22日、Jリーグは事務局で理事会を開き、「試合運営におけるセキュリティ関連諸規程」を一部改定したとことを発表した。更なる安全で快適なスタジアム環境の構築を図るため、主に差別行為への対応に関する規定を改定した。Jリーグ統一禁止事項には「差別的、侮辱的もしくは公序良俗に反する言動の禁止」を追加。試合運営管理規程第9条では、Jリーグおよびクラブが、規程違反者によって被った損害に対する賠償を請求できる内容を加えた。
(写真:村井チェアマンは改めて差別撲滅を誓った)
 3月8日の浦和レッズ対サガン鳥栖戦で、浦和の一部サポーターが掲げた差別的な横断幕は、日本サッカー界を激震させた。事件以降、Jリーグには差別行為撲滅への具体案が求められていた。

 主な改定内容では、「Jリーグ共通観戦マナー&ルール」の応援マナーに関する明記を<人を傷つけることを目的とした横断幕や垂れ幕を掲げることは、おやめください>から<差別的、侮辱的もしくは公序良俗に反する発言や行為は、絶対におやめください>に変更。試合運営管理規程の第4条(持ち込み禁止物)には、「政治的、思想的、宗教的主義、主張または観念を表示し、または連想させるもの」「差別的、侮辱的な内容、表現を含むもの」「選手やチームを応援または鼓舞する目的が認められないもの」「大会の運営に支障を及ぼすおそれがあるもの」に該当する掲示物の持ち込みを禁止する文言が追加された。

 これらはリーグ戦を観戦するファン・サポーターに向けられての規程である。ひとりひとりが意識し、徹底していくことが誰もが安全・快適に観戦できる環境整備につながる。

 もちろん、リーグおよびクラブも率先して差別行為撲滅に取り組む。この日、リーグとクラブが合意した「3つのフェアプレー宣言」のひとつである「ソーシャル・フェアプレー」が、その対応策だ。ソーシャル・フェアプレーでは、「反社会勢力との関係遮断」「差別の根絶」「Jリーグとしての社会的責任を果たす(コンプライアンスの強化)」を徹底する。

 村井満Jリーグチェアマンは「ソーシャル・フェアプレーの浸透には、『全員で』『定期的に』『繰り返し』身につけることが重要。Jリーグが社会の信頼を維持するために、できる取り組みから早急に着手する」というメッセージを発表した。リーグとしての具体的な取り組みとしては、ソーシャル・フェアプレーの徹底に関する研修システムの構築、同フェアプレーを侵害するような事案に対応する組織体制のメンテナンスと再編などを挙げた。
 Jの51クラブは今年6月までを目途に、「コンプライアンス・オフィサー」を選任し、有事が起きた際の対応組織もクラブ内に設ける。

「世界で一番、オープンでフェアなリーグを目指す」
 村井チェアマンは最後に語気を強め、こう述べた。無観客試合のような悲劇を二度と繰り返さない――そのためには、Jリーグ、クラブ、ファン・サポーターが共に歩んでいくことが必要である。