愛媛FCは23日、ホームのニンジニアスタジアムで18日に開催されたカマタマーレ讃岐戦で一部の愛媛サポーターが引き起こしたトラブルについて当該サポーターへの処分を決定した。クラブが確認した事実関係によると、当日の試合開催前、選手到着時にサポーター6名が讃岐の選手バスの前に飛び出し、通行を妨害する危険な行為を行った。また、そのうち1名はバス到着時や試合中に「讃岐は邪魔」と読みとれるフラッグを掲げていた。これを受けてクラブではバスの通行妨害に関わった5名にホームゲームへの入場禁止10試合(5月24日〜9月14日、期間中のアウェイゲームも入場禁止)、通行妨害と不適切なフラッグを掲出した1名にホームゲーム、アウェイゲームとも無期限の入場禁止処分を下した。
 クラブは併せて今後の対応策も発表。選手バスの到着位置を変更し、その付近におけるホームサポーター、アウェイサポーターの導線分離と警備の強化を実施する。またサポーターへの観戦マナーを徹底し、入場時の手荷物検査でフラッグや横断幕などの掲出物の内容についてチェック体制を強化する。

 今回の騒動では、クラブはバスの通行妨害や不適切なフラッグを掲げた行為に、その場で対処し、当該サポーターを移動させたり、掲出を取り止めるように指示を出した。試合終了後には当事者に事情聴取を実施。20日のJリーグ理事会前には亀井文雄社長が村井満チェアマンに当日の状況について直接、報告していた。

 報告を踏まえて、村井チェアマンは「フラッグに書かれていた英語(ODSTRUCTIVEと表記、OBSTRUCTIVE=邪魔者の誤記とみられる)をどのように認識していたか」「試合中のどのタイミングで掲示されたか」などをクラブに再調査するように依頼。21日にはチェアマン名で<私は先月4月22日に3つのフェアプレー宣言をし、その中でファン・サポーターの皆様に、「スタジアム内外での掲示物等のメッセージは、それに触れる方々が共感し、感動を共有できるものにしましょう」と呼びかけました。(中略)先の3つのフェアプレー宣言とメッセージに込めた思いに対しては、それに反する残念な行為であったのではないかとも思います>との見解を示した。

 亀井社長は処分決定に際して、「今回の違反行為におきまして、当日ニンジニアスタジアムにご来場された皆様、およびカマタマーレ讃岐に関係するすべての皆様に、改めて深くお詫び申し上げます」と謝罪のコメントを出した。また、「ファン・サポーターの皆様とともに、安心かつ安全で快適、そして誰もが夢を見て楽しめるスタジアム作りを目指して、改めてよりよい観戦環境の整備に努めてまいります」と再発防止を誓った。今後はJリーグに対して詳細の報告を行い、リーグ内でクラブに対する処分の有無も含めて検討がなされる見込みだ。

 18日のホームゲームはJ2に今季から昇格した讃岐との初対決とあって、クラブでは新しい四国ダービーを盛り上げようと、「1万人プロジェクト」を企画。ホームでは今季2番目となる7,166人の観客を集めた。

 しかし、試合前より、一部サポーターからは讃岐戦を“四国ダービー”と銘打つことに反発の声が上がっていた。四国ダービーはJFL時代からライバル関係にあった徳島ヴォルティスとの対決につけられた名称、との思い入れに依るものだ。ただ、それはいわば内輪の論理。こうした発想が、文字通り讃岐を“邪魔者”扱いする行為の根底にはあったとみられる。

 村井チェアマンは21日に出したコメントの中で<人が仲間意識を持って集うところには、ときに一方で他者を排除するという意識が生まれてしまうということがあります>と述べた。同じ四国内のクラブ同士がダービーマッチで地元の誇りをかけて競い合い、大勢のサポーターが集まって応援合戦を繰り広げるのは素晴らしい光景だ。

 だが今回は、それが歪んだかたちで“排除の論理”を生んでしまった。対戦相手がいなければスポーツは絶対に成り立たない。“排除”ではなく“共存共栄”――この精神なくして、自分たちの愛するクラブの発展もないことを今一度、認識しなくてはならない。