グループBの組み合わせには、世界中が驚いたに違いない。前回王者のスペイン、同準優勝のオランダがいきなりグループリーグで激突するのだ。この2強に対し、チリ、オーストラリアがいかにして牙城を崩すかが見どころだ。

「無敵艦隊」がサッカー王国に出陣する。スペインは目下、EURO2008、2010年南アフリカW杯、EURO2012とメジャー大会3連覇中だ。最大のポイントは、史上3カ国目のW杯連覇を達成できるかどうか。そのために、MFシャビ・エルナンデス、MFアンドレス・イニエスタ、DFセルヒオ・ラモス、GKイケル・カシージャス……今大会も勝ち方を知る選手が本大会メンバーに名を連ねた。

 オフェンスはイニエスタ、シャビを中心に小気味いいリズムでパスをつなぎ、相手の守備組織が崩れたところに決定的なパスを通す。またリーガ・エスパニョーラで27得点をマークしたFWジエゴ・コスタなど、パスを受けるアタッカー陣の質も高い。
 守備面ではGKイケル・カシージャスを中心に堅守を築く。センターバックのセルヒオ・ラモスとジェラール・ピケは空中戦に強く、セットプレーでは得点源にもなる。各ポジションのバックアッパーも充実しており、連覇に向けて死角は見当たらない。

 そのスペインと初戦で当たるのがオランダだ。出場すれば常に優勝候補に挙げられるサッカー大国だが、準優勝3度とトロフィーには縁がない。南アフリカW杯も決勝でスペインに0対1で敗れ、涙をのんだ。今大会こそ悲願のW杯制覇を狙う。

 欧州予選では圧倒的な強さを見せた。FWロビン・ファンペルシー、FWアリエン・ロッベンという強力アタッカーを擁し、予選10試合で取りも取ったり、34得点。本番もこの2人を中心に攻撃を展開していくことは間違いない。中盤にもMFウェズレイ・スナイデル、MFナイジェル・デヨングといったW杯経験者を揃え、前線の経験値に不安はない。
 一方で、守備陣には不安が付きまとう。というのも、DF登録の選手は全員、W杯の出場経験がないのだ。昨年11月、ダレイ・ブリント、ステファン・デフライ、ロン・フラール、ダリル・ヤンマートからなるDFラインが日本代表に2点を奪われたことは記憶に新しい。バルセロナ、バイエルン・ミュンヘンなどを率いた百戦錬磨のルイス・ファン・ハール監督が、経験に乏しい選手をどうマネジメントするのかに注目が集まる。

 チリはベスト16に進出した前回大会を経験した選手、スタイルがベースとなっている。守備はハイプレスを90分間継続し、高い位置でボール奪取を狙う。その積極的な守備から速攻を仕掛け、バルセロナのFWアレクシス・サンチェス、ユベントスのMFアルトゥール・ビダルを軸に、後方から選手が次々と飛び出していく。チリのポイントは初戦のオーストラリア戦で勝ち点3を得られるかどうか。そうすればスペイン、オランダに引き分けてもグループリーグ突破の目が出てくるだろう。もちろん、2強相手に一泡吹かす可能性も十分に秘めている。

 3大会連続出場のオーストラリアは、B組の“4番手”という見方が強い。前線のFWティム・ケイヒル、攻守の要であるMFマルク・ブレッシャーノはともに34歳で、年齢からくる衰えによるスケールダウンは否めない。ただ若手が多いチーム内において、経験豊富な彼らの存在は貴重だ。やはりベテランがコンディションを維持できるかが、“サッカールー”(チームの愛称)の命運を握っているといっても過言ではない。その上で、守備を固めて速攻を狙うサッカーに徹し、強豪から勝ち点をもぎ取れるか。

◎ スペイン
〇 オランダ
▲ チリ
  オーストラリア

(鈴木友多)