16日、ベトナムで開催中の女子アジアカップ兼15年カナダW杯アジア最終予選で、なでしこジャパン(女子日本代表)がグループリーグ第2戦で女子ベトナム代表を4対0で下した。圧倒的にボールを支配した日本は引いて守る相手守備陣をなかなか崩し切れなかったが、前半44分、MF川澄奈穂美のゴールで先制した。リードして迎えた後半は20分にMF木龍七瀬、24分にFW大儀見優季の得点でリードを拡大。42分には川澄のこの試合2ゴール目でダメを押した。日本は1勝1分けで豪州と勝ち点4で並んだが、得失点差で上回り、グループA首位に浮上した。18日のヨルダン戦を引き分け以上で終えれば、決勝T進出とW杯出場権獲得が決まる。

 川澄、2G1Aで快勝貢献(ホーチミン)
女子ベトナム代表 0−4 女子日本代表
【得点】
[日本] 川澄奈穂美(44分、87分)、木龍七瀬(65分)、大儀見優季(69分)
 なでしこが世界女王の貫禄を示した。攻撃は序盤からボールを支配し、4ゴール。守備ではスペースを与えず、開催国・ベトナムにほぼ何もさせなかった。

 ダブルボランチにはMF澤穂希、MF宮間あやの新旧キャプテンがコンビを組んだ。宮間が積極的にボールを受けて前線に展開し、澤は絶妙な位置取りでことごとくセカンドボールを拾う。この2人で中盤を支配し、両サイドの川澄、木龍が突破を仕掛けるというかたちでベトナムゴールに迫った。

 しかし、5バック気味に守る相手守備陣の厚い壁をなかなか崩し切れない。38分、川澄が左サイドのスペースに抜け出してクロス。ゴール前で大儀見がピタリと頭で合わせた。しかし、シュートはGK正面を突いた。

 試合が動いたのは44分、それまで再三チャンスをつくりだしていた川澄が決めた。 DF上尾野辺めぐみ左からのCKをPA内で受けると、後方へボールを送る。これに走り込んだ川澄が右足を一閃。少しアウトサイドにかかったボールがゴール右へ突き刺さった。なかなかゴールが生まれず嫌な雰囲気になりつつある中で、待望の先制点だった。

 後半も日本がボールを支配してベトナムを押し込んだ。高温多湿の過酷な環境下で運動量は少し低下したものの、高い技術でボールを失わない。そんな20分、木龍が追加点を奪った。左サイドからのクロスを、大儀見が頭で折り返すと、攻め上がっていたDF岩清水梓がこれも頭で狙ったボールがクロスバーを直撃。そして、こぼれ球を木龍がヘディングで押し込んだ。木龍の代表初ゴールが貴重な追加点となった。直後の23分、FW丸山桂里奈と交代した木龍は、ベンチ前で佐々木則夫監督とがっちり握手をかわした。

 24分には、エース・大儀見が魅せた。右サイド、川澄から上がったクロスを頭で叩き込んだ。豪州戦からの2試合連続弾は、節目の代表通算50ゴール目。ゴール後、大儀見は力強くガッツポーズをつくった。
 試合を決めた日本は、大儀見、宮間をベンチに下げ、FW高瀬愛実、MF宇津木瑠美を投入。ただ、温存策をとりながらも、さらにゴールを狙った。すると、42分、高瀬が右サイドで強引に仕掛けてグラウンダーのボールをゴール前へ。FW菅澤優衣香が相手DFと競り合いながら落としたボールを、川澄が冷静にゴール左へ蹴り込んだ。結局、最後まで主導権を握り続けた日本が今大会初勝利を収めた。

「あれほど引かれた状況の中でも、選手が焦らず1点ずつ積み重ねながら勝ち点3を取ってくれた」
 佐々木監督は満足気な表情でこう語った。パスが回るということは、各選手が足を止めずに動き続けているということである。中1日で出場した選手もいる中、全体の運動量を維持したことが快勝につながった。

 次戦のヨルダン戦で引き分け以上の結果を出せば、ベスト4、そしてW杯出場が決まる。ただ、なでしこの目標はアジア制覇、その先にあるW杯連覇だ。「またメンバーも新たな状況になると思うが、しっかり勝ち点3をとって決勝トーナメントへ進みたい」と指揮官。勝って、頂点への道を駆け上がれるか。