12日、第90回競泳日本選手権3日目が東京辰巳国際水泳場で行われ、萩野公介(東洋大)が男子200メートル個人メドレーを1分55秒38、男子400メートル自由形を3分43秒90で、いずれも日本新記録をマークして優勝した。萩野はこれで今大会4冠目。明日の200メートル背泳ぎで、昨年に続く5種目制覇に挑戦する。女子では、昨日100メートル平泳ぎを初優勝した渡部香生子(JSS立石)が200メートル個人メドレーも制し、2冠を達成した。50メートル背泳ぎでは、竹村幸(イトマン)が前日の100メートルと合わせて背泳ぎ2冠を達成した。100メートルは内田美希、800メートルは地田麻未と女子自由形の2種目は、東洋大コンビが制した。
(写真:この日もタイトなスケジュールの中、2種目制した萩野)
 圧巻の2レース、2年連続の5冠へ

 やはりこの男、ただものではなかった。前日の100メートル背泳ぎで入江陵介(イトマン東進)に敗れ、史上初の6種目制覇の夢は崩れ去った。だが1日明けて、400メートル自由形、200メートル個人メドレーのタイトルを両獲り、それも日本記録更新のおまけつきだった。

 萩野は2種目ともに予選2位のタイムで決勝へ進出した。まずは400メートルの自由形。昨夏の世界選手権(スペイン・バルセロナ)では銀メダルを獲得した種目だ。自身の持つ日本記録もこの大舞台で出した。それでもバルセロナでのタイムを「前半が遅かった」と反省している。だからこそ序盤から飛ばした。隣のレーンを泳ぐ江原騎士(山梨学院大)が萩野の記録を上回るペースで50、100メートルとラップを刻む中、萩野も2番手でついていく。

 150メートル時点で、江原を抜き去ると、あとは一人旅。2位以下をグングン突き放す。200メートル以降、50メートルずつのラップタイムは安定しており、落ちるどころかペースは徐々に上がっていた。最後まで独泳状態。ぶっちぎりの優勝で3分43秒90のタイムを叩き出し、自らの記録を0秒92更新した。それでも「出し切った感じではない。もうちょっとタイムは出る」と言ってのける余裕を見せた。

 約45分後に臨んだ200メートル個人メドレーは、ライバル・瀬戸大也(JSS毛呂山)との今大会第2ラウンドとなった。まずは瀬戸が得意のバタフライ。初日の400メートル個人メドレーでも圧倒したが、この日も相手の土俵とも言える種目でリードを奪った。

 続く背泳ぎは自らが得意とする種目である。ここで瀬戸をはじめとした他の選手からひとり抜け出す。平泳ぎは「ウーンという感じだった」と首をひねる出来で、瀬戸に差をわずかだが詰められた。ただ自由形で再び一気に突き放した。1分55秒38は、400メートル自由形に続く日本新記録。今大会4種目目の自己ベストをマークした。

 それでも萩野は記録に満足していない。東洋大の平井伯昌コーチと1分54秒台を目標としていたからだ。「54秒台を出さないと(ライアン・)ロクテ(米国)選手と勝負にならない」。萩野の照準は世界のトップに合わせているのだ。

 残すところ、あと1種目。最終日に200メートル背泳ぎが控える。「去年は最終日でコケてしまった。今年は気をゆるめず、しっかりレースを楽しんで入江さんと勝負したい」と萩野。史上初の5冠を達成した去年の大会で、ただひとつ土をつけられた相手が入江だった。今大会でも1度敗れている。「背泳ぎでも活躍したい」という萩野がトップを目指す以上は避けては通れない相手だろう。2年連続の5冠へ、怪物は雪辱を果たせるか――。

 3日目の結果は次の通り。

<男子50メートル背泳ぎ・決勝>
1位 古賀淳也(第一三共) 24秒68
2位 入江陵介(イトマン東進) 24秒86
3位 川本武史(中京大) 25秒50

<男子200メートルバタフライ・決勝>
1位 瀬戸大也(JSS毛呂山) 1分54秒84
2位 平井健太(セントラルスポーツ) 1分55秒27
3位 坂井聖人(早稲田大) 1分56秒26
(写真:瀬戸は狙っていたバタフライで初優勝)

<男子200メートル個人メドレー・決勝>
1位 萩野公介(東洋大) 1分55秒38 ※日本新
2位 藤森太将(ミキハウス) 1分57秒77
3位 瀬戸大也(JSS毛呂山) 1分57秒92

<男子400メートル自由形・決勝>
1位 萩野公介(東洋大) 3分43秒90 ※日本新
2位 山本耕平(ミズノ) 3分49秒48
3位 瀧口陽平(中央大) 3分51秒01

<女子50メートル背泳ぎ・決勝>
1位 竹村幸(イトマン) 28秒32
2位 稲田法子(セントラルスポーツ) 28秒42
3位 諸貫瑛美(筑波大) 28秒57

<女子100メートル自由形・決勝>
1位 内田美希(東洋大) 54秒78
2位 松本弥生(ミキハウス) 55秒23
3位 山口美咲(イトマン) 56秒61
(写真:自由形の第一人者・上田春佳の後継者として期待される内田<中央>)

<女子200メートルバタフライ・決勝>
1位 星奈津美(ミズノ) 2分5秒98
2位 伊藤悠乃(セントラル藤が丘) 2分9秒88
3位 渡辺耶唯(神奈川大) 2分10秒19

<女子200メートル個人メドレー・決勝>
1位 渡部香生子(JSS立石) 2分11秒04
2位 寺村美穂(セントラルスポーツ) 2分11秒62
3位 清水咲子(日本体育大) 2分12秒87

<女子800メートル自由形・決勝>
1位 地田麻未(東洋大) 8分36秒92
2位 五十嵐千尋(日本体育大) 8分40秒13
3位 渡辺美根(神奈川大) 8分43秒39

(文・写真/杉浦泰介)