29日、J1第10節が各地で行われ、東京・国立競技場では名古屋グランパスがFC東京を1対0で下した。前半は両者ともになかなかシュートまで持ち込めない展開。ともにミドルシュートからゴールを狙ったが無得点で試合を折り返した。しかし、後半3分、名古屋がDF矢野貴章のゴールで先制に成功する。その後、名古屋は追加点こそ奪えなかったものの、守備陣が体を張ってFC東京の反撃をしのいだ。勝った名古屋は連敗を5でストップ。FC東京は3連勝とはならなかった。

 矢野、連敗止める決勝ヘディング弾(国立)
FC東京 0−1 名古屋グランパス
【得点】
[名古屋] 矢野貴章(48分)
 5連敗中のチームを救ったのは、DF登録で出場した元日本代表FWだった。矢野はチーム内でケガ人が続出していることを受け、本職のFWではなく、右サイドバックとして先発。慣れないポジションながらも攻守に奮闘し、勝利に貢献した。

 お互いに守備組織をしっかりと構築し、序盤はなかなかシュートまで持ち込める場面が少なかった。その中で矢野は相手の左サイドからの突破をケアしつつ、時折、攻め上がってクロスを供給した。前半18分、矢野が右サイドを駆け上がってクロスを上げたが、これはゴール前で競り合ったFW永井謙佑がファールをとられた。チャンスには至らなかったものの、矢野のスピードが生きたシーンだった。

 そして、矢野のもうひとつの特徴と言えば、185センチの長身を生かしたセットプレーである。45分、FKからゴール前に入ったボールを、頭で後方に逸らす。これも味方が反応できず、得点にはつながらなかったが、矢野の持ち味が出ていた。

 すると、両チーム無得点のまま迎えた後半3分、矢野が先制点を奪った。自身が右サイドで粘って得たCK。MF小川佳純が蹴ったニアサイドのボールにうまく走り込み、頭で合わせた。「ボールと自分のタイミングがすごく合っていた」というシュートは、日本代表GK権田修一の牙城を破り、ゴールネットを揺らした。

 試合が動いたことで、比較的落ち着いていた展開は激しさを増していった。10分、名古屋は自陣でFC東京にパスをつながれ、PA内の混戦からFW渡邉千真にシュートを打たれた。しかし、これはクロスバーを直撃し、事なきを得た。19分には、名古屋がカウンターからMF田口泰士がシュートを放つも、わずかにゴールマウスを外れた。

 その後、名古屋は攻勢を強める相手に押し込まれたが、矢野、DF田中マルクス闘莉王ら守備陣が体を張った守りでゴールを許さない。5分のアディショナルタイムもしのぎ切り、長かった連敗のトンネルを抜けた。

「前の試合も攻めている中で点が取れなくて、失点してしまうことが多かった。今日は焦れずに、我慢してプレーできたことが良かったと思う」
 矢野は勝因をこのように語った。自身は慣れないポジションでの出場だったが「ケガ人が出て人数が減っていく中で、“自分がやることもあるだろうな”と想定はしていた。(SBとしてプレーする)準備もできていた」と明かした。最後に「(今後もSBとしてプレーするかは)監督が決めること。僕はどこで出てもプレーできるように準備するだけ」と述べた矢野。次節以降もプロフェッショナルとして、チームの勝利に貢献する。