6日、明治安田生命J3リーグ(J3)の第5節がニッパツ三ツ沢球技場で行われ、Y.S.C.C.横浜とJリーグ・U-22選抜(J-22選抜)が対戦した。序盤はJ-22選抜がボールを支配し、優勢に進める。37分にFW加賀美翔(清水)がゴールを決め、先制に成功。雷雨により合計1時間の中断もあったが、終了間際にはFW金子翔太(清水)に得点が生まれ、2対0で勝利した。J-22選抜は5試合目にして、初の連勝と完封勝ちを収めた。

 加賀美、1得点1アシストの活躍(ニッパツ)
Y.S.C.C.横浜 0−2 JリーグU-22選抜
【得点】
[J-22選抜] 加賀美翔(37分)、金子翔太(90分)
 J-22選抜は、高畠勉監督が「初めての経験」と語る2度の中断を余儀なくされたタフなゲームをモノにした。

 リオデジャネイロ五輪世代の若手育成のために設けられたJ-22選抜。21歳以下を選考の対象としており、この日のスターティングメンバーの平均年齢は19歳だった。ベンチ入り選手を含めると19歳を切るというフレッシュな顔ぶれ。それでも高畠監督が「前節出場した選手を中心に選んでいる」と、スタメンの11人中9人は既にJ3デビューを果たしていた。

 序盤はボールを支配し、試合を優勢に運んだ。24分には高い位置でボールを奪いカウンター。右サイドを抜け出したMF井出遥也(千葉)がグラウンダーのパスをペナルティエリア(PA)内に送る。中で待っていた金子がシュートを狙うが、これはミートせずDFにクリアされてしまう。最初に訪れた決定機を生かせない。

 するとホームの声援を受け、J3初勝利を目指すYSCCの反撃に遭う。28分には縦パスに抜け出したFW梅内和磨がPA内に侵入し、右足のアウトにかけたシュートを放つ。GK山田元気(京都)が左に弾いたボールをMF三田尚央が詰めたが、これも山田が身を挺してセービング。山田がビックセーブ連発し、相手にゴールを割らせなかった。

 劣勢の時間を耐えたJ-22選抜は、37分に先制点を奪った。高い位置でボールを奪った後、加賀美が中央やや右からドリブルで相手を引き付けて、左のMF石田雅俊(京都)にパスを送る。フリーでボールを受けた石田は右足でファーサイドのゴールを狙ったが、ここはGKに弾かれる。そのこぼれ球の詰めたのは、加賀美。冷静にゴールに流し込んだ。「自分らしさが出た」と、自らの仕掛けから生まれた得点を喜んだ。

 1対0のリードで前半を終えると、J-22選抜はここまで好セーブを見せていた山田を下げて、小泉勇人(鹿島)を投入。山田は「正直、(フルで)出たかった」と本音を口にしたが、チームには「16人全員使う」というコンセプトがある。高畠監督は「特にGKは途中で交代するのが難しいポジションなので、ハーフタイムでスパンと代えた」と、その理由を語った。

 後半はYSCCが攻勢を仕掛ける。12分には三田がこぼれ球を詰めるが、GKにキャッチされる。16分には左サイドからのクロスにキャプテンのFW吉田明生が頭で合わせるも、ゴール右に外れてしまった。いずれも得点にはならなかったが、YSCCに試合の流れは傾きかけていた。

 しかし25分、試合開始直前から降り出した雨が雷雨となり試合がストップする。50分の中断を経て、試合を再開したが、5分後には再びアクシデントが発生する。長い中断により、身体が冷えたせいか主審が負傷交代した。さらに33分には再び稲光が空を走ったため中断。選手たちは12分間、プレーを遮られた。

 何度も集中を切られる難しい展開の中、時計の針は淡々と進んでいった。そしてJ-22選抜が終了間際に追加点を奪う。45分、縦パスに抜け出した加賀美がGKと1対1になった。シュートはGKに防がれたが、こぼれ球を拾うと、後ろからフォローにきていた金子へパス。金子は右足で豪快に叩き込んだ。「アピールになるのは結果。それをものすごく意識している」という金子の2試合連続ゴールでリードを広げた。

 試合はそのまま2対0でタイムアップ。J-22選抜が初の連勝を完封勝ちで手にした。高畠監督は「(難しい試合展開で)集中してゼロに抑え、追加点を奪って勝利で終えれたことは、いい経験値になった」と評価した。

 中盤の底でゲームを作り、守備でも精力的な動きを見せたMF喜田拓也(横浜FM)はYSCCのスクール出身。「“おかえり”と声をかけてくれて気持ちも高まった」と話した。だが、3試合目のJ3出場に関しては「ここに来ることは本意ではない」と語った。J-22選抜に入ることは、つまり所属クラブでベンチ外を意味するからだ。

 所属クラブで招集メンバーに選ばれていない選手の選抜。いわば矛盾の代表チームではあるが、選手たちの言葉からも「いい経験」と、チャンスに感謝する一方で、選ばれていない悔しさものぞかせていた。その想いを発奮材料にレベルアップすることが、このチームの理想的なかたちなのだろう。「J3の経験が生きた」と所属クラブでの活躍、そしてリオ五輪へと羽ばたく選手が、ここから何人生まれるか。22年目を迎えたJリーグのチャレンジは、まだはじまったばかりである。