(写真:サヨナラ勝ちが決まった瞬間、ベンチから選手たちが一斉に飛び出した)

 18日、第51回日本女子ソフトボールリーグの決勝トーナメント最終日が東京・神宮球場で行われた。決勝はリーグ戦1位のトヨタ自動車レッドテリアーズが同2位のビックカメラ高崎BEE QUEENを延長8回タイブレーカーの末、1対0で下した。トヨタ自動車は2年ぶり10度目の優勝。ビックカメラ高崎は連覇を逃した。MVPには決勝トーナメント3試合を1人で投げ抜き、1失点のみだったモニカ・アボット(トヨタ自動車)が選ばれた。

 

 長﨑、サヨナラ打&好守で貢献(神宮)

ビックカメラ高崎BEE QUEEN 0 = 00000000

トヨタ自動車レッドテリアーズ 1 = 00000001×(延長8回)

勝利投手 アボット(2勝1敗)

敗戦投手 上野(1勝1敗)

 

 最後に報われたリーグ1位

 

(写真:今シーズンは最多勝、最優秀防御率、最多奪三振など個人タイトル総ナメのアボット)

 寒空の神宮球場、白熱した投手戦が連日展開された。女子ソフトボールの日本一を決めるにふさわしい好ゲームが続いた。トヨタ自動車はアボットが太陽誘電ソルフィーユとの3位決定戦で完封。前日にノーヒットノーランを食らった上野由岐子擁するビックカメラ高崎との決勝に臨んだ。

 

 先攻はビックカメラ高崎。アボットはトップバッターの森さやかを抑えると、打席に糟谷舞乃を迎えた。前日の初回にホームランを浴びた相手である。ここは打ち取り、昨日からの嫌な流れを断ち切りたかった。しかし一、二塁間を破られヒットを許した。

 

 それでも長身のサウスポーは動じなかった。キャッチャー峰幸代のミット目がけ力強いボールを放り続けた。3番の市口侑果をライトフライ、4番の山本優を空振り三振に切って取った。

 

(写真:気迫のこもったヘッドスライディングで内野安打をもぎとる長﨑)

 その裏、トヨタ自動車は先頭の塚本智名がヒットで出塁した。しかし続く鈴木鮎美が送れない。3-6-4のゲッツーで2死走者なし。3番の長﨑望未はピッチャーゴロに倒れ、スコアボードにゼロが灯った。

 

 5回表、アボットは内藤実穂にツーベースを打たれ、無死二塁のピンチを招いた。「ここで三振をという場面では必ず獲りにいく」とアボット。我妻悠香、中西舞衣、代打の北口美海を3者連続三振に仕留める。

 

 7回表にもピンチは訪れた。2死一塁の場面、アボットの球を弾き返した我妻の打球がライトへ。右に切れていくボールをライト長﨑が追いかける。「ボールが流れる方向に走っていった」と風なども計算に入れながら背走し、最後は飛びつくようにしてグラブに収めた。アボットが「素晴らしい守備だった」と絶賛するファインプレーで、チームを助けた。

 

 両軍ゼロ行進が続く。チャンスは作るが点は入りそうで入らない。試合は延長戦に突入した。無死二塁からスタートするタイブレーカー。ビックカメラ高崎は中西が送れず、三塁封殺。その後のチャンスも生かせず、トヨタ自動車に攻撃権を渡す。

 

 トヨタ自動車は鈴木の打球を処理した上野が送球できず、無死一、三塁とチャンスが広がった。打席には長崎。初球で鈴木が二盗に成功した。「2ストライク追い込まれるまで、力みがちになっていました。自分を信じてスイングしようと」。長﨑はチェンジアップを捨てていた。一方、上野-我妻のバッテリーは犠牲フライすら許されない状況。内野ゴロかフライに打ち取りたいところだった。

 

(写真:長﨑の犠牲フライで塚本がホームに生還し、2年ぶりの優勝が決まった)

 4球目、長﨑はアウトコースのストレートを逆らわずレフト方向へ運ぶ。ライナー気味のレフトフライとなり、三塁走者の塚本はタッチアップした。塚本の足とレフト中西の肩との勝負。ホームはクロスプレーとなったが、カットプレーとなった分、塚本の足が勝った。アンパイアが両手を横に広げる。この瞬間、トヨタ自動車のサヨナラ勝ちが決まった。

 

 2年ぶりの神宮決戦。トヨタ自動車は再び王座を奪還した。中西あかね監督就任後は初、チームとしては節目の10度目の日本一だ。キャプテン1年目の古澤春菜は「キャプテンとして1年間、大変なこともありましたが、報われた。個の能力が高い分、まとめるのが大変でした。どんなつらいことも忘れるくらいうれしい」と振り返った。

 

(文・写真/杉浦泰介)