平野早矢香(元卓球五輪代表)<後編>「新たなチャレンジ」

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二宮清純: 現在、日本の女子卓球は非常に勢いがあります。平野さんが出場した2012年ロンドン五輪では団体で銀メダルを獲得し、4年後のリオデジャネイロ五輪では団体で銅メダルを手にしました。11月時点の世界ランキングを見ても20位以内に日本人が6人います。

平野早矢香: 今、日本勢は非常に強い。国内の世界選手権やオリンピック代表争いはとても熾烈です。

 

 

 

 

二宮: 近年は日本人選手が中国人選手を試合で破ることも珍しくなくなってきました。日本は卓球王国の中国に追い付いたと言えるでしょうか?

平野: まだそこまでとは言えないですね。背中は徐々に見えてきているとは思います。ただ団体戦で中国に勝つにはまだレベルの差があります。全体で見れば、中国に次ぐ位置で3位以下からは抜けた存在にはなっていると思います。日本は若い世代も育ってきていて、世代交代もスムーズにできているのかなと感じます。

 

二宮: 日本人トップは世界ランキング3位の石川佳純選手です。彼女とは平野さんも一緒にプレーされていますが、まだ衰えは見られない?

平野: 佳純はむしろ今は新しいことにトライしています。サーブであったり、チキータ(強い回転をかけるバックハンドの台上プレー)を戦術に採り入れたりしているんです。卓球スタイルを今の時代に合わせ、より速く攻撃的になろうとしている。私は進化していると感じます。

 

二宮: 国内では平野美宇選手、伊藤美誠選手などの若い世代が下から突き上げてきて、プレッシャーも大きいのでしょうね。ロンドン五輪では平野さんや福原愛さんという“お姉さん”たちがいましたからね。

平野: そうですね。今年5月の世界選手権ではキャプテンを務めました。背負うものが大きく、すごくプレッシャーを感じていたと思います。自分の試合だけでなく全体のことも見なければいけませんから。

 

二宮: 現在は25歳。日本代表の中でも年齢は上の方になりました。

平野: 佳純からは現状維持ではなく常に進化したいという思いを感じます。リオ五輪では団体でメダルを獲ったものの、個人戦は1回戦敗退と悔しさを味わった。彼女の東京五輪に懸ける想いはすごく強いと思います。

 

 解説の難しさ

 

二宮: 石川選手はサウスポーです。一般的にはアドバンテージがあると言われていますが、実際にはどうでしょう?

平野: 割合的には左利きの選手が少ないので、おっしゃるように有利と言われることはあります。ただ逆に言えば左利きの選手自身も“対左”に慣れていないという側面もあるんです。

 

二宮: 平野さんは石川選手と組んでロンドン五輪も戦いましたし、全日本選手権では女子ダブルスを3度制しています。ダブルスは右利きと左利きの組み合わせの方がやりやすいのでしょうか?

平野: 基本的には右利きと左利きの方が動きやすいです。ダブルスは交互に打球しなければいけませんから、パートナーが打ちやすいようにスペースを作ることが重要になります。右利きと左利きの組み合わせの方が、打ち終わって下がる選手と前に入ってくる選手のポジションがぶつかりにくく、スムーズに移行しやすいんです。ただし右利きの選手がレシーブでバックハンドを使う場合、打球後のスイッチが難しくなることもあります。

 

二宮: なるほど。それは面白い。

平野: 私のレシーブはバックハンドをあまり使わず、フォアハンドで返すことが多かった。だから佳純とはとても組みやすかったです。もちろん右と左の組み合わせでなくても、練習して連携を深めて違和感をクリアにしていくのですが……。

 

二宮: 改めて卓球は奥が深いですね。

平野: そうなんですよ。だから中継で解説を務める時、いろいろ話したいことはあるんです。でもすぐラリーに入ってしまうので、時間が足りません(笑)。

 

二宮: T.LEAGUEもスタートし、再来年は東京五輪もあります。卓球に対する注目度も高まりますので、解説者の力量も問われる時代になっていくでしょうね。

平野: 私も日々勉強中です。卓球経験者や詳しい人を満足させる解説をするなら時間がかかってしまいます。でも初めて卓球を観る人にとっては、コアな情報を伝えるよりも簡単で分かりやすい解説を心掛けなければいけませんからね。

 

二宮: 確かに映像やフリップなどで捕捉できればいいけど、試合中継となると言葉だけで説明するのは難しいです。一般の人に分かりやすいように置き換えなければならない。例えば陸上の三段跳びの世界記録は渋谷のスクランブル交差点をホップ、ステップ、ジャンプで渡りきることができるとか……。

平野: それはとても分かりやすいですね。私は今、卓球専門番組でレギュラーを務めています。その番組ではテレビ局の方から「マニアックになっていい」と言われているので、いろいろと提案させていただいています。

 

二宮: では、この雲海酒造の本格芋焼酎『木挽BLUE』を卓球で例えるなら?

平野: バックハンドのストレート攻撃のような切れ味ですね。

 

二宮: なるほど。スパッと爽快なイメージですね。

平野: はい。張本智和選手や平野美宇選手が得意としています。ストレートに打つということはクロスよりも距離が短いので、ネットやアウトになるリスクも高い難しい技です。ただコントロールできればノータッチで決まることもあるので、見ている方もスカッとしますね。

 

二宮: そういう強力な武器があれば選手も試合を組み立てやすいでしょうね。

平野: この『木挽BLUE』はいろいろな料理にも合いそうなので、組み合わせは自在ですね(笑)。今日は肉料理ですが、豚肉にも合いますね。

 

二宮: 食材を引き立てていると?

平野: そう思います。このお酒には爽快感があるので、食欲を刺激してくれます。

 

二宮: 先ほどのバックハンドのストレートは、相当な技術がいるんでしょうね。インパクトの瞬間は手首を返すのですか?

平野: 返している意識はないですね。打っている最中に自然と返っている感覚でしょうか。返そうと意識し過ぎると手首が返り過ぎて、ボールを当てる面がブレてしまう。だからボールがラケットに当たっている瞬間はあまり手首を返さず、打ち終わりの流れで自然と返っている感じはしますね。

 

 卓球の魅力を伝えたい

 

二宮: プロ野球で3度の三冠王に輝いた落合博満さんもバッティングについて、そう言っていましたね。「手首は返しちゃいけない。自然に返るものだ」と。

平野: それと全く同じです。フォロースルーで返っていくという感じですね。私は落合さんの言葉がすごく響きます。確固たる自分を持っていて、話している雰囲気から重みを感じます。一度お会いしてみたい方の1人です。

 

二宮: 平野さんは現役時代、“雀鬼”と呼ばれた桜井章一さんにお会いされていますよね。やはり卓球以外のスペシャリストやレジェンドから学べることは多かった?

平野: そうですね。今年9月にテニスの全米オープンを現地で観戦する機会があって、ロジャー・フェデラー選手のプレーもすごかったです。

 

二宮: グランドスラム(四大大会)で歴代最多の通算20勝を挙げたレジェンドプレーヤーです。平野さんはどの点がすごいと感じましたか?

平野: フェデラー選手のプレーを見ていると、レシーブは打つのではなく、角度を合わせるものだと感じました。それに相手をすごく見ている。だから“ここでこんなことをするんだ”と意表を突くようなリターンができるのだと思います。華麗なバックハンドなど観客が魅了されるプレーをしますよね。

 

二宮: 今シーズンから日本でプレーしているサッカーのアンドレス・イニエスタ選手、ラグビーのダン・カーター選手も似たようなところがあります。難しいことを簡単にやってのけるイメージです。

平野: 他競技を見て学べることはとても多い気がします。フィギュアスケートの平昌五輪女子シングル金メダリストのアリーナ・ザギトワ選手の演技を見ました。フィギュアは採点競技でジャッジと観客に魅せる競技です。私が見ていて感じたのは、彼女のパフォーマンスは音楽と演技と構成と人とがとてもマッチしていました。だから自然と引きつけられていった感じがします。私は素人ですが、その世界観に思わず入り込んでしまうほどでした。

 

二宮: フィギュアスケーターの多くはバレエを習っていて、そこで表現力を身に付けると聞きます。

平野: 卓球選手の多くは卓球一筋で頑張っています。それが悪いとは言いませんが、二宮さんはどう思われますか?

 

二宮: 例えばコンサートや美術館に行くなど芸術に触れることは大事だと思います。他にも平野さんのように卓球以外のスポーツを観戦することで、見えてくるものがあるんじゃないでしょうか。

平野: やはりそうですよね。私も卓球以外の経験は必要だと思います。だから佳純にも話しています。「若いうちは勢いでやってきて、成功も失敗もあったよね。今は他のことにも目を向けてもいいんじゃない。私はそれができなかったから」と。佳純自身変わろうとしているところです。チャレンジしている時は結果が出ないと“これでいいのか”と不安になりますが、私は「貫いた方がいいよ」とアドバイスを送っています。最近は腹が据わってきているようにも感じますね。

 

二宮: 平野さんご自身が挑戦されていることはありますか?

平野: 今は英語を勉強しています。なぜかというと海外の選手や指導者とコミュニケーションが取れれば、解説を含め皆さんに伝えられる幅もいろいろと広がるかなと思ったんです。2020年には東京オリンピック・パラリンピックがありますから、卓球もこれからどんどん盛り上がっていくはずです。だから私は語学力を上げて、卓球の魅力を伝えていきたい。まずはそこにトライしていきたいと思っています。

 

(おわり)

 

平野早矢香(ひらの・さやか)プロフィール>

1985年3月24日生まれ、栃木県鹿沼市出身。5歳から卓球を始める。仙台育英高校を経て、ミキハウスに入社。18歳で全日本卓球選手権女子シングルスを初制覇。以降、計5度の日本一に輝くなど日本女子卓球界のトップに君臨した。五輪には北京、ロンドンの2大会に出場。2012年ロンドン五輪では女子団体戦のメンバーとして日本史上初の銀メダル獲得に貢献した。16年4月に現役引退。現在はミキハウスでコーチを務める傍ら、テレビ解説や卓球教室を通して競技の普及にも努めている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回、平野さんと楽しんだお酒は芋焼酎「木挽BLUE(ブルー)」。宮崎の海 日向灘から採取した、雲海酒造独自の酵母【日向灘黒潮酵母】を使用し、宮崎・綾の日本有数の照葉樹林が生み出す清らかな水と南九州産の厳選された芋(黄金千貫)を原料に、綾蔵の熟練の蔵人達が丹精込めて造り上げました。芋焼酎なのにすっきりとしていて、ロックでも飲みやすい、爽やかな口当たりの本格芋焼酎です。

 

提供/雲海酒造株式会社

 

<対談協力>

羅豚はなれ

 

東京都中央区銀座8-10-8 銀座8丁目10番ビル1F

TEL:03-6808-1555

営業時間:
ランチ

月~日 11:30~15:00
ディナー

月~金17:00~23:30(L.O.22:30)

土日 16:00~22:00(L.O.21:00)

 

☆プレゼント☆

 平野さんの直筆サイン色紙を芋焼酎「木挽BLUE」(900ml、アルコール度数25度)とともに3名様にプレゼント致します。ご希望の方はこちらのメールフォームより、件名と本文の最初に「平野早矢香さんのサイン希望」と明記の上、下記クイズの答え、郵便番号、住所、氏名、年齢、連絡先(電話番号)を明記し、このコーナーへの感想や取り上げて欲しいゲストをお書き添えの上、お送りください。応募者多数の場合は抽選とし、当選発表は発送をもってかえさせていただきます。締切は18年12月13日(木)。たくさんのご応募お待ちしております。なお、ご応募は20歳以上の方に限らせていただきます。

 

◎クイズ◎

 今回、平野早矢香さんと楽しんだお酒の名前は?

 

 お酒は20歳になってから。

 お酒は楽しく適量を。

 飲酒運転は絶対にやめましょう。

 妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。

 

(構成・写真/杉浦泰介)

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