いよいよ、欧州ナンバーワンクラブが決まる。今季の欧州チャンピオンズリーグ(CL)、24日(日本時間25日)の決勝でレアル・マドリードとアトレティコ・マドリードが顔を揃える。本拠地が同都市(マドリード)のクラブ同士が決勝を戦うのは、59年の大会史上で初だ。レアルは12季ぶり10度目の優勝を、アトレティコは40季ぶり2度目の決勝で初制覇を狙う。果たして、会場のポルトガル・リスボンでビッグイヤーを掲げるのはどちらのクラブか――。
 念願の“デシマ”(10度目の欧州CL制覇)達成なるか。レアルは01−02シーズンに9度目の優勝を果たしてから、11シーズン、決勝にすら進出できなかった。12季ぶりのファイナルは、ようやく訪れたデシマ達成のチャンスだ。

 今季は就任1年目のカルロ・アンチェロッティ監督の下、リーグ戦は3位に終わったが、カップ戦のコパ・デル・レイを制覇した。レアルの特徴は、なんといっても攻撃力だ。リーグ戦では5季連続で100得点以上を記録。欧州CLでも準決勝までの12試合で37得点とその破壊力は際立っている。

 中心選手は今季のFIFAバロンドールを受賞したクリスティアーノ・ロナウドだ。今大会ではここまで大会史上最多の16ゴールをマーク。点取り屋としての能力をいかんなく発揮し、レアルを決勝に導いた。高速ドリブルで敵陣を切り裂き、威力・精度ともに抜群のシュートでゴールネットを揺らす。3メートル近い跳躍からのヘディングも強力で、ブレ球のFKからのゴールも多い。レアルとしては、決勝も左サイドのロナウドを中心に攻撃を展開していくことになるだろう。

 懸念されるのはシャビ・アロンソの欠場だ。彼が中盤の底でパスをさばき、的確なポジショニングでピンチの芽を摘んでいたことで、レアルは絶妙な攻守のバランスをとっていた。中盤の主導権を握れなければ、自慢の攻撃力を機能させることは難しい。シャビ・アロンソの代役イジャラメンディ、ルカ・モドリッチがいかにハードワークして、シャビ・アロンソの穴を埋められるか。

 対するアトレティコは今季、国内リーグでレアル、バルセロナを抑え、18季ぶりの優勝を果たした。その余勢を駆って欧州の頂点にたどり着けるか。
 そんなアトレティコの武器は、組織力だろう。レアルのように世界的な実力の選手はいないものの、全員がハードワークを厭わない泥臭いサッカーで決勝まで勝ち進んだ。

 国内リーグ最少失点(26点)の堅守から、素早く前線にボールを運び、エースのディエゴ・コスタやダヴィド・ビジャが仕留める。この戦いを90分間継続できることが、アトレティコの強みだ。積極的なプレッシングは、相手に余裕を与えない。

 だが、そのプレッシングをかいくぐられれば、相手に大きなスペースを与え、ピンチに陥る恐れもある。特に、レアル相手にはサイドのケアが重要だ。ロナウド、ガレス・ベイルといった抜群の突破力を誇る選手は、常に裏のスペースを狙っている。90分間で少しでもスキを見せれば、致命傷になりかねないのだ。

 また、18季ぶりのリーガ制覇が、どのように影響するかも勝負の行方を左右しそう。一度、チーム全体に漂った高揚感を振り払い、再び緊張の糸を張り巡らせる作業は、そう簡単ではないだろう。ディエゴ・シメオネ監督のメンタルマネジメント力に注目だ。

 ここまで2クラブの戦力を分析してきたが、レアルはロナウドなど世界屈指のタレントを揃えた「個」のチーム、アトレティコは全員サッカーで勝負する「組織」のチームといえる。ファイナルでは極上の「個」と「組織」のぶつかり合いが見られるに違いない。史上初のダービー対決となった世紀の一戦を、世界中のサッカーファンが注目している。