第225回 メイウェザーvs.那須川天心は、実現しなくてもよかった

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(写真:会見では笑顔を見せていたメイウェザー<左から2番目>だが……)

「話が違う。不意を突かれた。私は『RIZIN』のリングで那須川天心との公式試合を行うことに同意はしていない」

 11月5日、東京・六本木ヒルズクラブで開かれた対戦発表記者会見から僅か3日後、フロイド・メイウェザーは、インスタグラムで、試合をキャンセルすると表明した。

 

 一体、何があったのか?

 

 メイウェザーは、こう記している。

「私は日本へ行くまで、彼(那須川)のことを聞いていなかった。聞いていたのは、高額料金で富裕層を集めた場所で、3分3ラウンドのエキシビションマッチに出場するということだけだった。

 このエキシビションは公式な試合ではないし、世界中に放送されることもない。あくまでも、エンターテインメントとしてリングに上がるということだった。

 だが、私がチームとともに記者会見に出席すると、このイベントは新たな方向に逸脱していた。私は、そこですぐに降りるべきだったと後悔している」

 

 つまり、こうなのだろう。

 メイウェザーは、エキシビションマッチに出場するつもりでいたが、RIZINは、リアルファイトを用意していた。それは違うだろう、と。

 

 六本木での記者会見でメイウェザーの話を聞きながら、「エッ!」と思わずにはいられないことがあった。

 

 それは、ルールも契約体重も決まっていないことに対しての質問が飛んだ時だ。

 メイウェザーは、こう言った。

「それは、これから数週間かけて詰めていくことになると思う。RIZINから、よりよいものが提示されるだろう。心配していない」

 

 実に曖昧な答えだった。

 厳格なルールの下で闘い、プロボクシング界において5階級を制覇した男の発言とは思えなかった。

 おそらくは、「エキシビションなのだから、そんなことはどうでもいいだろう」と考えていたのだと思う。

 

 エキシビションマッチなど観たくない

 

 そもそも、ルールも契約体重も決められていないままの対戦決定の発表は、ありえないだろう。発表後にルール、契約体重で合意に達することができなければ、試合が成立しないのだから。

 

 今回の騒動は、RIZINとメイウェザーサイドの意志の疎通ができていなかったために生じた。

 RIZINは大晦日のイベントを何が何でも成功に導きたい。それは、フジテレビで放映される際の視聴率を最優先に考えてのことである。だから、メイウェザーというビッグネームに飛びつき、見切り発車してしまったのだろう。

 

 でも、メイウェザーvs.那須川戦が流れたとしても、私は残念だとはまったく思わない。そもそも、体重が10キロ以上も異なる相手と、ビッグネームであるというだけで那須川に闘う必要があったのだろうか。

 

 本気でメイウェザーが『RIZIN』に参戦するのであれば、ウエイト的に合う相手を用意し、総合格闘技ルールでの闘いをRIZIN側は提示するべきだった。エキシビションマッチのつもりでリングに上がるメイウェザーなど観たくはない。

 那須川も、闘志剥きだしで挑んでくる相手との対戦を望んでいるはずである。

 

 大晦日、那須川天心には輝いて欲しい。

 ならば、闘う相手は二人のいずれかだろう。

 

 キックボクシングルールでの武尊との一騎討ち。これが実現すれば、間違いなく盛り上がる。

 あるいは、堀口恭司との総合格闘技ルールでの対決である。那須川に、その勇気があるか否か。RIZINが、そこに迫れるか否か。今後の発表を期待して待ちたい。

 

近藤隆夫(こんどう・たかお)

1967年1月26日、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から専門誌の記者となる。タイ・インド他アジア諸国を1年余り放浪した後に格闘技専門誌をはじめスポーツ誌の編集長を歴任。91年から2年間、米国で生活。帰国後にスポーツジャーナリストとして独立。格闘技をはじめ野球、バスケットボール、自転車競技等々、幅広いフィールドで精力的に取材・執筆活動を展開する。テレビ、ラジオ等のスポーツ番組でもコメンテーターとして活躍中。著書には『グレイシー一族の真実 ~すべては敬愛するエリオのために~』(文春文庫PLUS)『情熱のサイドスロー ~小林繁物語~』(竹書房)『キミはもっと速く走れる!』『ジャッキー・ロビンソン ~人種差別をのりこえたメジャーリーガー~』『キミも速く走れる!―ヒミツの特訓』(いずれも汐文社)ほか多数。最新刊は『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)。

連絡先=SLAM JAM(03-3912-8857)

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