J3第34節のSC相模原対鹿児島ユナイテッドFCの一戦が2日、相模原ギオンスタジアムで行われた。先月、現役引退を表明した元日本代表GK川口能活が所属する相模原が1対0で鹿児島に勝利した。相模原のFWジョン・ガブリエルが後半25分にPKを決めて先制した。相模原は川口を中心に無失点に抑えて逃げ切った。

 

 川口、ファインセーブ連発でチームを救う(ギオンスタジアム)

SC相模原 1-0 鹿児島ユナイテッドFC

【得点】

[相] ジョン・ガブリエル(70分)

 

 

 つま先立ちの前傾姿勢で相手攻撃陣に睨みをきかせる川口は今日も健在だった。守護神として相模原ゴールマウスにしっかりと鍵をかけ、チームの勝利に貢献した。川口がいなかったら、3点は失っていたように映った。

 

 まずは前半20分。最初のピンチが訪れる。ペナルティーエリア内左にいたMF中原秀人にボールが渡る。鋭い切り返しから右足で強烈なシュートを放たれる。これを少しずつシューターとの距離を詰めていた川口が左手一本で弾いた。

 

 アディショナルタイムには右サイドを崩される。中に折り返されて、ダイレクトでシュートを打たれるが川口が正面で防ぎ難を逃れた。守護神の冷静なポジショニングで相模原は無失点で試合を折り返した。

 

 後半に入っても相模原のピンチは続いた。9分、鹿児島のカウンター。DFラインの裏を突かれてFW萱沼優聖と川口が1対1の場面。ペナルティーエリアぎりぎりまで川口が飛び出す。萱沼のシュートを右手で弾き、ボールがこぼれると瞬時に体を起こしてボールに飛びついた。

 

 この後、相模原がPKを獲得。これをガブリエルが冷静に決めて相模原が勝利した。

 

 優勝後の引退セレモニーではサプライズ演出があった。同時期に日本代表のレギュラーを争った名古屋グランパスのGK楢崎正剛が花束贈呈に駆け付けた。楢崎はマイクを向けられるとこう、答えた。

 

「最後の最後まで格好良かった。リーグ戦では敵として、代表では味方として。ライバルとも言われたが、僕が年下なので、追いかけるだけだった。僕の財産になった。これからも日本サッカーのために一緒にまた頑張りたい」

 

 川口も戦友・楢崎について語った。

「僕にとって楢崎正剛は特別な選手。彼がいなかったら日本代表でプレーすることはできなかったですし、この年齢までプレーすることはできなかった。まだまだ現役を続けて、僕の分まで頑張って(笑)」

 

 セレモニー後の会見では2日前に楢崎から「電話が来た」と言い「“ヨッちゃん(川口の愛称)、出るの?”と言われました。なんでそんなことを聞くんだろうと思ったら、こういうこと(サプライズ演出)だったんだ」と笑った。

 

 この試合を含め、今季は6試合に出場した。21節のガイナーレ鳥取戦では7失点を喫した。

「今季、自分が出た試合は大量失点していた。1対0はGKにとって、理想的なスコアで終われました。たくさんの人がスタジアムに足を運んでくれて、僕は幸せ者です」

 

 今後は指導者を目指す川口。

「GKとして、やってきたことを若い選手に継承したい。若い選手には、自分より強い選手との対戦を楽しむメンタリティーを持ってほしいです」

 

 川口という存在が日本サッカー界では、陽が当たりにくかったGKに陽を当ててくれた。川口のプレーが、我々のGK像を変えてくれた。攻撃的GKの先駆け的存在だった。スター性のあるGKの出現は、そう遠くないはずだ。炎の守護神は、いつの時も必ず“やってくれる男”である。

 

(文/大木雄貴)