5大会連続での出場となった日本が入ったグループC。日本にとっては過去4大会と比べて最も実力が拮抗する中での戦いになる。コートジボワール、ギリシャ、コロンビア、そして日本とどこが決勝トーナメント進出を果たしてもおかしくはない。

 3大会連続出場の“エレファンツ”(コートジボワールの愛称)は、初のグループリーグ突破を狙う。
 主力のFWディディエ・ドログバ、FWサロモン・カルー、MFヤヤ・トゥーレ、DFコロ・トゥーレらは軒並み30歳を過ぎ、高齢化は否めないが、国際経験の豊富さはグループCで屈指だ。南アW杯でエースのドログバは大会直前に負傷し、万全の状態で戦うことができなかった。それだけに、おそらく最後になるであろう今大会には並々ならぬモチベーションで臨むに違いない。5月31日に行われたボスニア・ヘルツェゴビナとの親善試合では途中出場から直接FKを沈め、得点力の高さを示した。35歳で臨む3度目のW杯に向け、仕上がりは順調と見ていいだろう。

 攻撃では驚異的な体の強さを誇るドログバが前線で起点になり、カルー、FWジェルビーニョといったスピード溢れるアタッカーが絡む。そしてマンチェスター・シティのリーグ優勝に貢献したY・トゥーレが司令塔として前線にパスを供給する。アフリカ予選8試合で19ゴールを記録した攻撃力は対戦相手にとって脅威だ。
 ただ、守備には一抹の不安を抱える。今年3月のベルギー戦、先述のボスニア・ヘルツェゴビナ戦はともに2失点。不安定さの要因はDFラインの連係が不十分で、簡単に裏への抜け出しを許してしまうこと。守備陣も個々の能力の高さに疑いの余地はないだけに、本番までに組織力をいかに高められるかが初のベスト16進出のカギだ。

 2大会連続3回目の出場のギリシャは、欧州予選12試合で6失点の鉄壁から攻撃につなげる堅守速攻が特徴。DFラインは全員が180センチオーバーでまさに壁だ。特にセンターバックのディミトリス・シオバスは191センチの長身で、ことごとく相手の攻撃を跳ね返す。長身の守備陣が攻撃に参加するセットプレーもギリシャの武器だ。

 攻撃では恵まれた体格を活かすため、ロングボールやクロスを多用する。前線に控えるのは“3本の矢”だ。身長193センチの左ウィングのゲオルギオス・サマラスは前線でボールの収めどころとなり、体格に似あわぬスピードで仕掛けられる。センターフォワードのコンスタンティノス・ミトログルは同188センチながら重心を低く保ち、安定感のあるプレーからゴールを陥れる。右ウィングのディミトリス・サルピンギディスは同177センチと小柄だが、抜群のタイミングで裏へ飛出してチャンスに絡む。前回大会で悲願のW杯初勝利を挙げたギリシャ。今大会はグループリーグを突破してステップアップを果たせるか。 

 コロンビアは強豪ひしめく南米予選を2位で突破し、4大会ぶりにW杯出場権(出場は5回目)を手にした。エースFWラダメル・ファルカオが負傷の影響で登録メンバーから外れたのは小さくないショックだが、主力の多くが欧州リーグでプレーしており、選手層は厚い。

 コロンビアのストロングポイントは強烈なサイド攻撃だ。左サイドのMFハメス・ロドリゲスは高い技術力に裏打ちされたドリブルとパスを駆使してチャンスを創出。右サイドのMFファン・ギジェルモ・クアドラードはスピードに乗ったドリブルで相手守備陣を切り裂く。DFパブロ・アルメロ、DFファン・カミーロ・スニガの両サイドバックも攻撃能力が高い。サイドの攻防を制圧できれば、初戦で当たるギリシャの堅守を破ることはそう難しくはないだろう。
 守備も高水準にある。選手間の距離をコンパクトに保ち、前線から連動したプレッシングで相手を追い込む。南米予選では38歳のベテランDFマリオ・ジェペスを中心に、失点を参加9カ国中最少の13に抑えた。守備が安定すれば、持ち前の攻撃力もより生きる。

 下馬評では首位通過の筆頭だが、コロンビアは過去のW杯で目立った実績を残せていない。最高成績は90年イタリアW杯のベスト16。バルデラマを擁し、優勝候補にも挙げられた94年アメリカW杯はグループリーグで敗退した。南米のタレント集団に必要なのは、大舞台で実力を発揮するための精神力と言えるかもしれない。

 5大会連続5回目の出場となる日本は、史上最強とも言われる陣容でブラジルに乗り込む。MF香川真司、MF本田圭佑、DF長友佑都など、23名中12名が海外リーグでプレー。国際経験が豊富な選手が多く、周囲の期待も日に日に高まっている。

 アルベルト・ザッケローニ監督が採用し続けてきた4−2−3−1システムの完成度は熟成の域に達している。攻撃パターンは、左サイドで本田、香川、長友が絡み、中央に送られたボールをワントップの選手もしくは右サイドのMF岡崎慎司が仕留めるかたちだ。サプライズ選出となったFW大久保嘉人もチームに順応しつつある。昨年11月の欧州遠征オランダ戦で見せた連動性のある攻撃を繰り出せれば、世界の強豪を打ち崩すことができる。
 懸念されるのは守備面だ。W杯アジア最終予選後に行った国際Aマッチ16試合で28失点。特にブラジル、イタリア、メキシコと戦ったコンフェデレーションズカップは3戦9失点と守備が崩壊した。前線からのハイプレスをかいくぐられ、ロングボールを放り込まれると脆さを露呈してしまう。コートジボワール、ギリシャはそういったシンプルなサッカーを仕掛けてくることが予想される。ロングボールをしっかりと跳ね返し、その後のセカンドボールも拾って相手の攻撃を寸断できるか。

 日本は02年日韓W杯、10年南アW杯のベスト16を超える成績を目指している。目標を達成するためには初戦が重要だ。日韓W杯も南アW杯も初戦で勝ち点を得て勢いに乗った。フィジカル面で勝るコートジボワール対策は、3日のコスタリカ戦のようにボールを支配して主導権を渡さないことに尽きる。その上で巡ってきたチャンスをモノにしたい。

◎ コロンビア
〇 日本
▲ コートジボワール
△ ギリシャ

(鈴木友多)