初めて意識しました。ホームラン、ツーベース、ヒットを打っていて、残ったのが一番厄介(笑)なスリーベース。そのせいもあって5打席目、最初はめちゃくちゃ力みましたよ。初球は空振り。しかもタイミングも合ってないし、フォームも変な感じのスイングで「こりゃあ、マズイぞ」と。

 

 それで一度、間をとって、なんとか冷静になれて、打球の飛んだ方向もよく外野の間を抜けてくれて三塁まで行けました。サイクル達成が嬉しいのはもちろんですが、2打席目のホームラン、3打席目のツーベースは乾真大投手(富山GRNサンダーバーズ)から打ちました。元NPBのサウスポーから打ったことも自信になっています。

 

 中学時代、U15日本代表に選ばれてアジア・チャレンジマッチ2012に出場したとき、チームメイトに小笠原慎之介(中日)や廣岡大志(東京ヤクルト)がいました。小笠原は「本当に中学生なのか?」という速いボールや変化球を投げ、廣岡も当時から逆方向に大きい当たりを飛ばしていました。彼らがNPBに行ったのも納得です。

 

 あと高校時代はセンバツ1回戦で県立岐阜商と対戦しました。そのとき向こうのエースが高橋純平(福岡ソフトバンク)でした。まっすぐは速いし、変化球もキレキレ。3打席3三振を食らったのを今も覚えています。NPBで彼らと再会、そして対戦してみたいですね。

 

 信濃は僕が小学校3年生のときに結成されて、地元だったので小学生時代はボールボーイをやったことがあります。高3で進路を考えたとき、大学は経済的に無理なので、社会人かな、と。でも社会人もそうそう採ってくれる会社もなくて、そのとき高校の監督に「BCリーグはどうだ?」と勧められました。

 

 それでドラフト指名されて信濃に入団しましたが、最初は木製バットに戸惑いました。2月の自主練から開幕直前まで、とにかく木のバットに慣れるために練習の日々でした。芯で捉えないと飛ばないし、詰まると押し込む方の手に負担がかかるから、左腕はいつもパンパンに張ってましたよ。

 

 「呼び込んで打つ!」

 ボールを前でさばくようにして木製バットに慣れたのですが、実戦に入るとプロのピッチャーのボールに戸惑い、特にサウスポーに手こずりました。最初は「慣れればやれる」との手応えは感じていて、そのとおりストレートには対応できたんですが、変化球にはからっきし。木製バット対策で「前で、前で」と意識しすぎた結果、体の開きが早くなって、変化球にはクルクルとバットが回っていました。1年目に74三振を喫しましたが、これはそのシーズンのリーグワーストタイですよ。

 

 1年目をそんな感じで終え、2年目も終わった今オフ、打撃改造に取り組みました。先輩のアドバイスや自分で動画を見て研究して、ボールをできるだけ引きつけ、呼び込んで体の近くで打つことを意識しました。最初は詰まっていましたが、オフの間に徹底して打ち込んだことで、ようやく自分のものにできたと思っています。今季は変化球も打てるようになり、打率も残せていますからね。

 

 打撃改造のおかげで調子のいいときには「打てない球はない」というくらいの気持ちで、打席でも余裕が出ました。ただ6月終わりから7月の最初にかけてスランプに陥りました。「どうして打てないんだろう」と悩みましたが、フォームを改めてチェックしたら悪いくせが全部出てましたね。軸足に全然体重が乗ってない、体の開きが早いなど。そのときも先輩やコーチのアドバイスで、自分の形を取り戻すことができました。

 

 入団3年目で打率3割超えを果たしましたが、目標であるNPB入りにはまだまだ精進が必要です。自身のアピールポイントとしてはパンチ力だと思っています。短くバットを持っていますが、それでもホームランは今季10本。その長所を伸ばしながら、もっともっと全体的にレベルアップしたいと思っています。

 

 本西厚博監督などからは「プロのスカウトは全部見ているぞ」と言われています。バッティングだけでなく走塁も見ているし、試合だけでなく試合前のシートノックからチェックしている、と。あとは成功・失敗に関わらず、盗塁を仕掛ける積極性があるかどうか、そのあたりも「見られているんだぞ」と言われています。

 

 BCに入って元NPBの指導者の方に教えられたり、これまでできなかった経験をしています。地元長野でずっと野球をやってきて、今、信濃でもさらに成長中です。長野県の野球少年に夢を与えられるように、そして自分自身の夢を叶えるためにこれからもっともっと成長していきたいですね。応援よろしくお願いします。

 

<船﨑星矢(ふなざき・せいや)プロフィール>信濃グランセローズ
1997年4月20日、長野県出身。小学2年から野球を始め、ショート&ピッチャーとして活躍する。中学進学後は中野リトルシニアに入団、中2で外野手に転向。中3時にU15日本代表に選ばれ、15Uアジア・チャレンジマッチ2012に出場し、優勝を果たす。高校は地元の古豪・松商学園に進学。甲子園は高3時、センバツに出場した。16年、BCリーグドラフトを経て信濃グランセローズに入団。走攻守揃った俊足外野手としてレギュラーに定着。今季成績は打率3割1厘、46打点、10本塁打(9月10日時点)。右投左打。身長175センチ、体重78キロ。目標とする選手は青木宣親(東京ヤクルト)。


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