(写真:トヨタ自動車勢は塚本<左端>が首位打者、山崎<右端>が打点王を獲得)

 26日、東京ドームホテルで第51回日本女子ソフトボールリーグの表彰式が行われた。最高殊勲選手賞には最多勝利投手賞、最優秀防御率賞、ベストナイン賞(投手部門)と投手の個人タイトルを総ナメにしたモニカ・アボット(トヨタ自動車レッドテリアーズ)が選ばれた。2年ぶり10度目の優勝を果たしたトヨタ自動車からはアボット、長﨑望未、鈴木鮎美、塚本智名、アリソン・アギュラーがベストナイン賞に入った。リーグ在籍2年以内の選手の中から選ばれる新人賞には辰巳舞衣(投手部門)、吉松梨乃(野手部門)のデンソーブライトペガサスの2人を選出。リーグ通算400安打を記録した山田恵里は特別表彰を受けた。

 

 2年ぶり10度目の優勝のトヨタ自動車。11月18日に行われたビックカメラ高崎BEE QUEENとの決勝戦は延長8回タイブレーカーの末に勝利した。中西あかね監督は就任2年目で王座を手にしてみせた。指揮官は激闘から8日後、決勝戦をこう振り返った。「緊張感のある試合でした。選手たちは最後に今年一番の試合をしてくれました」。リーグ戦は20勝2敗で1位通過したが、決勝トーナメント初戦は2位ビックカメラ高崎の上野由岐子にノーヒットノーランを達成され、0-1で惜敗していた。決勝はアボットと上野の投げ合いで競り勝った。

 

 12勝0敗、防御率0.23と驚異的な数字を残したアボットは、個人表彰はないものの奪三振と勝率でもトップを誇る。“満場一致”でのMVP選出と言っていいだろう。決勝トーナメントでも3試合全てで完投。22イニングを投げて1失点のみの快投を見せ、決勝トーナメントでもMVPを受賞した。アメリカが誇る世界一のサウスポーは、33歳となった今でも最強を証明してみせたのだ。

 

(写真:普段のユニホーム姿とは違うドレスアップして表彰式に臨んだ選手たち)

「ピッチャーを中心に守るのが私たちの戦い方。今年は3点以上を獲って援護すること目標にしてきました」と中西監督。リーグ戦は22試合で121得点を叩き出した。1試合平均5.5得点だ。3点未満は4試合しかなかったが、完封負けも一度もなかった。打率3割を超えるバッターは6人。トップバッターの塚本が首位打者に輝き、4番の山崎早紀は打点王を獲得した。リーグ随一の破壊力を誇る打線が、王座奪還を支えた。

 

 今シーズンのスローガンは「本気」。キャプテン1年目の古澤春菜は「昨年は悔しい結果で日本リーグを終えました。『本気』にはいろいろな意味があって、何事も自分の本気を出すこともそうですし、全ての日頃の練習において本気を出す。量ももちろん大事ですが、1球1打、今年は質にこだわった」と振り返る。「気を抜く試合はなかった」と一戦一戦、集中して向き合ったことが王座奪還に繋がったという。

 

 監督就任以来、指揮官は長﨑、古澤、塚本ら1992年4月から93年3月生まれの中堅選手たちを主軸に据えてきた。今シーズン一番のブレイクは首位打者の塚本だ。昨シーズン打率2割5分、本塁打はゼロだった個人成績が、今シーズンは打率4割3分2厘、5本塁打とジャンプアップした。「直線なら負けない」という自慢の俊足を生かし、決勝戦では長﨑のレフトフライでホームに生還した。

 

(写真:昨年より新設されたベストドレッサー賞に選ばれた中村<左>と長﨑)

 飛躍のきっかけは冬場のトレーニングにあった。まずバッティングの基礎となる下半身を鍛え抜いた。更には「バットも振り込んできたので、飛距離が伸びた」と塚本。タイミングの取り方を意識し、「フォームを小さく速くというバッティングに変えました」という。これにより確実性が増したのだ。「来シーズンも同じくらい打席に立ち、結果を残せるようにしたい。足を使った部分でも頑張りたいと思っています」。トヨタ自動車が誇るスピードスターが、来シーズンもチームを牽引する。

 

 ベストナインは5人選出。多くのタイトルホルダーも生まれた。「“勝ちたい”“巧くなりたい”という気持ちに真剣に取り組んできた」と中西監督。常勝を義務付けられるトヨタ自動車は、アクセルを緩めることはない。38歳の若き指揮官は「今年もたくさんの方に応援していただきました。その方たちに恩返しをしたい。連覇に挑戦していきたいと思います」と力強く語った。

 

(文・写真/杉浦泰介)