第164回 多くのベテラン引退の報せに秋を感じる

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 残暑の頃を過ぎて秋風を感じるようになると、プロ野球界では「引退」の二文字を目にするようになります。今シーズンも広島の新井貴浩、巨人の杉内俊哉、そしてBCリーグからNPB復帰を目指していた村田修一など、多くのベテランがユニホームを脱ぐことになりました。ベテランアスリートが引退するのは時の流れでもあり、仕方ないことなのですが、やはり何度聞いても寂しいものですね。

 

 BCに来てくれた村田に感謝

 新井は広島からFAで阪神、そして再び広島へという道を歩みました。チームを変えたとまでは言いませんが、ベテランながらがむしゃらな姿勢が若い選手にも受け入れられて、非常にいい雰囲気を作っていましたね。個人的にはしっかりと先輩を立てて、OBだけでなく取材する人全員に真摯な姿勢で向き合う好人物という印象を持っています。

 

 村田はBCリーグに関わるひとりとして、栃木ゴールデンブレーブスに入団してくれてありがとう、という気持ちです。対戦したBCの他球団の選手たち、間近で村田の野球観に接した栃木の選手たちに有形無形の財産を残したことでしょう。村田は引退に際して「これからはパパ活です」とお子さんを含めた家族との時間を大切にすると言っていましたが、このままBCリーグとの縁が切れてしまうのはもったいないな、と。どんな形でもいいのでBCリーグに関わってくれないものか、というのが私の願いです。

 

 さて、辞める選手がいる一方で、ベテランながら奮闘しているのが中日の松坂大輔です。以前から私は「松坂の何をもって復活とするのか」と言っていますが、ローテーションをシーズンを通して守ったことはその第一歩でしょう。松坂自身、今季はまだ復活途上という思いでいるはずです。

 

 彼がすごいのは、変わることを恐れないことです。全盛期と比べてピッチングスタイルを大きく変えていますが、たぶんリハビリで苦しんでいたときから、「どうやったらまた勝てるようになるのか?」と、いろいろと考えていたんでしょう。そうした苦しいリハビリ期間を無駄にしていないのもすごいし、新しいスタイルで勝っているのも驚きです。どこまで現役で投げ続けるのか、来季以降も楽しみですね。

 

「それ、3位争いと言えません(笑)」

 ペナントレースも大詰めになりセ・リーグは「3位争い」が激しくなっていますが、それを争う4球団、巨人、阪神、横浜DeNA、中日が勝率5割を割り込んでいることもあり、その言葉には非常に違和感を覚えます。3位争いではなく、Bクラス争いですよ(笑)。まあ最低でも5割以上じゃないと3位、Aクラスというのは格好がつかないですよね。

 

 今季、私はDeNAをイチオシしていたのですが今永昇太の不調などもあり、上にいけそうでいけない状態。巨人にしても踏ん張りどころで踏ん張り切れずに3位がやっとという感じですからね。いつまでも広島一強時代ではなく、各球団の奮起に期待したいところです。

 

 パ・リーグは埼玉西武についにマジックが点灯しました。福岡ソフトバンクとの天王山で3連勝を飾るなど、土壇場での強さが際立っています。西武の強さは強力打線もそうですが、守備も安定しているのが大きい。リリーバーの不在が不安要素と言われていますが、それでも投手陣は強力打線をバックにして思い切り投げられている印象があります。クライマックスシリーズも好調な打撃陣と勢いで西武が突破する可能性は高いですね。

 

 最後にレギュラーシーズンを終えたBCリーグに触れておきましょう。私が取締役を務める石川ミリオンスターズは前期3位、後期4位と優勝を果たせませんでした。でも武田勝新監督の下、試行錯誤をしながらもよく頑張ったと思います。選手の半分が入れ替わったこともあってチームとしては未完成のままでしたが、選手個々には可能性と能力を感じました。来季以降の石川の戦いに注目してください。

 

 NPBドラフトでは1人でも多くの選手が石川、そしてBCリーグから指名されることを祈っています。去年、石川からは3選手が支配下指名を受けました。今年の石川はそこまで粒ぞろいではありませんが、宮澤和希(右投右打・身長182センチ・体重92キロ)という外野手に注目しておいてください。昨季は打率3割8分4厘、今季も3割4分という高打率を残した強打者で、足も速い(今季11盗塁)。去年もドラフト候補だったのですが、今年こそ指名されてほしいですね。

 

image佐野 慈紀(さの・しげき)
1968年4月30日、愛媛県出身。松山商高で甲子園に出場し準優勝を果たす。卒業後に近大呉工学部を経て90年、ドラフト3位で近鉄に入団。その後、中日、エルマイラ・パイオニアーズ(米独立)、ロサンジェルス・ドジャース、メキシコシティ(メキシカンリーグ)、再びエルマイラ・パイオニアーズ、そしてオリックス・ブルーウェーブで日本球界復帰と、現役13年間で6球団を渡り歩いた。主にセットアッパーとして活躍、通算353試合に登板、41勝31敗21S、防御率3.80。現在は野球解説者。

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