クライマックスシリーズが終わり、いよいよ今週末、27日から日本シリーズが始まります。セ・リーグはリーグ優勝を果たした広島が巨人を下して2年ぶりにシリーズ出場を果たしました。パ・リーグは2位・福岡ソフトバンクが埼玉西武を4勝2敗で破り、2年連続で日本シリーズを戦います。日本シリーズ展望の前に、まずはパ・リーグのクライマックスシリーズを振り返りましょう。

 

 「普段どおり」の誤算

 CSファイナルステージ、勝ったソフトバンクと敗れた西武、両チームの違いはどこにあったのか。それは「変化を恐れなかったソフトバンク」と「変化を恐れた西武」、ここに差がありました。

 

 ソフトバンクはCSで調子の上がらなかった松田宣浩を外したり、また先発投手の左右によってスタメンの組み替えも行いました。一方の西武は、ずっとひとつの形で戦っていた。確かに西武のレギュラーはいい選手が揃っています。でも、短期決戦では選手の調子を見極めた臨機応変な起用が求められます。選手層の厚さの違いもありますが、ソフトバンクと西武では「短期決戦ならではの思い切り」に差があり、それが勝敗を分けましたね。

 

 西武はレギュラーシーズン終了後、ファイナルステージまで実戦から遠ざかったというハンディもありました。圧倒的な打力でシーズンを制しましたが、シーズン中盤にチーム全体の勢いが落ちたことがあった。ファイナルステージでは、そのときと同じような周期にハマっていた印象です。辻発彦監督は「普段どおりの野球をやる」と言っていましたが、長いシーズンなら悪いときも「普段どおり」でもいいのですが、やはり短期決戦では……。良いときの「普段どおり」ができませんでしたね。

 

 大瀬良で圧倒できるか

 日本シリーズで広島とソフトバンクは初対戦です。どちらも選手を育成して強くなったチームで、ファンの思い入れもあり、かなり盛り上がる好カードと言えるでしょう。

 

 投手陣を見れば広島は試合の中盤から終盤を任せるピッチャーに不安があります。CSでソフトバンクに敗れた西武もブルペン陣に不安がありましたが、広島は選手の成熟度が違います。広島の選手は「なにをすべきなのか」が分かっているので、総合力では広島とソフトバンクは五分と見ます。

 

 ただ、広島が日本一になるには初戦をどう勝つかがポイントになります。第1戦、広島の先発は大瀬良大地と予想されます。今季15勝をあげ最多勝(菅野智之とタイ)に輝いたエースを立てて試合を落とすようなことがあったら、そこでシリーズの流れは一気にソフトバンクに傾きます。広島に求められるのは、相手が「広島、手強いな」と感じるような勝ち方。初戦で強さを見せつけられれば、ソフトバンクに焦りが出ます。ソフトバンクの投手陣は「攻め」の姿勢が持ち味。初戦で広島に「恐怖」を感じたら、一転して守りに入ってしまう可能性がある。そこに広島の勝機があるでしょう。

 

 打線を比べるとソフトバンクは長谷川勇也や中村晃といったつなぎ役のいやらしいタイプがいるのが大きい。打線がどこからでもつながるのは彼らの働きによります。一方の広島は、下位打線から上位へどうつなげるかがポイントです。ファイナルステージ第2戦、8回裏の攻撃がその象徴です。

 

 フォアボールと盗塁でつくった同点のチャンスを代打・新井貴浩がいかし、そして上位にかえってから菊池涼介の勝ち越しホームランが飛び出しました。あのときのように下位から打線がつながれば、大舞台でも広島得意の大量得点が奪えるでしょう。

 

 勝敗予想ですか? うーん、今年は難しい。ソフトバンクがやや優位と見ていますが、ソフトバンク日本一なら4勝3敗。広島が日本一なら4勝2敗としておきます。いずれにしてもお互いががっぷり四つで戦う初戦に注目です。

 

 

image佐野 慈紀(さの・しげき)
1968年4月30日、愛媛県出身。松山商高で甲子園に出場し準優勝を果たす。卒業後に近大呉工学部を経て90年、ドラフト3位で近鉄に入団。その後、中日、エルマイラ・パイオニアーズ(米独立)、ロサンジェルス・ドジャース、メキシコシティ(メキシカンリーグ)、再びエルマイラ・パイオニアーズ、そしてオリックス・ブルーウェーブで日本球界復帰と、現役13年間で6球団を渡り歩いた。主にセットアッパーとして活躍、通算353試合に登板、41勝31敗21S、防御率3.80。現在は野球解説者。


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